著者
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出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.526-556, 2005-09-25

注射用セフェム系抗菌薬cefozopran (CZOP) の下気道感染症に対する早期治療効果を評価するため, ceftazidime (CAZ) を対照薬とした比較試験を市販後臨床試験として実施した。CZOPとCAZはともに1回1g (力価), 1日2回点滴静注により7日間投与し, 以下の結果を得た。<BR>1. 総登録症例412例中最大の解析対象集団376例の臨床効果は, 判定不能3例を除くとCZOP群92.0%(173/188), CAZ群91.4%(169/185) の有効率で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。細菌性肺炎と慢性気道感染症に層別した有効率は, それぞれCZOP群90.9%(120/132), 94.6%(53/56), CAZ群93.3%(126/135), 86.0%(43/50) で, 両側90%, 95%信頼区間ともに非劣性であることが検証された。<BR>2. 原因菌が判明し, その消長を追跡し得た210例での細菌学的効果は, CZOP群89.5%(94/105), CAZ群90.5%(95/105) の菌消失率 (菌消失+菌交代) で, 両群間に有意な差はみられなかった。個々の菌別の菌消失率は, CZOP群91.1%(113/124), CAZ群90.8%(108/119) で両群問に有意な差はみられなかったが, 最も高頻度に分離された<I>Streptococcus pneumoniae</I>の消失率はCZOP群100%(42/42), CAZ群89.5%(34/38) で, CZOP群がCAZ群に比し有意に優れ (P=0.047), 投与5日後においてもCZOP群がCAZ群に比し有意に高い菌消失寧を示した (P=0.049)。<BR>3. 投薬終了時に, CZOP群では52,4%(99/189), CAZ群では50.3% (94/187) の症例において治療日的が達成され, 抗菌薬の追加投与は不必要であった。治療Il的遠成度に関して両薬剤間に有意な差は認められなかった。<BR>4. 随伴症状の発現率はCZOP群3.9%(8/206), CAZ群5.0%(10/202) で両棊剤間に有意な差はなかった。臨床検査値異常変動として, CAZ群に好酸球増多がCZOP絆より多数認められたが, 臨床検査値異常出現率としては, CZOP群31.6% (65/206), CAZ群32.2% (65/202) で, 両群間に有意な差は認められなかった。<BR>以上の成績から, CZOPは臨床効果においてCAZと比較して非劣性であることが検祉された。また<I>S. pneumoniae</I>による下気道感染症に対するCZOPの早期治療効果が確認された。
著者
濱田 美奈子 加治木 章 永田 忍彦 若松 謙太郎 古森 雅志 松永 和子 岩田 安弘 石松 明子 北原 義也
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.427-432, 2005
被引用文献数
3

近年非結核性抗酸菌症の増加が指摘されているが,その多くが<I>Mycobacteriumaviumintracellulare</I>complex(MAC)症であり,<I>Mycobacteriumszulgai</I>肺感染症は比較的稀である。これまでの報告では本症の平均年齢は男性50.8歳女性36.3歳と若年であるが,われわれは高齢者に発症した<I>M.szulgai</I>肺感染症2例を経験したので報告する。症例1は75歳男性,2003年10月頃から労作時呼吸困難,咳,喀痰を認め12月15日近医受診,喀痰塗抹ガフキー6号を検出し紹介入院となった。右上肺野に空洞病変を認め,肺結核症再発を疑いisoniazid(INH),rifampicin(RFP),ethambutol(EB),pyrazinamide(PZA)の4剤を開始した。培養にて非結核性抗酸菌が分離されDNA-DNAhybridization(DDH)法にて<I>M.szulgai</I>と判明したためPZAを中止しINH,RFP,EBの3剤を続行した。2004年1月には菌陰性化を認め画像上も改善し,現在も治療を継続中である。症例2は73歳男性。1990年より肺MAC症,肺アスペルギローマにて加療し軽快していたが,1992年12月以降来院しなかった。1995年6月より全身倦怠感,血痰が出現し外来を受診した。胸部X線上増悪を認め,喀疾ガフキー3号の排菌を認めたためRFP,EBを開始した。培養にて非結核性抗酸菌が分離され,DDH法にて<I>M.szulgai</I>と同定された。薬剤感受性の結果からkanamycin(KM)の併用を開始し,3カ月目で排菌陰性化が得られ,画像,自覚症状ともに改善を認めた。