著者
藤山 家徳 加瀬 友喜 上野 輝弥 植村 和彦
出版者
国立科学博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究は, 日本における第三紀初頭より現在に到る昆虫発達史を, 植生の変遷と関連させて明かにすることを目的としている. 今年度においては, 日本とアジア大陸南西部, 東南アジアをむすぶ重要な位置にありながら化石資料が皆無であった南西諸島に重点をおき, 昆虫化石の探索と地層の観察を行った. しかし, 奄美大島笠利町の平層, 沖縄本島の許田, 粟国島の眞鼻毛ともに新資料を得ることに成功しなかった.新生代の昆虫発達史を編むには, 各時代の化石昆虫ファナウの詳細な分析が必要である. 古第三紀については, 始新世の北海道夕張地域, 漸新世では北海道北見若松沢の研究が進行中である. 新第三紀については, 今年度の研究もふくめ研究はかなり進展した. 中新世の古植生より推定される気温の変遷は, この時代の昆虫相にも認められ, その影響は植生よりさらに鮮明に見られる. すなわち, 前期中新世は現在の日本の昆虫相に近似するが, 中期には一変して亜熱帯〜熱帯の様相を呈する, 後期には再び温暖気候となったが, 前期と異なり, 現在の中国南西部からヒマラヤ方面の昆虫相との類似が認められる. 鮮新世の昆虫化石相は現生のものに近く, 属レベルでは共通であるが, 種レベルでは一致するものが少ない. 鮮新世より第四紀にかけての化石昆虫相は, 現生昆虫相の形成を考える上で重要な材料であるが, 中新世の資料にくらべ少なく, さらに資料を追加した上での検討が必要である.
著者
加瀬 友喜 浜田 隆士 児子 修司
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series C, Geology & paleontology (ISSN:0385244X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-34, 1987-03
被引用文献数
1

Discovery of hyoliths from the Gedinnian bed of the Lower (to Middle?) Devonian Fukuji Formation in central Japan constitutes the first occurrence of this group from Japan. The operculum shows features much in common with Joachimilites MAREK, 1967 that was previously known only from the Ordovician bed in Bohemia. It now appears that the genus ranges from the Ordovician (Caradocian) to Early Devonian. The Fukuji species, Joachimilites fukujiensis, is described as new.
著者
加瀬 友喜 バルデス アンヘル
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.233-240, 1997-10-31
被引用文献数
1

The enigmatic Japanese species Bertinia bertinia Jousseaume, 1883 is currently placed within the notaspidean opisthobranchs. However, detailed examinations of the shape, colour and microstructure of the type material, have shown that this name is actually based on the spatula shell layer of the patellogastropod Cellana nigrolineata (Reeve, 1854), of which it is therefore a junior synonym.
著者
加瀬 友喜 前田 晴良
出版者
PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.118, pp.291-324_1, 1980-06-30 (Released:2010-05-25)
参考文献数
44

千葉県銚子地方の前期白亜紀層より得られた保存良好な軟体動物化石を検討した結果, 10新種を含む11属12種の腹足類化石(Calliostoma? ojii KASE, sp. nov., Ataphrus (s. str.) nipponicus KASE, sp. nov., Hayamia rex KASE, sp. nov., Hayamia choshiensis KASE, sp. nov., Amberleya (Eucyclus) japonica KASE, sp. nov., Oolitica sp., Metriomphalus nagasakiensis KASE, sp. nov., Perissoptera elegans KASE, sp. nov., Pietteia cretacea KASE, sp. nov., Ceratosiphon densestriatus KASE, sp. nov., Vanikoropsis decussata (DESHAYES) and Eriptycha japonica KASE, sp. nov.を識別・鑑定したので記載する。これらの中には, 腹足類の系統分類学上, 注目すべきいくつかの種が含まれている。Hayamia属は殻の外形, 表面装飾, 楕円形のフタを持つこと, および内唇の中央部に凹みを持たない点でNeritopsinae亜科の他の属から区別され, さらにHayamia属のフタはNaticopsis属のそれに類似する。以上の事実は, Hayamia属とNaticopsis属の親密な類縁関係が暗示され, Hayamia属がNeritopsis属とは異なった系列に沿って進化したことを暗示する。Pietteia cretaceaは翼状に伸びた外唇に直交する棘を持つ特異なモミジソデの一種類で, 従来本属はジュラ紀にのみ知られていたが, 今回の報告により, 前期白亜紀にも存在することが明らかになった。Ceratosiphon属はCOSSMANN (1907)以来Tessarolax属のシノニムと見なされてきたが, 両属が独立の属であることを示した。銚子層群産腹足類群の中には, フランスやイギリスのバレミアン, アプチアンあるいはアルビアンのものと共通, あるいは近縁な種が多く含まれている。
著者
加瀬 友喜 金城 浩之
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.199-205, 1996-09-30
被引用文献数
1

筆者の一人加瀬は速水(神奈川大学)とともに, 熟練したスキューバダイバーの協力を得て, 南西諸島およびその近海の海底洞窟内の貝類群の調査を行ってきた。これまでの調査で, 薄明あるいは暗黒の海底洞窟内から"生きた化石"種を含む進化生態学的に興味ある貝類群が棲息していることを明かにしてきた(Hayami and Kase, 1992, 1993 ; Kase and Hayami, 1992)。本報告では, 南西諸島の伊江島と下地島の通称"小洞窟"および"中ノ島ホール"とよばれる海底洞窟, またフィリピンのバリカサ島の海底洞窟から得られたムシロガイ科の1種について検討した。この種はフィリピン・ネグロス島のドゥマゲッティからA. Adams (1852)により記載報告されたNassa cinnamomeaに同定される。この種は不完全な唯一の標本で記載されたためか, その後はNassarius (Zeuxis) comptus (A. Adams, 1852)の新参シノニムと見なされていた。海底洞窟から新たに得られた標本を詳細に検討した結果, Nassarius (Zeuxis) comptusとは細長い殻形態を持つこと, 初期の螺層に細かな縦肋を持つこと, 縦張肋様の肥厚した外唇を持つこと, 縫合下に一貫して一本の螺溝を持つこと, 成熟した個体では殻口付近の体層上部に数本の螺脈を持つこと, 殻色は褐色ないしは黒褐色で一本の不明瞭な灰褐色の色帯を持つ点で区別され, 独立の種であると判断される。この種は殻形態の特徴からZeuxis亜属に帰属されるので, Nassarius (Zeuxis) cinnamomeus (A. Adams)となる。この種に対し, 新称カクレヨフバイを提唱した。カクレヨフバイは海底洞窟の入り口付近から暗黒の奥部に生息する。洞窟外の付近の浅海域では未だその生息が確認されていない。しかし, フィリピンのバリカサ島では150 m以深の海底に設置された刺網によって採取されているようで, 海底洞窟以外にも生息している可能性がある。
著者
加瀬 友喜 狩野 泰則
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-8, 1999-03-31 (Released:2018-01-31)
参考文献数
15

A bizarre gastropod species, Pluviostilla palauensis from a shallow-water, submarine cave (gloomy to totally dark inside) in Palau is described as a new genus and species based on the empty shells. The species is small in size and has unique shell features such as an overall inverse raindrop-shape, architectonicoidean-like planispiral early teleoconch whorls, abapically projected tube-like aperture and hollowed umbilicus completely closed by the whorls. Shell wall microstructure and protoconch morphology suggest a possible affinity to neritopsines, but it is very tentative and the systematic position of this species is still unknown. A sedentary mode of life, as in architectonicoideans, is inferred for the species.
著者
速水 格 加瀬 友喜
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.5-8, 1999-07-31
参考文献数
2

Pycnodonte (Pycnodonte) taniguchii Hayami & Kase, 1992, has been regarded as an example of "living fossils", because of the characteristic conservative morphology and cryptic habitat. After the original description, this oyster was found alive also at many cavernicolous sites of the following islands in the western Pacific and eastern part of the Indian : Ryukyu (Miyako, Okinawa and Yonaguni), Bonin, Palau, Philippines (Luzon, Cebu, Bohol), Malaysia, Vanuatu, Fiji, Tonga and Thailand (near Phuket).
著者
加瀬 友喜 近藤 康生
出版者
国立科学博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.“生きている化石"モクレンタマガイの解剖学的研究を行った結果、この巻貝は原始的な神経系をもち、多くの点で淡水性のリンゴガイ科の巻貝に近縁であることが明らかとなった。また、モクレンタマガイは肉食性ではなく、植物食であったことが明らかとなった。この発見により、タマガイ類は白亜紀中頃に出現し、従来三畳紀から知られているモクレンタマガイ類とは類縁が薄く、しかもそれらは他の貝類に穿孔して捕食しなかったと考えられる。その結果、タマガイ類とその捕食痕の化石記録は調和的となり、従来のタマガイ類の捕食の起源についての2説のうち、白亜紀中期起源説が正しいことがわかった。2.タマガイ類の捕食痕を調査した結果、それらの中には他の原因で似たような穴ができることがわかった。1つはカサガイ類による棲い痕で、白亜紀のアンモナイトの殼表面に多く見つかった。これらは小型のカサガイ類が殼表面の1ヶ所に定住する為、その部分が殼形と同じ形に凹むためにできたと思われる。穴はタマガイ類の不完全な捕食痕のようにパラボラ形で中央がやや凸となるが、形は大きくやや不規則な点などで区別ができる。従来、モササウルスの噛み痕といわれているプラセンチセラス属アンモナイトの穴も同じ起源と考えられる。その他、無生物的にタマガイ類の捕食痕に似た穴ができることもわかった。3.巻貝各種のタマガイ類の捕食痕を調査した結果、殼形により捕食の様式が異なる1例を見出した。これは巻貝の殼形態が長く伸長することが捕食から身を守る適応形態となっていることである。つまり、殼の伸長度と捕食痕の数の頻度を調べた結果、殼形が長くなると捕食痕数も増加することがわかった。従来捕食痕をもつ個体の頻度で捕食圧を推定した研究例は再評価する必要がでてきた。
著者
加瀬 友喜 狩野 泰則
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-8, 1999-03-31
被引用文献数
2

A bizarre gastropod species, Pluviostilla palauensis from a shallow-water, submarine cave (gloomy to totally dark inside) in Palau is described as a new genus and species based on the empty shells. The species is small in size and has unique shell features such as an overall inverse raindrop-shape, architectonicoidean-like planispiral early teleoconch whorls, abapically projected tube-like aperture and hollowed umbilicus completely closed by the whorls. Shell wall microstructure and protoconch morphology suggest a possible affinity to neritopsines, but it is very tentative and the systematic position of this species is still unknown. A sedentary mode of life, as in architectonicoideans, is inferred for the species.
著者
加瀬 友喜 田吹 亮一 速水 格 武田 正倫 遠藤 一佳 千葉 聡
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.海底洞窟特有のソビエツブ科巻貝の2新属4新種、クチキレエビスガイ科の1新属2新種、従来全く知られていない殻形態を示す1新属1新種(Pluviostillac palauensis)を発見、報告した。2.海底洞窟のシラタマアマガイ属巻貝の殻体を検討し,2新種を含む6種を識別し,コハクカノコガイ属と単系統群(コハクカノコガイ科)を構成することを明らかにした.また、それらの軟体の解剖学的研究を進め、殻体による結果を支持した。3.マーシャル島の化石種を検討し,この種はシラタマアマガイ属に近縁な新属であることを明らかにし,同類が中新世には既に海底洞窟のような環境に適応していたことを示した.4.海底洞窟のシラタマアマガイ属と河川に生息するコハクカノコガイ類の殻体および軟体の解剖学的研究を進めた。また、両者の環境を繋ぐanchialineやhyporheic環境から多くの未知のコハクカノコガイ類を発見し、それらを分類学的に検討し、2新属を認めた。5.コハクカノコガイ類を含むアマガイ上目の解剖と分子系統学的研究から、同目は複数回地上環境へ進出し、また、コハクカノコガイ類は海底洞窟などの隠生的な環境に適応した後、anchialineやhyporheic環境、さらに地上の河川に進出したことを明らかにした。6.海底洞窟及びanchialine環境の微小甲殻類のカラヌス目Ridgewayia属の1新種を見いだした。この種は北大西洋や地中海の種に近縁であることが強く示唆された.また、アミ目のHeteromysoides属とHeteromysis属の4新種、BochusaceaのThetispelecaris属の1新種を見いだした。Thetispelecaris属の新種は同属の2番目の記録であり、その由来は海底洞窟から深海に進化したことが示唆された。
著者
加瀬 友喜 アギラー ヨランダ・マーク
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.175-183, 2006

フィリピン・ルソン島中部のブラカン地方に分布する前期鮮新世後期のタルタロ層から得られたツキガイ科二枚貝の新属新種Bulacanites obtusiplicatus gen. et sp. nov.を記載した.Bulacanitesは大型でこう歯を欠く点ではAnodontia属とMeganodontia属に似るが,殻が厚く,殻頂部がより前方に傾き,さらに殻表面に特徴的な分岐をする放射肋をもつ点で容易に区別される.産出した地層の堆積相と随伴する他の貝化石の解析から,この二枚貝は熱帯の潮間帯あるいは潮下帯に生息していたと考えられる.