著者
前田 陽一郎 丹羽 俊明 山本 昌幸
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.507-518, 2006 (Released:2007-04-20)
参考文献数
20
被引用文献数
7 11

カオティックサウンドは, インタラクティブアート生成システムの1つとして人工生命の分野で研究が行なわれている. これにより, 人間の予想を超える多様性と複雑さをもつ音楽をコンピュータを利用して生成することが可能である. カオティックサウンドの研究目的は, カオス理論を用いることにより, 複雑かつ可変なサウンドを作り出す有効な手法を見つけることである. しかしながら, 単純にカオスで得た数値と対応する音を演奏する場合, 人間にとってただ音が鳴るだけの不協和音となることが予想される. そこで本研究では, カオス的非同期性や全体の同期性の制御が可能な大規模カオスを用いて音の生成を行い, さらにより自然な音に感じられるよう音楽理論の要素技術の一部を導入する手法を提案する. 本システムでは, 大域結合写像 (GCM) によって音高, 音長, 音量要素を決定し, 生成した音楽に小節, 調性, 休符, テンポ, エコー, 音色などの音楽的要素が追加される. これにより生成される音は自然音, 環境音楽などの, ヒーリングミュージックのような効果が予想される. また, この手法を用いてインタラクティブカオティックアミューズメントシステム (ICAS) を構築し, シミュレーションにより生成された音の感性評価を試みたので, これについても報告する.
著者
前田 陽一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.556-563, 2018-04-15 (Released:2018-04-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1

人工蜂コロニー(ABC)アルゴリズムは,蜜蜂の群れの採餌行動から着想を得た群知能アルゴリズムであり,実数値最適化を目的として開発された近似最適化手法である.ABCアルゴリズムは,最適化の対象となる問題の性質を問わず高い探索性能を持つことが検証されているが,いくつかの問題点が存在する.例として,個体の多様性を重視した探索を行うために,優良解に収束するまでに時間がかかりやすいという問題が存在する.近年,ABCアルゴリズムの改良手法に関する研究が盛んに行われており,他の進化的計算手法の考えを取り入れたハイブリッド手法が数多く提案されている.本研究では,実数値GAで用いられる交叉手法の1つである算術交叉をABCアルゴリズムの探索処理に組み込むことにより探索速度を向上させた改良手法である,算術交叉型ABCアルゴリズム(AC-ABC)と,遺伝的アルゴリズム(GA)の交叉,突然変異に用いられる確率的探索処理をABCアルゴリズムの変数選択部分に取り入れることにより,探索性能を高めた大域探索型ABCアルゴリズム(GS-ABC)を提案する.本手法の有効性を検証するため関数最適化シミュレーションを行ない,GS-ABCアルゴリズムは6種類のベンチマーク問題の全てで従来手法よりも高い性能を示すことが明らかとなった.
著者
前田 陽一郎 花香 敏
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.722-733, 2009-10-15 (Released:2010-01-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

一般に,自律エージェントや自律移動ロボットに効率的な行動学習をさせるためには動物の学習メカニズムから工学的応用を行なうことは有効な手法であることが知られている.中でも,動物行動学,行動分析学や動物のトレーニング(調教)などで広く用いられている「Shaping」という概念が最近注目されている.Shapingは学習者が容易に実行できる行動から複雑な行動へと段階的,誘導的に強化信号を与え,次第に希望の行動系列を形成する概念である.本研究では繰り返し探索により自律的に目標行動を獲得できる強化学習にShapingの概念を取り入れたShaping強化学習を提案する.有効なShaping効果を検証するために強化学習の代表的なQ-Learning,Profit Sharing,Actor-Criticの3手法を用いた異なるShaping強化学習を提案し,グリッド探索問題のシミュレータを用いて比較実験を行なった.さらに,実際の動物などの調教の場などで知られている段階を追って行動を強化する「分化強化」という概念をShaping強化学習に取り入れた分化強化型Shaping Q-Learning(DR-SQL)を提案し,シミュレーション実験により手法の有効性が確認された.
著者
一井 亮介 前田 陽一郎 高橋 泰岳
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.560-570, 2012-02-15 (Released:2012-02-27)
参考文献数
12

本研究では,リラクゼーションサウンド生成システム構築のためのリラクゼーション効果計測手法の提案を行う.まず意識集中(ストレス時)と音楽聴取(リラックス時)の脳波計測を行い,人間の覚醒状態に関わりがあるとされる特定の周波数帯(θ波,α波,β波)を抽出し,各含有率を解析することによりリラクゼーション傾向をつかむ.次に,提案手法の有用性を検証するため,本研究室で開発した同期性を制御できる大規模カオスを用いて音高,音長,音量を決定し,ユーザが自在にサウンドを生成することが可能なインタラクティブ・カオティック・アミューズメント・システム(ICAS)により人間にサウンドを提示することでリラックス度の有効性検証実験を行った.実験を行った結果,被験者にICASのサウンドを提示したときのアンケート評価値と,本提案手法によるリラックス度の数値がほぼ同じ傾向を示していることが確認できた.
著者
前田 陽一郎
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

向精神薬誘発性と考えられる鼻閉について(目的)日常診療において、鼻閉を愁訴として来院する患者さんの中に向精神薬を長期にわたり使用し、鼻閉コントロールが困難となる症例に対し、多面的な検討を行った。(方法)向精神薬を長期にわたって使用している症例につき、その前鼻鏡所見、5000倍ノルアドレナリン経鼻投与前後における鼻腔通気性の変化、CT所見、採取した鼻粘膜の病理所見およびその粘膜収縮力の評価を行った。なお、鼻腔通気性の変化はacoustic rhinometryにより測定し、粘膜収縮力の評価はin vitro bioassay法を使用し、肥厚性鼻炎症例の鼻粘膜(通常のヒト鼻粘膜)と比較した。(結果)前鼻鏡では著しい粘膜肥厚を認めた。ノルアドレナリン投与前および5分後のacoustic rhinometry所見では、C-notchの断面積や鼻腔容積に影響をほとんど与えなかった。また、CT所見では著しい下鼻甲介の腫脹を認めた。採取した鼻粘膜の病理所見では腺組織周囲に細胞浸潤を認め、粘膜固有層は著しく増生した線維化組織および浮腫を認めた。粘膜収縮力は手術的に切除された標本にノルアドレナリンを投与してそのdose-response curveを比較検討したが、向精神薬使用症例は肥厚性鼻炎症例に比較して収縮閾値の上昇と最大収縮力が低下していた。(考察)クロルプロマジンを代表とするフェノチアジン系抗精神薬は強いα1受容体遮断作用を有しており、この薬理作用がヒト鼻粘膜の収縮作用低下をおこす引き金になったと推察される。また、鼻粘膜に線維化を引き起こした症例などでは通常の鼻粘膜浮腫を改善する薬剤の効果は期待できないため、手術治療のよい適応になると考えた。
著者
前田 陽一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.690-700, 1994
被引用文献数
3

「人間らしい」行動決定機能を知能ロボットにおいて実現することを考えた場合、あいまいな状況認識を含む行動シーケンスを表現できることが重要である。そこで筆者らはクリスプおよびファジィ演算が混在するようなシーケンスフローが表現可能なファジィアルゴリズムの概念を用いて、人間に近いマクロ行動決定アルゴリズムをすでに提案している。本論文では、ファジィペトリネット(FPN)の考え方に基づき、ファジィアルゴリズムのフロー全体の表現を行い、これを用いてファジィ真理値トークンの伝搬によりシステムのあいまい性の推移状況を捉えることを試みる。これにより従来困難であったシーケンスルールの多段発火におけるあいまい性の客観的・総合的評価手法を提案する。これを用いると、あいまいさの爆発が起こらないファジィアルゴリズムの設計やシステム挙動解析が可能になる。さらに、自律移動ロボットの行動決定ファジィアルゴリズムを例題として、本手法によるシミュレーションを行ったので報告する。
著者
辻本 拓也 高橋 泰岳 竹内 昇平 前田 陽一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第31回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.648-651, 2015 (Released:2016-02-26)

人とロボットのインタラクティブ情動コミュニケーション(IEC)と呼ばれる概念が提案され,研究されてきた.IECは,人の動作から情動を認識する情動認識,認識した情動に対するロボットの情動生成,さらにその情動に応じたロボットの情動表現動作生成の3つで構成されているが,これらはそれぞれ別々に人の手で設計されてきた.本報告では情動認識と情動表現を同時に学習する統一したシステムを提案する.具体的には,リカレントニューラルネットワークに情動表現のためのラッセルの円環モデルを導入し,人の情動とそれに対応する身体動作の時系列パターンを与えて学習する.実験を通して提案するシステムを評価する.
著者
加藤 進 前田 陽一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 (ISSN:18820212)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.127-127, 2008

近年における人間とのインタラクションを目的としたヒューマノイドロボットの研究は急速な発展を遂げており、工学的な分野だけでなく心理学、哲学、医学的分野からのアプローチが積極的に行われている。しかしロボットと人間とのコミュニケーションにとって最も重要な心についての研究は始まったばかりである。本研究室においても人工感情モデルについての研究が進められており、情動と神経修飾物質と強化学習システムにおけるメタパラメタの関連性に基づく情動行動学習システムを構築してきた。 本研究では本システムをより現実の生物の挙動に近づけるために、ストレス反応を有する情動行動学習システムを提案する。この情動行動学習システムを組み込んだ生物エージェントを仮定したシミュレーション実験を行いその有効性を検証した。また感性評価実験として被験者である人間がエージェントの動作から感じた情動とシステムの情動との比較を行った。
著者
梶原 悠介 前田 陽一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.792-803, 2009-10-15

本研究では,コンピュータによる作曲の手法として現代音楽の作曲技法である12音技法を用いた作曲システムを提案する.12音技法は,段階的に作曲する手法のためコンピュータでの作曲に適しているという利点がある.12音技法での作曲の第1プロセスである12音音列の生成は,曲の主題や雰囲気を決定付ける重要なプロセスである.ここでは,一般的な音楽理論である協音程・不協音程の関係を基にした適応度関数を設計し,GAによる響きのよい音列の探索により12音音列の自動生成を行う.12音音列を生成するシミュレータを作成し,シミュレータが生成した12音音列と人が作成した12音音列の比較アンケートを行うことで本システムの有効性検証を行った.