著者
小林 準 名波 美代子 境 哲生 片山 英紀 松野 大樹 山口 崇 伊藤 修一 赤星 和人 永田 雅章 勝川 史憲 山崎 元
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.848-848, 2003

【はじめに】我々は日常の理学療法場面で、肥満、糖尿病、高脂血症、脳卒中の患者群に対して、自主トレーニングのプログラムとして音楽に合わせた運動を実施している。この音楽に合わせた運動内容については、紹介および健常者群におけるデータを本学術大会において名波より報告している。本編ではさらに患者群と健常者群との比較検討を行ったので報告する。【対象と方法】対象は脳卒中片麻痺患者の女性10名と健常女性10名の合計20名であった。健常者は主に患者の介護者であった。実験の前には趣旨を説明して同意を得て行った。年齢、体重、身長は健常者群はそれぞれ56.2±6.6歳、152.9±3.2 cm、と53.3±7.3 kg であった。一方患者群はそれぞれ 58.0±9.6歳、157.6±5.3 cm、と66.0±13.3 kgであった。測定にはコスメデ社製「テレメトリー式呼吸代謝計測装置K4システム」を用いて、呼気ガス中の酸素摂取量(VO<sub>2</sub>)、炭酸ガス排出量(VCO<sub>2</sub>)、呼吸商(RQ)、および心拍数(HR)を計測した。測定方法としては、3から4分間程のオルゴールによる安静時間と3から4分間程の132拍/分のワールドベストヒット曲を交互に録音した自主トレーニングの為に作成した音楽テープに合わせて、以下に挙げた3種類の体操を座位にて行った。(1)膝の交互伸展、(2)手を組んで体幹の回旋、(3)手を組んで体幹の前後屈。データの統計的検討にはt検定および一元配置分散分析を用いて有意水準を5%とした。【結果】1,体操(1)から(3)におけるVO<sub>2</sub>の健常者と患者群の比較;健常者と患者群ともに体操(1)から(3)でVO<sub>2</sub>が8.3±2.1から12.2±2.6 ml/min/kg の幅で逐次VO<sub>2</sub>の増加を認め、分散分析でも有意の差を認めた。尚それぞれの体操における健常者群と患者群の比較では、患者群が低い値を示したがt検定での有意差は認めなかった。2,体操(1)から(3)における脂質代謝の比較;健常者と患者群ともに体操(1)から(3)で逐次0.87±0.35から1.49±0.72 kcal/minの幅で脂質代謝の増加傾向はあったが、統計的には各体操間での有意差を認めなかった。尚、RQは0.87から0.89であった。【考察】一般的にVO<sub>2</sub>については、運動負荷時に若干患者群のほうが低い値を示す傾向が言われているが我々の結果も同様な傾向が伺われた。と同時に健常者群も患者群もほぼ同じように、漸増的な運動負荷がかかるものと考えられた。一方脂質代謝については個人差が大きく、さらに日頃理学療法として体を動かしている患者群と、対象群とした健常者群は主に介護者であり、普段運動で体を動かす機会が少なくなっているという生活習慣と食事内容や体型の違いなどが、今回の結果には影響していたものと思われた。我々が行ってきた音楽テープとその体操は、主に座位で行えて総消費エネルギーが40kcal程になる。すなわち自転車エルゴメーターで40wで15分程の運動量に匹敵する。従って安全で効果的しかも気軽に楽しめるので臨床的にも有効であると確信している。今後はさらに心理面も含め総合的に経時的な変化についても検討していきたい。
著者
勝川 史憲
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.255-263, 2021 (Released:2021-10-18)
参考文献数
28

「日本人の食事摂取基準2020年版」は, 健康の保持・増進, 生活習慣病 (高血圧, 脂質異常症, 糖尿病, 慢性腎臓病) の発症予防および重症化予防に加えて, とくに高齢者の低栄養予防やフレイル予防も視野に入れた策定が行われた。エネルギーについては, 摂取量と消費量の出納バランスが適切なレベルで維持されている状態を示す指標としてBMIを採用した。目標とするBMIの範囲は, 観察疫学研究で最低死亡率を呈するBMIをもとに4つの年齢階級別に設定し, 高齢者 (65歳以上) では, 実際のBMIの分布や肥満に伴うdisabilityのリスク等も考慮した。本稿では, エネルギーに関する概要とともに今後の課題をまとめた。
著者
真鍋 宜隆 高松 優 北谷 友希 依田 稔 石黒 隆 勝川 史憲
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.13-17, 2019 (Released:2019-02-15)
参考文献数
21

粉末油脂とは, 平均粒子径約1 μmの微細な油脂が糖質やタンパク質などでカプセル化された油脂製品であり, 食品に使用することにより調理性や風味の付与, 食感改良など様々な機能を発揮することが知られている。これまでに, 脂質の消化・吸収について, 粒子径の大きさが影響を与えることが示唆されているが, 粉末油脂の消化・吸収についての検証は十分とは言えない。本研究では, 健常若年成人男性を対象に, 粉末油脂と液状油を摂取させ, 血中中性脂肪 (TG) 値の推移を比較した。対象者24名でそれぞれ粉末油脂および液状油を摂取させ, 0時間から6時間後まで1時間おきに計7回採血を行い, 血中TGを測定した。その結果, 粉末油脂と液状油ともに血中TG値は摂取後3時間でピークとなった。摂取後0時間から3時間において, 血中TG値の推移は油脂の種類と時間で有意な交互作用が認められ, 液状油摂取時に比べ粉末油脂摂取時で血中TG変化量の曲線下面積が有意に大きかった。以上より, 液状油と比べ粉末油脂の一定時間における吸収量が多い可能性が示唆された。