- 著者
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前田 勝義
平山 八郎
高松 誠
- 出版者
- Japan Society for Occupational Health
- 雑誌
- 産業医学 (ISSN:00471879)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.1, pp.8-21, 1977
紙巻きタバコ製造工場の巻上げ・包装工程の女子流れ作業者に頸肩腕障害が多発した事例を経験し, 作業内容の解析を行なうとともに, 117名の女子流れ作業者につき健康調査を行ない, 次の結果をえた.<BR>(1) この工場の流れ作業では, 上肢を反復使用し, 作業姿勢は拘束的で, 作業ペースの規制度は強い.作業は単調で, 一部の作業では神経・感覚器系の負担が大きいと思われた.<BR>(2) 1労働日内での流れ作業時間のしめる長さ, 製品の流れ速度, 作業動作上の負担, などは, 工程により違いがあったが, 作業負担が大きい工程では, 自覚症の訴えが強かった.<BR>(3) 健康診断の結果に基づき, 日本産業衛生学会頸肩腕症候群委員会の病像分類 (改訂案) により症度判定したところ, 1度 : 12名, II度 : 63名, III度 : 36名, IV度 : 6名, V度 : 0名で, この工場の女子流れ作業者全員の15.7%以上が, IIIまたはIV度であることが明らかになった.<BR>(4) 日本産業衛生学会頸肩腕症候群委員会作成の自覚症状調査表等の回答結果は, 諸検査成績とよく対応していたので, これらの調査表の利用価値は高いと思われた.<BR>(5) 流れ作業者調査表の回答結果の解析から, 障害の強い者では, (i) 作業姿勢, 作業速度, 精神面での負担が大きく, (ii) 作業に伴う疲労の発現部位は拡大し, 神経・感覚器系の症状も強く現われ, 作業後の疲労も強く, (iii) 睡眠障害を訴える者が多く, 疲労を翌日へ持ち越す者も多く, こうした状況を反映して, 薬剤を服用する者も増加し, 治療を受ける者も増加することが明らかにされた.<BR>以上の結果に基づき, この工場における頸肩腕障害の発症過程につき考察し, その業務起因性を明らかにし, 健康管理, 衛生教育の必要性について述べた.