- 著者
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勝又 悠太朗
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会春季学術大会
- 巻号頁・発行日
- pp.159, 2021 (Released:2021-03-29)
1.研究背景と目的 1991年の経済自由化を契機に,インドは急速な経済成長を経験している。このような中で,都市化の進展や大都市の発展,郊外空間の拡大,工業地域の形成,都市農村間の結合の強化など,急激な空間的変化が生じている(岡橋,2015)。しかし,経済成長の程度には地域ごとに差異があり,地域格差の拡大も確認される。 本研究の取り上げるウッタル・プラデーシュ州(以下,UP州)は,経済的後進性を示すヒンディーベルトに位置し,インドにおいて最大の人口を有する州である。そのため,雇用機会が限られ,膨大な余剰労働力をかかえているため,就業を目的とした州外への人口移動が顕著に進んでいる(宇佐美・柳沢,2015)。本研究は,インドのセンサスデータを使用し,UP州の人口動態を分析することを目的とする。 2.UP州の概要と人口特性 UP州は,インド北部に位置する。2011年の人口は199,812,341人であり,インドの総人口の16.5%を占めている。1991年の人口(132,061,653人)と比較すると,増加率は51.3%となり,インド全体(43.1%)を大きく上回る。 同州の人口を都市・農村別にみると,農村人口が77.7%と多くを占める。一方,人口100万人以上の大都市も州都のラクナウを含め7つ所在する。また,同州の一部は,デリー首都圏地域(以下,NCR)に含まれ,ノイダやガージヤーバードはデリーの郊外都市として発展をみせている。3.UP州における人口移動 2011年のセンサスデータをもとに,UP州における州間人口移動(5年以内)の地域的特徴を検討する。同州の州間人口移動を流入移動と流出移動に分けると,前者が892,750人,後者が3,037,088人と200万人を超える流出超過を示している。これは,インドの州の中で最多の流出超過数である。 UP州への流入移動をみると,最大の流入元州はビハール州(218,968人)である。これにデリーとマディア・プラデーシュ州が続き,いずれも移動者は10万人を超える。近隣の州からの移動が卓越するが,デリーからの移動はNCRの郊外発展を反映したものと思われる。 一方,UP州からの流出移動は,マハーラーシュトラ州の727,234人を最多に,デリー,グジャラート州,ハリヤーナー州の順となる。高い経済成長を示すインド西部とデリーおよびその周辺への人口移動が活発であることがわかる。 発表では,経年変化を踏まえた分析や県レベルでの集計データを使用した分析についての考察も行っていく。