著者
鈴木 晃志郎 伊藤 修一 于 燕楠
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.31, 2020 (Released:2020-03-30)

研究目的 異なる2種の点分布間の空間的関係を分析する方法である最近隣空間的随伴尺度(以下NSM)は,地理学では商業集積の分析などに用いられ,多くの成果を挙げてきた(Lee 1979, 石﨑1998).NSMは異なる2つの点分布傾向の随伴性を示す指標であり,ランダム分布である1を挟んで値が大きいほど2者は互いに避け合うように分布し,0に近いほど異なる2種の点同士が近接していることを示す.従って,2種の点分布でさえあれば,使用データが小売店舗などの位置情報である必要はないはずである. 超常現象が何であるにせよ,それらが超常現象となり得るには,何処かで何者かに認知されなければならない.ゆえに,共有された心霊スポットの布置は,社会が超常現象の舞台に与えた価値づけや役割期待の反映と目しうる.本発表はNSMを用いて,心霊スポットの空間分布特性をその他施設の分布傾向から検討することを試み,そこから怪異に投影された社会的役割を捉えることを企図している.主たる関心は,見えない怪異を地理学的・定量的に可視化することに注がれ,超常現象や心霊スポットそのものへのオカルティズム的関心は有しない.研究方法・分析対象 インターネット最大の心霊スポット紹介サイト「全国心霊マップ」から2019年11月入手した心霊スポットの全国住所データ1690件をサンプルとし,国土数値情報の公共施設データを別途用意してQGISで座標値を取得, NSMにより二者の随伴性を検討した.結果 結果を以下の表に示す.紙幅の都合から詳細は述べないが,仮説と反し公共施設のほぼ何れとも異なる独自の分布傾向を示すことが分かった.更に分析を進め,口頭発表では追加データやGIS による解析結果を示す予定である.文献:石﨑研二 1998. 店舗特性・立地特性からみた世田谷区におけるコンビニエンス・ストアの立地分析. 総合都市研究65: 45-67.Lee, Y. 1979. A nearest neighbor spatial-association measure for the analysis of firm interdependence. Environment and Planning A 11: 169-176.
著者
于 燕楠 伊藤 修一 鈴木 晃志郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2022年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.136, 2022 (Released:2022-03-28)

研究目的 超常現象が何であるにせよ,それらが超常現象となり得るには,人目に触れ認知されなければならない.ゆえに,その舞台として共有される心霊スポットの布置には,社会の価値観や役割期待が反映されうる.本発表は,基盤地図情報としてオープンデータ化されている各種公共施設や森林地帯のデータと心霊スポットの位置情報を手掛かりに,心霊スポットがどのような地物と近似の分布傾向を示すかの検討を通じて,分布傾向上の特質を解明する企図をもつ.エミックに扱われがちな事象をエティックに捉える試みであり,妖怪変化の分類学を志向するものでもなければ,超常現象の有無を論ずるオカルティズム的関心も有しない.研究方法・分析対象 周知のとおり,空間解析は商圏分析に代表されるXY軸上のデータの分析と,流域解析に代表されるZ軸の分析からなる.本発表ではこれを,①最近隣空間的隣随伴尺度による空間分布パターンの随伴性の分析(X,Y軸),②森林地帯ポリゴンを用いた被包含率の分析(X,Y軸),③DEMを援用した標高値および傾斜角の解析(Z軸)に読み替えることで,心霊スポットの分布特性を三次元的に検証する.データは,2021年時点で入手可能な最新の国土数値情報の各種公共施設と,森林地帯ポリゴン,「全国心霊マップ」から抽出した心霊スポットの点データである.分析対象には,その総面積(83,450 km²)がチェコ(78,865 km²)やオーストリア(83,871 km²)に比肩し,かつ広域自治体とその地理的領域がいずれも隣接する他の都道府県からの影響を受けない北海道を選定した.結 果 Z検定の結果,病院,最終処分場, 精神病院が心霊スポットとの有意な随伴傾向を示す一方,小学校,公民館, ダム, 浄水場, 役所, 配水池, 僻地保健福祉館, 火葬場が有意な離反傾向を示した.この傾向は、我々が先に公表した日本全国の分析結果と概ね矛盾しない(鈴木ほか2020). しかしながら,水平軸上では離反傾向にある浄水場,火葬場,配水池は,垂直軸(高度や傾斜角)上では心霊スポットと有意差が検出されず,分布傾向の近似性が示された.同様に,森林地帯ポリゴンを用いて,各施設の立地地点が森林地帯に含まれる割合を求めたところ,10%以上の値を示した施設はダム(25.3%),心霊スポット(33.3%),火葬場(37.8%),配水池(43.8%),浄水場(53.4%)の5種類のみであり,ここでも心霊スポットとの近似性が示された(全施設平均とのχ2検定結果はいずれも有意差あり). 心霊スポットは他の公共施設と異なる独自の分布傾向を示す(鈴木ほか2020).この独自性は,水平軸で病院や精神病院,最終処分場に近く,かつ垂直軸で有意差のない浄水場や配水池,火葬場に近似する高度や傾斜,あるいは森林への被包含率をもつ場所が心霊スポットの好発地になりうることを示した本発表の知見によって解釈可能である. 分析はなお継続中であり,当日はオープンデータを用いたさらなる分析結果を議論に供する予定である.文 献鈴木晃志郎・伊藤修一・于 燕楠 2020. 心霊スポットは何と空間的に随伴するのか. 日本地理学会発表要旨集2020(807) https://doi.org/10.14866/ajg.2020s.0_31
著者
伊藤 修一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.585-598, 2001-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
33
被引用文献数
2 5

本稿では,千葉ニュータウンの戸建住宅に転入した世帯の,夫婦の居住地選択への関わり方の解明を試みた.対象世帯の多くは,「夫が外で働き,妻が家庭で家事や育児」を行う,典型的な郊外居住の核家族世帯である.これらの世帯は,住宅取得が困難な1990年代前後に転居を決定し,住宅の質や価格の面で公的分譲主を信頼していた.用いた住宅情報は,公的物件の情報が得やすい媒体に偏り,公的物件供給の地域的な偏りも住宅探索範囲を限定している.また,夫婦それぞれの居住地選択の基準は性別役割分業に影響を受けており,転居後も継続就業する妻のいる世帯では,妻の就業地の近くに候補地を設定するなど,住宅探索範囲が就業状況によって異なる.ただし,現住地の選択には抽選が制約となっており,選択結果に対する不満は予算の都合により生じている場合が多い.
著者
伊藤 修一
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.107-121, 2003-06-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1

本研究では, 千葉県の都市名とその位置の認知要因の解明を試みた。調査は千葉市の中学生に実施し, 309人から有効回答を得た。千葉県内の31都市の名称とその認知理由, その位置について調査した。その結果, 名称と位置の認知はともに, 基本的に居住地からの距離減衰傾向を示すことが明らかとなった。さらに, 名称と位置の認知率をそれぞれ被説明変数とした重回帰分析結果は, 名称と位置の認知ともに, 経路距離が最大の影響力を示している。実際に, 生徒は生活圏外の都市名を身近な人から都市名を認知しており, 身近な人からの情報が少ない県の北西部の都市はあまり認知されていない。また, 南房総などの観光地を抱える都市は, 居住地からの距離の割に訪問を通じて認知されており, これらの例外的な都市がその距離減衰傾向を弱めている。位置認知では, 県域の末端的位置による視覚的効果が大きく影響しているが, 面積や市界線の形状といった他の視覚的効果の影響は弱い。これは, 生徒が地図を利用する際に市界線を意識していないことに関係している可能性が高い。この結果は, 都市の名称と位置がそれぞれ異なる影響を受け, 異なる過程を経て認知されていることを表している。
著者
伊藤 修一
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100103, 2014 (Released:2014-03-31)

Ⅰ.はじめに 破産は債務者の財産状態が悪化して,債権者への債務完済が不可能となることを指し,日本では破産法に基づく裁判手続きによって認められる(斎藤 1998).法制度の違いはあるが,アメリカ,イギリス,カナダ,オーストラリアなどの先進国では近年個人の破産が増えており,日本も破産事件の8割以上が個人(自然人)によるものであって例外ではない. 破産事件総数の推移は,法務省『司法統計調査年報』に基づいて,山本(2012)などが定量的に説明している.1980年までは3,000未満だった件数は,1983年の貸金業規制法施行と出資法改正の直前の駆け込み的な取立行為が多かったことや,非事業者の破産に破産宣告(破産手続開始決定)と同時に手続を終了させる同時廃止型破産を積極的に適用されはじめたことによって,同年には2.64万件と,それまでの8倍も増加した(第1のピーク).その後バブル景気に伴って1万件台まで減少したが,バブル経済の崩壊のほか,消費者信用の与信枠が拡大されて,「カード破産」が増加したことで1993年には4.62万件まで急増した(第2のピーク).さらに長引く平成不況は1990年代後半から件数の増勢を促して,2003年には過去最悪の25.2万件に達した(第3のピーク).しかし,翌年の貸金業規制法改正や2006年の貸金業法施行で過払金請求が増加したことなどで減少傾向となり,2012年は第3のピーク時の36.8%にあたる9.26万件に至る. このような破産傾向に地域差があることは,晝間(2003)が指摘している.これによると,各県を1985~1998年の破産率の順位の平均と変動の大きさの組み合わせから9分類した結果,変動が最小のグループのうち,高位は九州・中国地方,中位は四国・近畿地方,低位は中部・関東地方の諸県が占める.一方,変動が最大のグループでは高位に九州地方,中低位には東京圏や中京圏の諸県が含まれている.これは,基本的な分布パターンがいわゆる「西高東低」であって,大都市はパターンの変化に重要な役割を果たしていることを示唆している. この分布は第1と第2のピークの間にみられる特徴であり,全国推移の傾向からは1985~1998年の前後で分布が異なることは容易に推察される.そこで,破産率の全国推移が前述のピークに従って,統計的にも4期に区分されるかどうかを確認したうえで,各年の破産率の分布パターンを空間的自己相関統計量を用いて検討する.Ⅱ.分析データ 本研究で用いる破産事件数は『司法統計調査年報』における破産の新受事件数である.この件数は,原則として債務者の住所地を管轄する地方裁判所ごとに集計される.地方裁判所は50か所に立地するが,分析の都合上,県ごとに件数を再集計して用いる.これを住民基本台帳に基づく人口1万で除した値を破産率とする.対象とする期間は全県の統計がそろう1972~2012年とする.Ⅲ.破産率の全国推移 推移の特徴から4期に区分されることを仮定して,クラスター分析によって,傾向をとらえた(図1).第1期は1972~1991年で,破産率が平均0.72‱と全期間中で最低である.続く1992~1997年が第2期で,平均4.25件で第1期の6倍程度増加した期間である.第3期は1998~2001年と2008~2012年に分かれているが,2002~2007年は平均16.1‱と,第3期の10.3‱よりも高く,特異な期間と判別された.Ⅳ.破産率分布パターンの変化 第1期は,モランI統計量が平均0.3程度で推移し,弱い集中傾向がみられる(図1).1972年から第1のピーク直前の1981年までは中京圏と大阪圏の府県で,ローカルモランI統計量により有意な高率の空間クラスターが認められた.ただし,九州地方や東北地方で破産率が急上昇したこともあって,このクラスターは1983年には完全に解消した.同時廃止型破産の積極導入は,分布パターンを激変させた一因であることがうかがえる. 一方で,1980年代前半から第4期の2000年代半ばまでのおよそ20年間にわたって,九州地方では高率の空間クラスターが,北関東や甲信越地方に低率の空間クラスターがそれぞれ形成された.この間のモランI統計量は増加傾向で,1996年からの8年間で7年も0.4を超えており(図1),前述の「西高東低」パターンが強まったといえる. しかし,2003年以降はモランI統計量は急低下して,第3期後半の2009・2010年には有意な負の値を示すように,「西高東低」パターンを形成するクラスターは解消している.特に2007年以降の東京都は全国一破産率が高く,2004年からは平均20.7‱と近隣県よりも有意に高率であり,貸金業への規制が強まる第4期以降に,他県とは異なる例外的な特徴を示している.
著者
小林 準 名波 美代子 境 哲生 片山 英紀 松野 大樹 山口 崇 伊藤 修一 赤星 和人 永田 雅章 勝川 史憲 山崎 元
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.848-848, 2003

【はじめに】我々は日常の理学療法場面で、肥満、糖尿病、高脂血症、脳卒中の患者群に対して、自主トレーニングのプログラムとして音楽に合わせた運動を実施している。この音楽に合わせた運動内容については、紹介および健常者群におけるデータを本学術大会において名波より報告している。本編ではさらに患者群と健常者群との比較検討を行ったので報告する。【対象と方法】対象は脳卒中片麻痺患者の女性10名と健常女性10名の合計20名であった。健常者は主に患者の介護者であった。実験の前には趣旨を説明して同意を得て行った。年齢、体重、身長は健常者群はそれぞれ56.2±6.6歳、152.9±3.2 cm、と53.3±7.3 kg であった。一方患者群はそれぞれ 58.0±9.6歳、157.6±5.3 cm、と66.0±13.3 kgであった。測定にはコスメデ社製「テレメトリー式呼吸代謝計測装置K4システム」を用いて、呼気ガス中の酸素摂取量(VO<sub>2</sub>)、炭酸ガス排出量(VCO<sub>2</sub>)、呼吸商(RQ)、および心拍数(HR)を計測した。測定方法としては、3から4分間程のオルゴールによる安静時間と3から4分間程の132拍/分のワールドベストヒット曲を交互に録音した自主トレーニングの為に作成した音楽テープに合わせて、以下に挙げた3種類の体操を座位にて行った。(1)膝の交互伸展、(2)手を組んで体幹の回旋、(3)手を組んで体幹の前後屈。データの統計的検討にはt検定および一元配置分散分析を用いて有意水準を5%とした。【結果】1,体操(1)から(3)におけるVO<sub>2</sub>の健常者と患者群の比較;健常者と患者群ともに体操(1)から(3)でVO<sub>2</sub>が8.3±2.1から12.2±2.6 ml/min/kg の幅で逐次VO<sub>2</sub>の増加を認め、分散分析でも有意の差を認めた。尚それぞれの体操における健常者群と患者群の比較では、患者群が低い値を示したがt検定での有意差は認めなかった。2,体操(1)から(3)における脂質代謝の比較;健常者と患者群ともに体操(1)から(3)で逐次0.87±0.35から1.49±0.72 kcal/minの幅で脂質代謝の増加傾向はあったが、統計的には各体操間での有意差を認めなかった。尚、RQは0.87から0.89であった。【考察】一般的にVO<sub>2</sub>については、運動負荷時に若干患者群のほうが低い値を示す傾向が言われているが我々の結果も同様な傾向が伺われた。と同時に健常者群も患者群もほぼ同じように、漸増的な運動負荷がかかるものと考えられた。一方脂質代謝については個人差が大きく、さらに日頃理学療法として体を動かしている患者群と、対象群とした健常者群は主に介護者であり、普段運動で体を動かす機会が少なくなっているという生活習慣と食事内容や体型の違いなどが、今回の結果には影響していたものと思われた。我々が行ってきた音楽テープとその体操は、主に座位で行えて総消費エネルギーが40kcal程になる。すなわち自転車エルゴメーターで40wで15分程の運動量に匹敵する。従って安全で効果的しかも気軽に楽しめるので臨床的にも有効であると確信している。今後はさらに心理面も含め総合的に経時的な変化についても検討していきたい。
著者
鈴木 晃志郎 島田 章代 伊藤 修一
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.50-65, 2018-06-28 (Released:2019-08-21)
参考文献数
35

対象者が未知の財やサービス,製品にアクセスするときに依拠するのがいわゆる口コミ(WoM)である。観光行動もサービスを選択・消費する消費行動の一つであり,リピート率の向上や顧客満足度の上昇に及ぼすWoMの効果に注目した分析の対象となりうる。そこで本研究は富山県の湧水池「穴の谷霊場」をとりあげ,来訪者の特性を分析するとともに,入込客数の維持にWoMがもたらす効果を調査した。半構造化インタビューを交えたアンケート調査により来訪者86人の類型化を行いその動機を分析したところ,病気治療,健康維持,味の良さでカテゴリー化される一方,当初の霊場としての場所性はその影響力を大きく失っていた。また来訪者の76%が信頼のおける肉親や知人からのWoM情報を最初の来訪のきっかけに挙げ,WoM研究の知見を裏付けた。開祖が世を去って40年,穴の谷は宗教的な聖地としてよりも,霊水を求める一種の自然信仰に支えられた観光地へと変容を遂げており,WoM効果は観光客数の維持に少なからず貢献していると考えられる。
著者
伊藤 修一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.46, 2005

_I_ はじめに 地理学における女性就業に関する研究では,一般に,郊外居住の既婚女性が家事や子どもの世話と就業の二重の役割を担うために,「空間的足かせ」によって自宅周辺での仕事に就かざるを得ないとされてきた.その上,条件のよい仕事は郊外の自宅周辺には少なく,希望する仕事との間に「空間的なミスマッチ」を生じているとされてきた.それは既婚女性が短距離通勤者となり,雇用のミスマッチに陥った一因を示している.特に女性のジョブサーチの過程においては,人づての情報は広告や職業安定所に並んで重要な役割を果たしており,最近では,既婚女性の就業継続には別居の親からの支援が有効であるという研究結果もある.よって,こうした「空間的足かせ」や「空間的ミスマッチ」のメカニズムを解明するためには,既婚女性がどのようなパーソナル・ネットワークを持ち,それをどう利用しているかを明らかにする必要がある.本研究では,社会的資源としてのパーソナル・ネットワークの規模と空間的な広がりを明らかにし,その役割について考察する._II_ 研究方法と研究対象地域 分析には,2003年に実施したアンケート調査で得られた,206世帯の夫婦それぞれの回答結果を用い,16世帯からのインタビュー調査結果で補完した.妻の就業状態によるパーソナル・ネットワークの規模と空間的広がりの差異を分析し,彼女らのジョブサーチと育児支援に対する影響を検討した.千葉ニュータウンは当初,東京都心までのアクセスが悪かったこともあり,人口急増期が東京圏内でも遅く,1990年代前半になって夫婦と子どもからなる世帯が多く流入し,その世帯率が東京圏内の市区町村の中で最も高くなった.一方で,この地域の女性就業率は1995年に最も低くなったが,2000年には事業所の増加もあって上昇しはじめている.ただし,都市計画上ニュータウン内に立地できる事業所の種類は限られており,サービス業や小売業の事業所が集中している._III_ ジョブサーチと育児支援に対するパーソナル・ネットワークの役割 対象となった妻のうち107人が就業している.このうち35人が正規雇用者で,通勤距離は平均14.0kmであるのに対して,非正規雇用の72人の平均通勤距離は5.3kmと短い.正規雇用者のうち25人は,前住地から継続して就業しているのに対して,非正規雇用者のうち49人は現住地で再就業しており,移動距離も正規雇用者よりも長い.こうした職に就く際に,正規・非正規雇用者ともに,子どもを介した友人などの,他の世帯の人も現職に就く際の有力な情報源となっている.ただし,他の世帯の人を通じて就職した非正規雇用者の通勤距離は,正規雇用者の平均12.1kmと比べて,3.4kmと短く,それはニュータウンを東西に貫通する北総・公団線の駅間距離と対応している.「他の世帯の人」には,主に子どもを介した友人など,近隣の居住者が含まれている.実際,妻には「日ごろから何かと頼りにし,親しくしている人(以降,親友と略称)」が平均14人程度いるが,このうち,正規雇用者は市町村内に平均4.3人の親友がいるのに対して,非正規雇用者は8.5人と多い.正規雇用者の親友のうち5人は「職場の同僚」であるのに対して,非就業者の親友のうち5人は「(仕事以外の)組織の友人」というように,それぞれの日常生活を明確に反映したものとなっている.親友の中で,妻が世帯外で「就職や転職に関する相談相手」や「子どもの世話を依頼できる人」は,妻自身の親に並んで子どもを介した友人が多い.さらに非就業者のうち13人は,雇用のミスマッチを非就業の理由に挙げており,市区町村内での就業を希望しているものの,非正規雇用者ほど他の世帯の人からの情報を得ていない.これは,就業者と比べて居住年数が短いことと関係が深く,情報を得られる経路が十分に形成されていないことを示唆している.また,正規雇用者が市町村内の友人が少ない一因には,勤務時間が長く,非正規雇用者や非就業者と日常接触する機会が少ないことがある.そのため,正規雇用者からの求人情報はこの地域内に伝達されにくい.一方,育児支援に関しては,育児は自分で行うという意思が強いこともあって,多くは親にも子どもを預かってもらう機会がない.ただし,世帯内で子どもの世話をできない緊急時には,子どもを介した近隣の友人が重要な役割を期待されている.このように妻のパーソナル・ネットワークからみると,これまで議論されてきた「空間的足かせ」仮説は,既婚女性が,近隣に偏った日常生活の中で,利用可能な求人情報や人々との接触を利用するという戦略を採った結果として理解することができる.
著者
伊藤 修一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.585-598, 2001-10-01
参考文献数
33
被引用文献数
9

本稿では,千葉ニュータウンの戸建住宅に転入した世帯の,夫婦の居住地選択への関わり方の解明を試みた.対象世帯の多くは,「夫が外で働き,妻が家庭で家事や育児」を行う,典型的な郊外居住の核家族世帯である.これらの世帯は,住宅取得が困難な1990年代前後に転居を決定し,住宅の質や価格の面で公的分譲主を信頼していた.用いた住宅情報は,公的物件の情報が得やすい媒体に偏り,公的物件供給の地域的な偏りも住宅探索範囲を限定している.また,夫婦それぞれの居住地選択の基準は性別役割分業に影響を受けており,転居後も継続就業する妻のいる世帯では,妻の就業地の近くに候補地を設定するなど,住宅探索範囲が就業状況によって異なる.ただし,現住地の選択には抽選が制約となっており,選択結果に対する不満は予算の都合により生じている場合が多い.
著者
伊藤 修一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000237, 2018 (Released:2018-06-27)

Ⅰ.はじめに 1990年代以降の先進諸国では自動車保有率の上昇が鈍化,低下に転じているなど(奥井 2004,橋本 1999),モータリゼーションは成熟・停滞期とみられる.モータリゼーションが進む地域において,一般に女性は自家用車の利用可能性が低い「交通弱者」と位置付けられ,就業機会とのアクセスが制限されやすく,家事や育児を担う役割も重なる場合には専業主婦や低所得者となりやすいとされてきた(Hanson and Pratt 1988). 総務省『労働力調査』によれば,日本の年齢別女性就業率に表れる「M字型カーブ」の谷底は1991年には50%を上回り,2007年以降は60%を超え,全体の女性就業率も2010年代に入ってからは上昇している.よって,自家用車の普及と女性就業の促進との関係を検証する必要がある.既に,岡本(1996)はパーソントリップ調査の結果に基づいて,就業女性の自動車利用率が専業主婦よりも高く,世帯の自動車保有率が高くなれば利用率が高まることを指摘している.日本の乗用車保有率の要因を分析した奥井(2008)も女性就業が自動車普及の一因であることを示唆している. なかでも,近年の軽乗用車の普及は女性就業に大きな影響を及ぼしたと考えられる.自動車検査登録協力会編『自動車保有車両数』によれば,普通・小型乗用車台数は1990年代中期以降停滞するなか,軽自動車は年1~3%の増加が続く.また日本自動車工業会『軽自動車の使用実態調査報告書』によると,男性が過半数だった主たる運転者が1995年以降には既婚女性のみで過半数を占めるようになったからである. 本研究では軽乗用車保有台数の増加と女性就業率の高まりの時期が重複する1990年代中期以降に注目して,軽乗用車の保有状況の地域的傾向を把握したうえで,軽乗用車の普及と既婚女性の就業者の増加との空間的な関係を,統計的な裏付けに基づいて検討する.Ⅱ.分析対象とデータ 軽乗用車の地域的な普及状況を把握するために,全国軽自動車協会連合会『市区町村別軽自動車車両数』(1996年3月末版,2016年3月末版)により台数データを入手した.ここでは普及状況を測る指標として,軽自動車台数を総務省『国勢調査』(1995年,2015年)による一般世帯数で除した保有率を用いる.既婚女性の就業に関するデータも『国勢調査』による.就業状態は就業者総数のほか,年齢別,「主に仕事」と「家事のほか仕事」との別に分けて分析した. 分析対象は国内全ての市区町村であり,1995~2015年度間の市町村合併や福島第一原発事故の影響を受ける自治体などを考慮して,1833の部分地域に整理された.Ⅲ.軽乗用車保有率の分布 2015年度の全国保有率は39.8%で,空間的偏りがみられる(モランI統計量1.52,p<0.01).ローカルモランI統計量による検定結果に基づくと,三大都市圏や北海道に10%未満の市区町村が集中する統計的に有意なクラスターが認められ,仙台市と熊本市のほか広島市と福岡市の中心地区といった政令指定都市にも低率のクラスターや局所的に低い地域が形成されている.対照的に山形,宮城両県を中心とした東北地方南部や,中国山地や讃岐山地付近,九州地方は70%以上の高いクラスターがみられる.これは奥井(2008)が指摘する,北海道で高値,東北地方や西日本に低値の地域が広がるという乗用車全般の傾向と異なる. 2015年度の全国保有率は1995年度の13.6%の約3倍にもなる.両年の分布パターンはよく類似しており(r=0.89,p<0.01),高保有率だった地域で保有率が上昇している(r=0.74,p<0.01).保有率が減少したのは低普及率の有意なクラスターに属する東京都千代田区と中央区のみである.Ⅳ.軽乗用車保有率と既婚女性就業率との関係 2015年度の保有率と就業率の相関係数は0.52(p<0.01)で,1995年度よりも上昇している.「主に仕事」とし,年齢の高い者ほど大幅に上昇している.全国的には軽自動車の普及が,フルタイム労働者のような既婚女性の(再)就業の促進により関わっており,その関係が深まっていると解釈される. また,保有率の上昇幅と就業率の上昇幅との関係は大都市圏内において統計的有意差が認められる.保有率の上昇幅のわりに就業率の上昇幅が小さい地域は東京都荒川区を中心とした都区部北東側や,天王寺区を除く大阪都心5区に有意なクラスターが形成されており,大都市圏中心部の公共交通の利便性の高さが影響したものとみられる. 一方,保有率の上昇幅のわりに就業率の上昇幅の大きい地域は,東京圏においては三鷹市周辺や横浜市神奈川区周辺に,大阪圏では神戸市に有意なクラスターが現れる.こうした傾向からは大都市圏内では,軽乗用車の取得可能性などの経済面の影響も示唆される.
著者
伊藤 修一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.34, 2020 (Released:2020-03-30)

Ⅰ.はじめに 都道府県より大きなスケールでの地名認知の研究では,認知率の分布パターンの特徴に留まらず,その要因解明にも強い関心が寄せられてきた.要因を刺激中心要因群と被験者中心要因群,被験者刺激中心要因群とに整理すると,刺激中心要因群には位置や面積などの,通時的にみて変化しにくい項目が含まれる.よって,他の要因群が統制されているならば,認知の時系列的傾向は安定的なはずである.一方で人口のような,比較的変化しやすい刺激中心要因群の変動があれば,他の要因群が統制されていたとしても,時系列的な認知傾向が変化するはずである.認知の時系列傾向は,地域の変化の行動地理学的説明の一証左となりうることから,本研究では地名認知の時系列的傾向を把握するために,反復横断調査から得られた認知率の推移とその分布パターンの特徴を統計的な裏付けを基に検証する.Ⅱ.研究方法 調査は2003〜2013年の9月に1度ずつ,質問紙を用いて50分程度で行われた.対象地域は東京都の島嶼部を除いた53市区町村である.調査期間中に市区町村数の増減や名称の変更はない.調査は市区町村の名称と位置の認知を中心に問う内容で,名称については50音順に並べた市区町村名について,「知っている」と「聞いたことがない」との2択での回答を求めた.位置については市区町村名を「知っている」と回答した者に対して,白地図上の各市区町村に付された番号と,回答用紙の市区町村名とを対応させる方法で回答してもらった.この「知っている」と回答した者の割合や正しい位置を指摘できた者の割合を認知率とする. 回答者は本学の教養教育科目の一つで,筆者が担当した「人文地理学」の当日の受講者である.全11回の調査から623人の有効回答が得られた.対象者の平均年齢は2003年の20.5(s.d.=1.86)歳が最高で,2005年の19.2(s.d.=0.94)歳が最低である。都外に4年以上の居住者が40.1%を占めており,2003〜2011の各年ではその傾向がχ2検定で10%水準以上の有意性が認められるなど,被験者中心要因群は比較的統制されている.Ⅲ.名称認知の特徴 全調査年次で認知率が平均90%以上の市区町村は本学の位置する世田谷区とその近接区が多く,ローカルモランI統計量に基づく検定から,世田谷区と近接する7区からなるホットスポットが認められる.一方で瑞穂町とそれに近接する4市1町によるクールスポットが認められるなど,市町村の認知率が相対的に低い.認知率の年次間の相関係数はいずれも0.93以上(p<0.01)と高く,分布パターンは安定的である.ただし28市区町村の認知率の年次間の差は,χ2検定により10%水準以上で有意である.うち24市区でRyan法による多重比較で2003年と2009年との間に有意差が認められ,両年の対象者の特徴が関係したとみられる.Ⅳ.位置認知の特徴 全年次で認知率が25%以上の市区町村は世田谷区と渋谷区,町田市,目黒区,奥多摩町,江戸川区,八王子市,大田区の八つである.ローカルモランI統計量に基づく検定によれば,世田谷区とそれに近接する4区によるホットスポットが形成されているが,いわゆる「パースの法則」の統計的有意性は認められなかった.対照的に,認知率が10%未満の24市区町村のうち23は市町村であり,武蔵村山市と東大和市,瑞穂町によるクールスポットが形成されている.認知率の年次間の相関係数はいずれも0.73以上(p<0.01)で,分布パターンは比較的安定的で,χ2検定により認知率の年次間の差が10%水準以上で有意なのは13市区である.このうち8市区でRyan法による多重比較で2004年と2011年との間で有意差が認められ,両年の対象者の特性が認知率の推移に影響した可能性がある.Ⅴ.認知傾向の要因分析 認知率を被説明変数として,大学敷地(駒沢キャンパス)重心—各市区町村重心との直線距離と,各市区町村の住民基本台帳に基づく人口数と国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」に基づく面積の3項目を説明変数とした重回帰分析を各年次で行った.名称認知率の分析結果をみると,各年次とも上記3項目で6割程説明される.偏回帰係数は各年次とも直線距離,人口の順に影響力が大きく,認知率の安定的な推移に寄与している.位置認知の分析結果も決定係数は名称認知と近似するが,変動は大きい.さらに位置認知では面積の影響が直線距離と同等に大きく,認知過程での視覚的効果の重要さを確認できるが,これが全年次で確認できる特徴とはなっていない.このため,地図の読図習慣といった被験者刺激中心要因群が年次によって異なることが示唆される.
著者
伊藤 修一郎
出版者
日本行政学会
雑誌
年報行政研究 (ISSN:05481570)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.34, pp.122-144, 1999-05-22 (Released:2012-09-24)
著者
伊藤 修一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.220, 2009

<U>I はじめに</U> 東京湾アクアラインが開通してから11年以上経過した.<BR>アクアラインは千葉県木更津市と神奈川県川崎市との間を結び,開通前には両都市間の移動には約90分もかかっていたが,開通後には約30分と3分の1に短縮された.<BR>さらに,木更津市などから東京都区内や横浜・川崎駅との間を結ぶ,アクアライン経由の高速バスの路線網は拡大し続けている.そのバス利用者の増加率は毎年10%程度を維持している.<BR>このことは,自家用車を自由に利用できない者にとっても,東京や横浜方面と南房総との間の交通利便性が向上していることを示している.本研究では,木更津市内に通学するという,アクアラインの利用可能性が高い大学生を対象として,特に東京や横浜方面への移動におけるアクアラインの利用状況に注目して,個人の特性との関係について考察する.<BR><U>II 研究方法</U> 対象者は木更津市の清和大学に通学する学生である.このうち,発表者が担当する人文地理学Iの2008年7月3日の受講者を対象としている.対象者に対して,質問紙による調査を30分程度かけて実施し,68人から有効回答を得た.<BR>質問内容はアクアラインの利用に関するものと,都区内と横浜市内への訪問に関するものに分けられる.アクアラインの利用に関しては,アクアラインの認知とその利用の有無や頻度,利用した際の交通手段,出発地と最終目的地,その間の所要時間などについて質問した.<BR>都区内と横浜市内への訪問に関する質問は,アクアラインを利用するかどうかを問わずに,それぞれの地域へ訪問する際のルートとその所要時間を尋ねた.<BR><U>III アクアラインの利用とルート選択</U> <U>1) 対象者の特徴</U> 67人は千葉県内に居住し,そのうち,52人は木更津市と隣接する市原市や君津市,富津市,袖ヶ浦市から通学している.ただし,入学時に千葉県内へ転入した者は29人おり,このうち27人は木更津市に居住している.そのため,対象者は平均19.7歳であるが,高校卒業前から県内に居住していた者は平均16.5年現住地に居住しているのに対して,県外出身者は0.38年と短い.<BR>また,自動車運転免許所有者は28人であるが,このうち全く運転しない者が12人おり,免許を持たない者を含めると51人が日常的に自動車を運転しない.<BR>そのこともあって,29人が最終目的地として都区内に1度も訪れたことがなく,横浜市内へは40人が1度も訪問したことがない.また,両地域ともに訪問経験がない者は22人と,東京大都市圏縁辺に居住していることもあって行動圏の狭い者が少なくない.特に県外出身者は,都区内に訪れたことがある者は11人,横浜市内には6人のみが訪問経験があり,県内出身者よりも少ない.<BR><U>2) アクアラインの利用</U> 対象者のうち,60人はアクアラインを1度以上利用している.このうち定期的な利用者は6人である.他は44人がこれまでに往復で平均4.9回利用しており,このうち9人は10回以上利用している.<BR>こうした利用回数の,出身地による違いは小さいが,その利用内容は,出身地によって大きく異なる.県内出身者がアクアラインを利用して最もよく訪れる目的地は,都区内と,横浜市内7人を含む神奈川県がともに11人と最も多い.これらの地域へは,11人が食事や買い物を目的としない観光で訪れており,7人が食事や買い物を目的として訪問している.<BR>一方,県外出身者には,都区部や神奈川県が目的地だった者は8人と県内出身者と比べて少ない.17人は出身地との移動の際に利用しており,引越しなどで短い期間にアクアラインを利用する機会が多い.<BR>こうした目的地までは,県内出身者のうち,24人は他人が運転する自動車で移動しているのに対して,県外出身者は18人が高速バスで移動しており,その移動手段に違いもある.<BR><U>3) 東京・横浜方面へのルート選択</U> アクアライン経由のルートを選ぶ理由として,47人が早く目的地へ着けることを挙げている.実際,36人はアクアライン経由のルートのみを利用している.<BR>一方で,アクアラインを経由しないでその目的地まで行ったことがある者も22人と少なくない.このうち15人は鉄道を利用して移動している.アクアラインを経由した場合とそうでない場合の所要時間がわかる17人のうち,それを経由した場合の所要時間のほうが長い者は1人のみに過ぎない.<BR><U>IV おわりに</U> アクアラインの利便性はよく認知され,非日常的な行動圏の拡大に貢献している.ただし,自家用車に同乗できるかどうかという環境は,大都市圏中心部への行動に影響している.これは,この地域に居住する交通弱者にとっては,それが十分ではない可能性を示唆している.
著者
添野 光洋 澤瀬 隆 平 曜輔 伊藤 修一 江越 貴文
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

有機質コラーゲンを化学的に除去した象牙質表面に対する、ビタミン剤含有新規プライマーを開発し、その作用機序を明らかにするとともに、コラーゲンを高分子材料で置換することによって、接着耐久性が改善できることを証明した。そして、長期的な歯質の保存可能な表面処理法の臨床応用を実現した。
著者
小林 準 赤星 和人 永田 雅章 名波 美代子 境 哲生 近藤 広陸 片山 英紀 松野 大樹 伊藤 修一 萩原 朋尚 高梨 晃
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A1047, 2005

【目的】近年「健康日本21」の推進が唱えられ、平成15年5月からは健康増進法も施行された。ヘルスプロモーションへの関心が高まる中で、我々、理学療法士の健康増進に対する役割もますます重要性が高まるものと考えられる。今回、日頃の理学療法場面で運動療法を指導する立場にある理学療法士と、日頃はデスクワークが多い事務職員との安静時及び運動時における換気反応について比較検討を行ったので報告する。<BR>【対象および方法】対象は健康な理学療法士の女性10名と事務職員の女性10名の合計20名であった。実験の前には趣旨を説明して同意を得て行った。年齢、体重、身長は理学療法士群はそれぞれ29.6±4.8歳、161.6±4.0 cm、と54.3±5.1 kg であった。一方事務職員群はそれぞれ 32.5±4.1歳、159.5±7.2 cm、と52.6±7.2 kgであった。測定にはコスメデ社製「テレメトリー式呼吸代謝計測装置K4システム」を用いて、呼気ガス中の酸素摂取量(VO2)、炭酸ガス排出量(VCO2)、呼吸商(RQ)、および心拍数(HR)を計測した。測定方法としては、充分な安静時間の後、更に3~4分間程のオルゴールによる安静時間と3~4分間程の132拍/分のワールドベストヒット曲に合わせて、以下に挙げた2種類の体操を立位にて行った。(1)手を頭上に組んで体幹の側屈、(2)全身運動のリズムダンス。そしてエルゴメーター運動負荷テストも行った。データの統計的検討にはt検定を用いて有意水準を5%とした。<BR>【結果】1,事務職と理学療法士における安静時VO2、最大酸素摂取量(maxVO2)、嫌気性代謝閾値(AT)の比較;安静時VO2、maxVO2、ATとも理学療法士群は高い値を示しmaxVO2とATは、42.5±4.9と19.0±3.1 ml/min/kg であった。安静時VO2とATで有意の差を認めた。maxVO2では理学療法士群の方が高い値を示したが、有意差は認めなかった。2,体操(1)(2)におけるVO2の比較;体操(1)(2)で理学療法士群がともに20.3±3.4と21.0±2.3 ml/min/kgでVO2の高い傾向はあったが、統計的には事務職と理学療法士群での有意差を認めなかった。<BR>【考察】一般的に嫌気性代謝閾値(AT)は、日常の運動能力と等価ではないが、自覚症状を伴わず生活の大半で行っている運動を反映する評価指標として適していることが指摘されている。今回の結果も、日頃、体を動かすことの多い理学療法士が、安静時VO2及びATの値が高くなったことにつながったものと考えられた。「法を説く者、その実践者たれ!」という言葉があるように、健康増進に関心の高まってきている昨今、ますます我々理学療法士自身の体力強化の重要性と同時に、デスクワークの多い事務職におけるヘルスプロモーションの必要性が伺われた。