- 著者
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勅使河原 三保子
- 出版者
- 日本音声学会
- 雑誌
- 音声研究 (ISSN:13428675)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.1, pp.60-76, 2004-04-30
日本のアニメーションにおける善玉と悪玉の声は日本文化における良い人物,悪い人物の声のステレオタイプを反映すると考えられる。本研究では日本のアニメにおける善玉と悪玉の音声の比較を行った。不快感情を表すことが多い悪玉の声は,不快感情が持つ音声的特徴を反映するという仮説が立てられ,Laverの声質記述の枠組みを用いた受聴による分析により,悪役の声には咽頭部分の狭窄または拡張が聴覚的に認められた。咽頭部分の狭窄やそれに伴う調音的特徴は,不快感情を表す音声に予測された特徴であった。日本語母語話者を対象とした知覚実験において,咽頭部分の形状について対比させた刺激音を用い,咽頭部分の形状が人物の印象(外見,性格,感情)を左右することが確認された。咽頭の狭窄または拡張を伴う話者は不快感情を抱いているという評価を受けた。自由記述による感情のラベルも分析され,感情と声質の対応関係が考察された。