著者
丸山 祥 松本 仁美 岡和田 愛実 新藤 恵一郎 赤星 和人 金子 文成
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1437-1442, 2020-12-15

Abstract:脳卒中後の重度上肢麻痺に対する視覚誘導性自己錯覚(KINVIS)療法と従来型運動療法による複合療法に,Aid for Decision-Making in Occupation Choice for Hand(ADOC-H)を加えたアプローチによって日常生活での手の使用に変化がみられたので報告する.患者は50代男性で,左脳梗塞発症後3.5年経過していた.介入(10日間)は,①視覚誘導性自己錯覚療法,②従来型運動療法,③ADOC-Hを用いたアプローチを毎日行った(③のみ7日間).結果,上肢運動機能の改善を認め,日常生活での麻痺手の使用が増加した.本結果は,視覚誘導性自己錯覚療法と従来型運動療法によって運動機能改善が得られ,さらにADOC-Hを用いたアプローチによって日常生活での麻痺手の使用が促進することを示唆している.
著者
菅原憲一 内田 成男 石原 勉 高橋 秀寿 椿原 彰夫 赤星 和人
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.289-293, 1993
被引用文献数
22

脳卒中片麻痺患者39名を対象に歩行速度および歩行自立度に関与する因子を知る目的で, 上田による12段階片麻痺回復グレード法(以下グレード), 患側下肢荷重率, 患側下肢筋力, 深部感覚障害, 身長, 体重, 罹病日数, 年齢を選びその関連性を検討した。その結果, 歩行速度・歩行自立度に対して高い相関を示したのはグレード, 患側下肢荷重率, 患側下肢筋力であった。また, 三変数間の相関も高かった。さらに歩行能力の二つの指標を目的変数としたステップワイズ重回帰分析の結果では, 歩行速度の第一要因は患側下肢荷重率であるのに対し, 歩行自立度の第一要因はグレードとなっていた。以上の結果から片麻痺の歩行予後予測には運動機能評価における定性的評価に加えて, 定量的評価が重要であることが示唆された。
著者
小林 準 名波 美代子 境 哲生 片山 英紀 松野 大樹 山口 崇 伊藤 修一 赤星 和人 永田 雅章 勝川 史憲 山崎 元
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.848-848, 2003

【はじめに】我々は日常の理学療法場面で、肥満、糖尿病、高脂血症、脳卒中の患者群に対して、自主トレーニングのプログラムとして音楽に合わせた運動を実施している。この音楽に合わせた運動内容については、紹介および健常者群におけるデータを本学術大会において名波より報告している。本編ではさらに患者群と健常者群との比較検討を行ったので報告する。【対象と方法】対象は脳卒中片麻痺患者の女性10名と健常女性10名の合計20名であった。健常者は主に患者の介護者であった。実験の前には趣旨を説明して同意を得て行った。年齢、体重、身長は健常者群はそれぞれ56.2±6.6歳、152.9±3.2 cm、と53.3±7.3 kg であった。一方患者群はそれぞれ 58.0±9.6歳、157.6±5.3 cm、と66.0±13.3 kgであった。測定にはコスメデ社製「テレメトリー式呼吸代謝計測装置K4システム」を用いて、呼気ガス中の酸素摂取量(VO<sub>2</sub>)、炭酸ガス排出量(VCO<sub>2</sub>)、呼吸商(RQ)、および心拍数(HR)を計測した。測定方法としては、3から4分間程のオルゴールによる安静時間と3から4分間程の132拍/分のワールドベストヒット曲を交互に録音した自主トレーニングの為に作成した音楽テープに合わせて、以下に挙げた3種類の体操を座位にて行った。(1)膝の交互伸展、(2)手を組んで体幹の回旋、(3)手を組んで体幹の前後屈。データの統計的検討にはt検定および一元配置分散分析を用いて有意水準を5%とした。【結果】1,体操(1)から(3)におけるVO<sub>2</sub>の健常者と患者群の比較;健常者と患者群ともに体操(1)から(3)でVO<sub>2</sub>が8.3±2.1から12.2±2.6 ml/min/kg の幅で逐次VO<sub>2</sub>の増加を認め、分散分析でも有意の差を認めた。尚それぞれの体操における健常者群と患者群の比較では、患者群が低い値を示したがt検定での有意差は認めなかった。2,体操(1)から(3)における脂質代謝の比較;健常者と患者群ともに体操(1)から(3)で逐次0.87±0.35から1.49±0.72 kcal/minの幅で脂質代謝の増加傾向はあったが、統計的には各体操間での有意差を認めなかった。尚、RQは0.87から0.89であった。【考察】一般的にVO<sub>2</sub>については、運動負荷時に若干患者群のほうが低い値を示す傾向が言われているが我々の結果も同様な傾向が伺われた。と同時に健常者群も患者群もほぼ同じように、漸増的な運動負荷がかかるものと考えられた。一方脂質代謝については個人差が大きく、さらに日頃理学療法として体を動かしている患者群と、対象群とした健常者群は主に介護者であり、普段運動で体を動かす機会が少なくなっているという生活習慣と食事内容や体型の違いなどが、今回の結果には影響していたものと思われた。我々が行ってきた音楽テープとその体操は、主に座位で行えて総消費エネルギーが40kcal程になる。すなわち自転車エルゴメーターで40wで15分程の運動量に匹敵する。従って安全で効果的しかも気軽に楽しめるので臨床的にも有効であると確信している。今後はさらに心理面も含め総合的に経時的な変化についても検討していきたい。
著者
小林 準 赤星 和人 永田 雅章 名波 美代子 境 哲生 近藤 広陸 片山 英紀 松野 大樹 伊藤 修一 萩原 朋尚 高梨 晃
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A1047, 2005

【目的】近年「健康日本21」の推進が唱えられ、平成15年5月からは健康増進法も施行された。ヘルスプロモーションへの関心が高まる中で、我々、理学療法士の健康増進に対する役割もますます重要性が高まるものと考えられる。今回、日頃の理学療法場面で運動療法を指導する立場にある理学療法士と、日頃はデスクワークが多い事務職員との安静時及び運動時における換気反応について比較検討を行ったので報告する。<BR>【対象および方法】対象は健康な理学療法士の女性10名と事務職員の女性10名の合計20名であった。実験の前には趣旨を説明して同意を得て行った。年齢、体重、身長は理学療法士群はそれぞれ29.6±4.8歳、161.6±4.0 cm、と54.3±5.1 kg であった。一方事務職員群はそれぞれ 32.5±4.1歳、159.5±7.2 cm、と52.6±7.2 kgであった。測定にはコスメデ社製「テレメトリー式呼吸代謝計測装置K4システム」を用いて、呼気ガス中の酸素摂取量(VO2)、炭酸ガス排出量(VCO2)、呼吸商(RQ)、および心拍数(HR)を計測した。測定方法としては、充分な安静時間の後、更に3~4分間程のオルゴールによる安静時間と3~4分間程の132拍/分のワールドベストヒット曲に合わせて、以下に挙げた2種類の体操を立位にて行った。(1)手を頭上に組んで体幹の側屈、(2)全身運動のリズムダンス。そしてエルゴメーター運動負荷テストも行った。データの統計的検討にはt検定を用いて有意水準を5%とした。<BR>【結果】1,事務職と理学療法士における安静時VO2、最大酸素摂取量(maxVO2)、嫌気性代謝閾値(AT)の比較;安静時VO2、maxVO2、ATとも理学療法士群は高い値を示しmaxVO2とATは、42.5±4.9と19.0±3.1 ml/min/kg であった。安静時VO2とATで有意の差を認めた。maxVO2では理学療法士群の方が高い値を示したが、有意差は認めなかった。2,体操(1)(2)におけるVO2の比較;体操(1)(2)で理学療法士群がともに20.3±3.4と21.0±2.3 ml/min/kgでVO2の高い傾向はあったが、統計的には事務職と理学療法士群での有意差を認めなかった。<BR>【考察】一般的に嫌気性代謝閾値(AT)は、日常の運動能力と等価ではないが、自覚症状を伴わず生活の大半で行っている運動を反映する評価指標として適していることが指摘されている。今回の結果も、日頃、体を動かすことの多い理学療法士が、安静時VO2及びATの値が高くなったことにつながったものと考えられた。「法を説く者、その実践者たれ!」という言葉があるように、健康増進に関心の高まってきている昨今、ますます我々理学療法士自身の体力強化の重要性と同時に、デスクワークの多い事務職におけるヘルスプロモーションの必要性が伺われた。
著者
水野 勝広 赤星 和人 堀田 富士子 内川 研 永田 雅章 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.730-734, 2002-11-18
被引用文献数
3

We reported a case of auditory agnosia following bilateral intracerebral bleeding. A 56-year-old man was admitted to our rehabilitation hospital with disorder in cognition of human voices and environmental sounds. He suffered from intracerebral bleeding in right temporal lobe and in left putaminal hemorrage prior to this admission. He had no other cognitive disorders, and bilateral moderate sensorineural hearing loss was revealed by pure-tone audiometry. He could not recognize human voices or other kinds of environmental sounds. However he could communicate by writing, and his spontaneous talking was normal. Auditory brainstem response (ABR) was normal, but middle latency response (MLR) indicated impairments of left auditory radiation and right primary auditory cortex. We introduced lip-reading rehabilitation and educated the patient and his family. After 2 months, he could communicate with his family by listening and lip-reading, but he sometimes needed writing when he communicated with other medical staffs.
著者
小林 由紀子 赤星 和人 原 行弘 辻内 和人 岡村 陽子
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.778-782, 2005 (Released:2006-09-22)
参考文献数
16

In the rehabilitation of traumatic brain injury, emotional disorders such as a quick temper, depression and irritability are a critical problem, as well as cognitive dysfunctions such as impairment of attention and memory. In addition, it is rare that they are completely isolated and cognitive dysfunction and emotional disorders tend to have an influence on each other. In other words, the stress caused by cognitive dysfunction induces an aggressive emotional disturbance, and unrest of mood accelerates cognitive dysfunctions such as memory and judgment. Therefore, it is important to consider their emotional states when we start rehabilitation for patients with traumatic brain injury. We had a valuable experience in early rehabilitation of two patients with traumatic brain injury. We had very good results by thinking about the emotional disorder first, and thereafter training for the cognitive dysfunction. Case 1, a young male, was a computer programmer. After suffering a traumatic brain injury, he could not think logically and he had many emotional problems with his mother. Case 2 was a middle-aged housewife. She became depressive and negative towards rehabilitation, because of her memory problems post traumatic brain injury. We administered a rehabilitation regime which attached great importance to treating the emotional disorders affecting these two patients. As a result, in the early phase, we were able to make progress in cognitive rehabilitation as well as improving their emotional problems by our intervention, and they overcame their cognitive dysfunctions and resumed their normal daily lives in a month.
著者
小川 真司 赤星 和人 高橋 修 永田 雅章 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.320-324, 2005-05-18

正中神経感覚神経伝導検査の手掌部刺激は, 刺激部位, 記録部位が統一されていない. 手掌の刺激部位を定め, 逆行性感覚神経伝導検査を施行した. 記録電極は中指掌側近位指節関節付近に設置した. 刺激電極は手掌部, 手関節部, 肘関節部に設置した. 立ち上がり潜時の平均は, 手掌部で1.14msec, 手関節部で2.39msec, 肘関節部で5.98msecであった. 頂点潜時の平均は, 手掌部で1.66msec, 手関節部で3.00msec, 肘関節部で6. 82msecであった. 振幅の平均は, 手掌部で