著者
北島 晴美
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.31, 2014 (Released:2014-10-01)
被引用文献数
1

1.はじめに 2012年の死亡数は,悪性新生物,心疾患,肺炎,脳血管疾患,老衰の順に多い。高齢化の進行とともに,死因の順位も変化している。老衰を死因とする死亡者は,ほぼ60歳以上に限定され,高齢になるほど老衰を死因とする比率が高くなる。年齢階級別にみると,老衰は95~99歳の死因第2位,100歳以上の死因第1位であり(2012年),これまでの死因の年次推移からみて,今後,高齢化が進行すると,老衰による死亡の比率は現在よりもさらに上昇すると予測される。 発表者らは,高齢者死亡率の季節変化に関して,全国,都道府県別に調べ,全死因,心疾患,脳血管疾患,肺炎死亡率は,夏季に低く冬季に高い傾向を確認した(北島・太田,2011,2013,など)。 本研究では,老衰による死亡数の推移,死亡率の季節変化について,最近の傾向を年齢階級別に調べ,高齢者の中でも,若い層とより高齢な層では,どのような違いがみられるのかを検討した。2.研究方法 使用した死亡数データは,人口動態統計(確定数)(厚生労働省)である。死亡数が多い75~84歳,85~94歳,95歳以上の3年齢階級を対象とし,季節変化を見るために,各年齢階級の毎月の死亡率を算出した。北島・太田(2011)と同様に,各月死亡率は,1日当り,人口10万人対として算出した。人口は各年10月1日現在推計人口(日本人人口)(総務省統計局)を使用した。3.老衰死亡数の推移 2000年以降の,全国の全死因による死亡数が増加傾向にあるのと調和的に,老衰による死亡数も増加している。高齢人口が増加したことを反映したと考えられる。2000年代後半から,増加が加速し,85~99歳で顕著に増えている。10歳階級別では,最も老衰死亡数が多いのは,85~94歳,次いで,95歳以上,75~84歳である。4.老衰死亡割合の推移 75~84歳,85~94歳,95歳以上の年齢階級において,老衰死亡割合(老衰死亡数が全死亡数に占める割合)は,2000年以降では,75~84歳はほとんど変化がない。2000年代後半から,85~94歳はやや増加,95歳以上では増加傾向が見られる。95歳以上の老衰による死亡割合は,2005年には15.3%であったが,2012年には21.3%となり,5人に1人は老衰で死亡している。5.老衰死亡率の季節変化 2009~2012年の年齢階級毎の老衰死亡率は,冬季に高く夏季に低い傾向が見られる(図1)。年齢階級が上がるほど,死亡率の季節変化が顕著になる。75~84歳老衰死亡率の,季節変化は微少である。4年間のデータでは,85~94歳,95歳以上の老衰死亡率は,6月に最も低く,12月に最も高い。
著者
北島 晴美 太田 節子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100141, 2011 (Released:2011-11-22)

1.はじめに日本では,1966年に死亡数が最少の670,342人となった。その後,高齢化の進行とともに死亡数が増加 し,粗死亡率も1979年に最低値6.0(人口1000対)を記録したが,その後は上昇傾向にある。一方,年齢調整死亡率は,粗死亡率が上昇に転じた後も低下傾向にある。粗死亡率の上昇は,老年人口の増加,年少人口の減少により,人口構成が変化し,死亡数が増えたことに起因する。今後,さらに高齢化が進行し,粗死亡率の上昇傾向も継続し,医療費や社会福祉など様々な分野での対応が急務とされる。本研究では,高齢者(65歳以上)の月別,年齢階級別,死因別の死亡について特徴を把握した。2.研究方法使用したデータは,2001~2009年人口動態統計年報(確定数),2010年人口動態統計月報(概数)(厚生労働省)である。月別死亡率の季節変化,年次推移を把握するために,1日当り,人口10万人対の死亡率を算出し,月別日数,閏年の日数の違いによる影響を除去した。また,各年の月別死亡率は,推計人口(各年10月1日現在,日本人人口)(総務省統計局)を用いて算出した。高齢者死亡率は,65歳以上と,65~74歳,75~84歳,85歳以上の年齢階級に分割したものを検討した。3.月別死亡率の変化傾向総死亡(全年齢階級,全死因)の月別死亡率は,2001~2010年において,いずれの月も変動しながら上昇傾向にあり,死亡率は冬季に高く夏季に低い(厚生労働省,2006,北島・太田,2011)。高齢者の場合も,65~74歳(図1),75~84歳,85歳以上の年齢階級のいずれにおいても,月別死亡率は,冬季に高く夏季に低い傾向がある。2001~2010年の10年間の月別死亡率年次推移は, 65~74歳(図1),75~84歳では,いずれの月の死亡率も,次第に低下する傾向が見られる。85歳以上の死亡率は,年による変動が大きい。4.4大死因別死亡率の季節変化2009年確定数による,65歳以上,各月,4大死因別死亡率は,悪性新生物には季節変化が見られないが,心疾患,脳血管疾患,肺炎の死亡率は,いずれも冬季に高く夏季に低い傾向がある。冬と夏の死亡率比(65歳以上,最高死亡率(1月)/最低死亡率(7月または8月))は,心疾患1.7,脳血管疾患1.4,肺炎1.6である。
著者
北島 晴美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2016年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100158, 2016 (Released:2016-11-09)

1.はじめに発表者は,心疾患,脳血管疾患,肺炎,老衰の死亡数・死亡率の季節変化について報告している(北島・太田,2009a, 2009b,2011, 2012a, 2012bなど)。全死亡数の3割弱を占め,死因第1位の悪性新生物による死亡数は,季節変動しないが,第2位~第5位の死因(心疾患,肺炎,脳血管疾患,老衰)による死亡数は,いずれも冬季に多く夏季に少ない傾向を示す。冬季の気温は上昇し,住居の暖房が完備し,気密性が向上し,居住環境は好転しているが,最近でも死亡数の冬山は消滅しない状況である。死亡数の多くは高齢者であり,高齢者には季節の推移による気温変化が,依然として寿命を左右する要因といえよう。2009年以降の最新のデータにより,主要死因(悪性新生物,心疾患,肺炎,脳血管疾患,老衰)別に,毎年の月別死亡率の季節変化傾向と,死亡率の経年的変動について,分析した。 2.研究方法使用した死亡数データは,人口動態統計(確定数)(厚生労働省)である。死亡数が多い75~84歳85~94歳,95歳以上の3年齢階級を対象とし,季節変化を見るために,死因別,年齢階級別,月別死亡率(全国,総数)を算出した。北島・太田(2011)と同様に,各月死亡率は,1日当り,人口10万人対として算出した。人口は各年10月1日現在推計人口(日本人人口)(総務省統計局)を使用した。 3.主要死因別死亡率の季節変化と推移(1) 悪性新生物(図1)3年齢階級とも,他の死因のような明瞭な季節変化は見られないが,84~95歳の死亡率は,図1のように,わずかに夏低く11・12月に高い傾向がある。75~84歳の死亡率は2009年から2014年にかけて,低下傾向がみられる月が多い。  (2) 心疾患(図2)3年齢階級とも死亡率は冬季に高く,夏季に低い傾向がある。75~84歳,85~94歳の死亡率は,2009年から2014年にかけて,多くの月で低下傾向がみられる。  (3) 肺炎,脳血管疾患肺炎,脳血管疾患の死亡率は心疾患よりも低いが,季節変化,経年変化とも心疾患死亡率と類似傾向である。  (4) 老衰3年齢階級とも死亡率は冬季に高く夏季に低い傾向がある。3年齢階級の死亡率は,2009年から2014年にかけて,全月で上昇傾向がみられ,他の主要死因とは対照的である。 4.各月気温と死亡率の関係2009~2014年の日本の月平均気温偏差(気象庁)が特徴的な年・月(高温,低温)について,全国の死亡率のほか,都道府県別死亡数デーを確認した。
著者
江口 卓 松本 淳 北島 晴美 岩崎 一孝 篠田 雅人 三上 岳彦 増田 耕一
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.43-54, 1986-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

降水量は,世界の気候を明らかにする上で重要な気候要素であるが,全球の降水量分布の詳細な解析は,月より短い時間スケールではこれまで行なわれていない.著者らは, FGGE特別観測中の日降水量資料をもとに作成した旬降水量資料を用い,特に無降水域に着目し,全球の大陸上の降水量分布の季節内変動および季節間の相異を明らかにすることを試みた。そして,無降水域からみた世界の:気候区分図を提示し,大陸の西岸・東岸の気候区界について論.じた。 無降水域の季節重ね合わせ図にもとついて3種類の無降水域,「極小無降水域」・「平均無降水域」・「極大無降水域」を定義した.北半球では, DJF季(12~2月)には,平均無降水域がアフリカ北部からチベット高原にかけて広く分布する.一方, JJA季 (6月中旬~8月中旬)には,それはアフリカ北部から西アジアにかけて分布する.南半球では, DJF季には,平均無降水域は各大陸の西岸に限られて分布するが, JJA季には各大陸に広く分布し,また,極小無降水域が南アメリカの北東部に出現する.無降水域の季節内での変動は, DJF季の北アメリカ北部とオーストラリアで特に大きい. 以上2季節の無降水域の分布の解析結果から, 4つの季節無降水域を設定した。それらは,冬と夏の極小無降水域 (mNPA), 冬と夏の平均無降水域 (wsNPA), 冬のみの平均無降水域 (wNPA) と夏のみの平均無降水域 (sNPA) である.大陸の西部ではmNPAとwsNPAが広く分布し,かつすべての無降水域型が帯状に並列している.各大陸の西部では,各無降水域型がアリソフやヶッペンの気候型とよく対応している.しかし,大陸の東部には, wNPAが現われるか,または無降水域はまったく出現せず,アリソフやケッペンの各気候型との関連も良くない。無降水域の分布からみると,各大陸の東部と西部との境は,各大陸上でもっとも高い山脈の西側に位置することが明らかになった.
著者
北島 晴美 太田 節子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.100141, 2011

1.はじめに<br>日本では,1966年に死亡数が最少の670,342人となった。その後,高齢化の進行とともに死亡数が増加 し,粗死亡率も1979年に最低値6.0(人口1000対)を記録したが,その後は上昇傾向にある。一方,年齢調整死亡率は,粗死亡率が上昇に転じた後も低下傾向にある。粗死亡率の上昇は,老年人口の増加,年少人口の減少により,人口構成が変化し,死亡数が増えたことに起因する。<br>今後,さらに高齢化が進行し,粗死亡率の上昇傾向も継続し,医療費や社会福祉など様々な分野での対応が急務とされる。本研究では,高齢者(65歳以上)の月別,年齢階級別,死因別の死亡について特徴を把握した。<br>2.研究方法<br>使用したデータは,2001~2009年人口動態統計年報(確定数),2010年人口動態統計月報(概数)(厚生労働省)である。<br>月別死亡率の季節変化,年次推移を把握するために,1日当り,人口10万人対の死亡率を算出し,月別日数,閏年の日数の違いによる影響を除去した。また,各年の月別死亡率は,推計人口(各年10月1日現在,日本人人口)(総務省統計局)を用いて算出した。<br>高齢者死亡率は,65歳以上と,65~74歳,75~84歳,85歳以上の年齢階級に分割したものを検討した。<br>3.月別死亡率の変化傾向<br>総死亡(全年齢階級,全死因)の月別死亡率は,2001~2010年において,いずれの月も変動しながら上昇傾向にあり,死亡率は冬季に高く夏季に低い(厚生労働省,2006,北島・太田,2011)。<br>高齢者の場合も,65~74歳(図1),75~84歳,85歳以上の年齢階級のいずれにおいても,月別死亡率は,冬季に高く夏季に低い傾向がある。<br>2001~2010年の10年間の月別死亡率年次推移は, 65~74歳(図1),75~84歳では,いずれの月の死亡率も,次第に低下する傾向が見られる。85歳以上の死亡率は,年による変動が大きい。<br>4.4大死因別死亡率の季節変化<br>2009年確定数による,65歳以上,各月,4大死因別死亡率は,悪性新生物には季節変化が見られないが,心疾患,脳血管疾患,肺炎の死亡率は,いずれも冬季に高く夏季に低い傾向がある。冬と夏の死亡率比(65歳以上,最高死亡率(1月)/最低死亡率(7月または8月))は,心疾患1.7,脳血管疾患1.4,肺炎1.6である。
著者
北島 晴美 太田 節子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.138, 2005 (Released:2005-07-27)

1.はじめに 筆者らは,これまで都道府県別平均寿命(0歳平均余命)と気候との関係を,『メッシュ気候値2000』(気象庁)を使用して分析し,_I_期(1923, 1928, 1933)には,男・女の平均寿命と降水量には有意な相関関係がみられることから,降雪量の違いが_I_期平均寿命の地域差に影響した可能性を確認した。_II_期(1955, 1960, 1965, 1970, 1975)には,男・女の平均寿命は,全年を通しての月平均気温(日最高,日最低,日平均気温)と正相関があり,最深積雪と負相関がある。_II_期に見られた平均寿命と気温,最深積雪との相関関係は,_II_期の前半までの全国の状況を反映したものと推察された。_III_期(1980, 1985, 1990, 1995, 2000)には,男女の平均寿命は気候要素とほぼ無相関であった(北島・太田,2004)。 _III_期には,平均寿命と気候には相関関係が見られないが,高齢者に限れば冬季の気候条件の違いが戸外での活動を制限し老化の進行に影響する可能性があり,高齢者の平均余命は,全ての年齢階級の死亡率を反映した平均寿命よりも気候の影響を受けやすいと考えられる。 本研究の目的は,高齢者の平均余命が_I_期,_II_期において平均寿命よりも気候条件と関連していたのか,_III_期において高齢者の平均余命は気候条件と関連があるのかを,長期間のデータから明らかにすることである。2.研究方法 北島・太田(2004)と同様の資料から,_I_期,_II_期,_III_期について,都道府県別高齢者平均余命分布図を作成し,平均寿命の分布とどのような違いが見られるのか調べた。 次に,各期間で都道府県別高齢者平均余命は気候要素とどのような相関関係を持つかを検討した。 さらに,各期間の特徴を詳細に検討するために,13年分の65_から_80歳の平均余命と気候要素との相関係数の変遷を調べ,特徴的な相関関係を示した気候要素について,高齢者の平均余命に及ぼす影響を考察した。3.高齢者の平均余命と気候要素との相関係数の変遷 日平均気温(年平均)と平均寿命および65歳平均余命との相関係数(図1)は,平均寿命,65歳平均余命とも_II_期に最も相関が強く,_III_期に最も弱い。_I_期には両者の中間的な値を示す。平均寿命よりも65歳平均余命の方が日平均気温と相関が強い。平均寿命は_III_期には日平均気温と有意な相関関係がないが,65歳平均余命は1985年まで日平均気温と有意な相関関係がみられる。 年最深積雪と平均寿命との相関係数(図2)は,_I_期に最も負の相関が強く,_II_期,_III_期には次第に相関が弱くなり1990年以降は相関係数が0前後となった。65歳平均余命では,_II_期に最も負の相関が強く,その後次第に相関係数が0に近づく。_II_期,_III_期において,平均寿命よりも65歳平均余命の方が年最深積雪と相関が強い。平均寿命と年最深積雪に有意な相関関係がみられるのは,1965年(男性)あるいは1970年(女性)までであるが,65歳平均余命は1980年まで有意な相関関係がある(図2)。75歳平均余命は1985年まで,80歳平均余命は1990年まで有意な相関関係がみられる。 以上のように,高齢者の平均余命は,_I_期の最深積雪を除いて平均寿命よりも気候との相関関係が強く,_III_期初めまで気温・最深積雪と有意な相関関係があった。また,高齢になるほど,有意な相関関係が最近まで持続する傾向があった。北島晴美,太田節子 2004:都道府県別平均寿命の分布の変遷と気候の影響.信州大学山地水環境教育研究センター研究報告,3,53‐75.