著者
三上 岳彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.79-88, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
24
被引用文献数
4

日本の都市ヒートアイランド研究が大きく進展している.東京都心部の年平均気温は過去100年間に3°Cも上昇しており,地球平均気温の5倍の上昇率である.都市高温化の要因としては,第一に人工廃熱の増加による都市大気の直接加熱,第二に都市構造の変化,すなわち地表面の人工化や高層建造物の増加,緑地・水面の減少が挙げられる.最近行われた一連のプロジェクト研究から,都市内大規模緑地のクールアイランド効果や東京湾海風に及ぼす高層ビル群の影響,さらに高密度観測網による都内気温分布の日変化と海風による移流効果などが解明されつつある.今後のヒートアイランド問題の解明には,気候学をはじめ,気象学,建築・土木工学,医学,生態学など多くの分野における学際的な研究が不可欠である.
著者
三上 岳彦 永田 玲奈 大和 広明 森島 済 高橋 日出男 赤坂 郁美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
巻号頁・発行日
pp.100193, 2017 (Released:2017-10-26)

筆者らの研究グループでは、東京首都圏におけるヒートアイランドと短時間強雨発生の関連を解明する目的で、気温・ 湿度(143地点)、気圧(49地点)の高密度観測(広域METROS)を行っている。2015年7月24日の14:00-15:00に、東京南部の世田谷区を中心に時間雨量が約50mmの短時間強雨が発生した。そこで、この日の短時間強雨について、事例解析を行った。この事例解析から、世田谷付近で増加傾向を示す短時間の局地的豪雨の要因として、降雨開始3時間前頃に高温域が形成されると、その約1時間後に熱的低気圧が発生し、さらに2時間後には、南からの海風進入による湿潤空気の流入で水蒸気量が急激に増加して豪雨となると考えられる。豪雨開始と同時に急激な気圧の上昇が起こるが、これは発達した積乱雲内部での強い下降流によるものと推察される。
著者
財城 真寿美 三上 岳彦
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.6, pp.1010-1019, 2013-12-25 (Released:2014-01-16)
参考文献数
25
被引用文献数
4

Climate variations in Tokyo based on reconstructed summer temperatures since the 18th century and instrumental meteorological data from the 19th century to the present are discussed. During the Little Ice Age, especially in the 18th century, remarkably cool episodes occurred in the 1730s, 1780s and 1830s. These cool conditions could be a significant reason for severe famines that occurred during the Edo period. Around the 1840s and 1850s near the end of the Edo period, it was comparatively warm which could correspond to the end of the Little Ice Age in Japan. Although there was a low-temperature period in the 1900s, a long-term warming trend could be seen especially in winter temperatures and daily minimum temperatures throughout the 20th century. While annual precipitation has been increasing during the last 30 years, relative humidity has been decreasing. This could result from a saturated vapor pressure rise due to warming and from a loss of water bodies due to urbanization. During the last century, not only warmer conditions but also wetter conditions in summer and autumn and drier conditions in winter and spring were documented by analyzing hythergraphs.
著者
長谷川 直子 三上 岳彦 平野 淳平
出版者
公益社団法人 日本地理学会
巻号頁・発行日
pp.116, 2019 (Released:2019-09-24)

1. はじめに/研究目的・方法 長野県諏訪湖では冬季に湖水が結氷しその氷が鞍状に隆起する御神渡りと呼ばれる現象が見られる。これが信仰されてきたことにより、その記録が575年にわたり現存している(石黒2001)。この記録には湖の結氷期日も含まれており、藤原・荒川によってデータベース化され(Arakawa1954)それらが長期的な日本中部の冬季の気候を復元できる資料として世界的にも注目されてきた(Gray1974)。 しかしこれらのデータは複数の出典に分かれており、出典ごとに記載されている内容が異なるものであり(表1)、統一的なデータベースとして使用するには注意が必要である。また一部の期間についてはデータのまとめ違いがあることもわかっており(Ishiguro・Touchart 2001)、このデータを均質的なデータとしてそのまま使用することは問題と考えている。そこで演者らはこのたび、諏訪湖の結氷記録をもう一度改めて検証し直し、出典ごとに記載されている内容がどのように違うのかを丁寧に検討し、それらのデータの違いを明らかにしていく。 2.諏訪湖の結氷記録の詳細 写真1:現地調査で確認した原本の例 諏訪湖の結氷記録は出典が様々であり、大きく分けると表1のようになっている。出典毎にそれぞれ、観測・記録した団体が別々のものであったり、観測者が記載したものから情報が追加されて保管されているものもある。表1に示した出典のうち一部は諏訪史料叢書に活字化されて残されているが、そこに掲載されていない資料もある。活字化されていないものについては原本に当たる必要があるが、現在ではその原本が所在不明なものもある。演者らは、活字化されていない資料を中心に、原本の所在を確認しているところである(写真1)。また世界的に広く使われている期日表は藤原・荒川のものであるが、田中阿歌麿が「諏訪湖の研究」(田中1916)の中ですでに期日表をまとめており、これと藤原・荒川期日表との照合も必要であると考えている。 3. 近年の気候変動と諏訪湖の結氷 近年、諏訪湖の結氷が稀になっていることは気候温暖化との関連も考えられ、図1に示すように気候ジャンプとの関連もみられる。これについては諏訪湖を含めた北半球での報告もされており(Sharma et al. 2016)、最近数十年に限定した詳細な検討も必要だと考えている。
著者
Michael J. GROSSMAN 財城 真寿美 三上 岳彦 Cary MOCK
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.457-470, 2018-08-25 (Released:2018-10-05)
参考文献数
34
被引用文献数
2

歴史文書は,気象官署による測器を用いた公式気象観測が開始される以前の台風復元において,貴重な情報源となる。本稿では,1877年の日本(北海道,本州,四国,九州)に影響をおよぼした台風について,詳細な情報を含む5つの資料(1:日本で出版された英字新聞,2:歴史天候データベース,3:日本の灯台気象観測記録,4:イギリスおよびアメリカ合衆国の船舶の航海日誌,5:中央気象台の気象観測表)の検証を行った。そしてこれらすべての資料から,1877年において日本に上陸もしくは接近した4つの台風事例(6月11日,7月26-27日,8月25-27日,10月11日)が明らかとなり,歴史文書は,日本における暴風雨の位置,移動経路,風速,気圧,被害などに関する詳細な情報を含んでいることが裏づけられた。歴史文書に記録された台風に関する情報は,台風の襲来頻度や強度,挙動に関する理解を,気象観測や台風観測の詳細な数値データが十分に得られない過去の時代にまで,さかのぼる可能性を有しているといえる。
著者
前島 郁雄 鈴木 啓介 田上 善夫 岡 秀一 野上 道男 三上 岳彦
出版者
東京都立大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

本年度は、3年間の研究計画の最終年度であり、研究成果をまとめると以下の通りである。1.全国19地点の日記の天候記録をもとに、1771-1840年の70年間について、夏季4ケ月(6〜9月)の毎日の天候分布図を完成した。次に、北海道を除く全国を5つの地域に区分し、各地域毎に降雨の有無の判定を行なった。降雨の有無を1と0とで表現し、その組み合せから、全32タイプの天候分布型を設定して毎日の天候分布型の分類を行なった。その結果を天候分布型カレンダ-としてまとめた(成果報告書参照)。2.一方、現在の天候デ-タを用いて、上記と同様の方法で1975〜84年の10年間について、天候分布型の分類を行なった。気圧配置型については、吉野ほか(1967、1975、1985)による分類法を若干修正して用いることにした。各天候分布型に対応する日の気圧配置型を集計して、両者の対応関係を検討した。その結果、一つの天候分布型に対して必ずしも一義的に気圧配置型が対応しないことが明らかになった。3.最終的に、次の手順で気圧配置型の復元を試みることにした。(1)歴史時代の毎日の天候分布図を作成し、上述の方法で32通りの天候分布型に分類する。(2)現在の観測デ-タに基き作成した各天候分布型に対応する前線と高低気圧・台風中心位置の合成図を参考に、ワ-クシ-トを作成する。ワ-クシ-トには、想定される概略的な前線と高低気圧の中心位置を書き込む。この場合、連続性や高低気圧の移動速度等を考察する。(3)完成したワ-クシ-トをもとに、毎日の気圧配置性を吉野らによる分類法にしたがって復元する。本研究では、実際に1783年(天明の飢餓年)の6〜7月の気圧配置型の復元を試みた。
著者
松本 太 三上 岳彦 福岡 義隆
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.322-334, 2006-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1 5 3

本研究では東京都区部において2004年春のソメイヨシノの開花日を調査し,気温分布との関係を考察した.その結果,開花日の分布は2004年3月の平均気温の分布とよい対応を示しており,都心部の高温域で開花が早く,郊外部の低温域で遅い傾向がみられた.よって,ヒ-トアイランド現象が開花日に影響を与えていることが明らかとなった。また,開花日と3月の平均気温との関係は,温度変換日数(積算気温のモデル)を用いて,開花日に至るプロセスを評価することによって裏付けられた.各観測地点における開花日から2004年3月の平均気温を推定し,その精度を実測値との比較により評価した.その結果,推定値と実測値との誤差はほとんどの地点で±0.3°C以内で,二乗平均平方根誤差(RMSE)は0.2°Cであった.よって開花日がヒ-トアイランドなどロ-カルスケ-ルの気候環境を表す指標となり得ると考えられる.
著者
三上 岳彦 大和 広明 広域METROS研究会
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.317-324, 2011-04-25 (Released:2011-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
10 12

This paper describes our newly developed high-resolution temperature observational system called Extended-METROS, which has been deployed in the Tokyo Metropolitan Area since 2006. Some climatological mean temperature charts using Extended-METROS data are analyzed in terms of urban climatology, and detailed urban heat island temperature patterns are clarified. Rainfall measurements were set up from August 2010 at 40 points in the Tokyo Metropolitan Area. The relationship between urban heat islands and local-scale heavy rainfall patterns in urban areas will also be analyzed based on our high-resolution meteorological observation system.
著者
大和 広明 三上 岳彦 高橋 日出男
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.325-340, 2011-04-25
参考文献数
12
被引用文献数
3 14

We analyze the influence of sea breeze on temperature distribution in the Kanto Plain (central Japan) on a day that a sea breeze front was detected (known as sea-breeze front days) using high-resolution temperature data observed by our research team.<br> The high-temperature area on sea breeze front days moves northwest from central Tokyo, and was located at Kawagoe city (middle Kanto Plain) at 14 JST, and the northern Kanto Plain at 16 to 18 JST, respectively. This high-temperature area appears at the head of the sea breeze front to the leeward of central Tokyo, where the daily maximum temperature is highest in Kawagoe city and the northern Kanto Plain. After the sea breeze front passes, the area where the temperature is higher than that at the circumference is distributed in the shape of a wedge. This wedge-shaped area is located to the leeward of central Tokyo where the wind from Tokyo Bay and Sagami Bay forms a convergence zone. The high-temperature area around Kawagoe city, which cannot be found on days with strong winds, is formed from the hindrance of cold air advection caused by sea breeze front penetration.<br> On the other hand, high temperatures in the northern Kanto Plain may not be related to the penetration of sea breeze fronts, which do not reach the northern Kanto Plain on days when the daily maximum temperature is recorded. However, the temperature in the northern Kanto Plain is higher on sea breeze days than on strong southerly wind days, and this suggests that local circulation plays an important role in causing high temperatures in the northern Kanto.
著者
亀野 勝彦 永谷 結 柄澤 孝和 梅木 清 本條 毅 三上 岳彦
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
巻号頁・発行日
pp.197-202, 2008 (Released:2011-01-07)

本研究では,ヒートアイランド分布への風向の影響を首都圏スケールで明らかにすることを目的とし,夏季における広域METROSの気温データおよびAMeDASの降雨量と風向,風速データを使用して,観測領域内で1日の内に卓越する風向を東西南北別に解析に用いた。気温差を時系列解析した結果,ヒートアイランドは夜間に都心を,日中に都心および関東平野中央部を中心とし,風向変化から影響を受け,風下側に移動することが明らかになった。この移動は2~3時間の短い期間の風向変化に伴って,急速に起こることがあった。また南東の時には神奈川県沿岸部で,東京湾沿岸部と比較して,海風による強い冷却効果を受けることが明らかになった。
著者
三上 岳彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100318, 2015 (Released:2015-04-13)

気象庁・東京観測点が2014年12月2日に、大手町から製法約900mの北の丸公園に移転した。移転による気温日変化を明らかにするため、両地点の気温日変化を比較分析した。その結果、新観測点の北の丸の夏期平均気温は、約10年の大手町・旧観測点とほぼ等しいことが明らかになった。両地点の気温差は、特に夜間~早朝の時間帯に大きくなり、皇居の冷気にじみ出しにともなう顕著なクールアイランド効果が認められた。
著者
大和 広明 森島 済 赤坂 郁美 三上 岳彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.74-84, 2017 (Released:2017-07-27)
参考文献数
12

関東地方で実施した高密度観測から得られた夏季の気温と気圧データに対して主成分分析を行い,これらの時空間変動にみられる特徴を明らかにした.気温場と気圧場それぞれの上位3主成分には,海陸風循環,ヒートアイランド現象,北東気流に関係した空間分布が認められ,相互の主成分間に有意な相関関係が存在する.これらの気温と気圧の関係は,いずれも相対的に気温が高い(低い)地域で気圧が低い(高い)傾向を示す.晴天日の気温と気圧の分布には明瞭な日変化が認められ,日中には海風の発達に伴い,関東平野の内陸部で相対的に高温低圧となり,日没後から夜間にかけては,ヒートアイランド現象が顕在化して東京都心から北側郊外にかけての都市部で相対的な高温低圧傾向が認められた.これらの観測事実に基づいた解析から,晴天日の気温と気圧の主要な日変化パターンに,内陸部の高温低圧に伴う海風循環とヒートアイランド現象に伴う高温低圧が認められた.
著者
成田 健一 三上 岳彦 菅原 広史 本條 毅 木村 圭司 桑田 直也
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.403-420_1, 2004-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31
被引用文献数
15 20

新宿御苑を対象に夜間の冷気の「にじみ出し現象」の把握を主眼とした微気象観測を夏季約7日間連続して行った.緑地の境界に多数の超音波風速温度計を配置し,気流の直接測定から「にじみ出し現象」の把握を試みた.その結果,晴天かつ静穏な夜間,全地点でほぼ同時に緑地から流出する方向への風向の変化と約1°Cの急激な気温低下が観測された.にじみ出しの平均風速は0.1~0.3 m/sで,にじみ出し出現時にはクールアイランド強度が大きくなる.このときの気温断面分布には流出した冷気の先端に明確なクリフが現れ,その位置は緑地境界から80~90 mであった.このような夜間の冷気の生成に寄与しているのは樹林地よりも芝生面で,芝生面は表面温度も樹冠より低い.芝生面の顕熱流束は夜間負となるが,にじみ出し出現夜はほぼゼロとなる.すなわち,クールアイランド強度の大小と大気を冷却する効果の大小は,別のものと考えるのが妥当である.
著者
DEMAREE Gaston R. MAILIER Pascal BEILLEVAIRE Patrick 三上 岳彦 財城 真寿美 塚原 東吾 田上 善夫 平野 淳平
出版者
東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.503-511, 2018
被引用文献数
3

<p> ルイ・テオドール・フュレ神父(1816-1900年)は,パリ外国宣教会の宣教師として極東に派遣された。日本の琉球諸島・沖縄の那覇における彼の気象観測原簿の発見は,19世紀日本の歴史気候学に新しい進展を開くものである。フュレは,1855年2月26日に沖縄の主要な港である那覇(19世紀の文献ではNafaと綴っていた)に到着した。1856年12月から1858年9月まで,彼は1日5回(午前6,10時,午後1,4,10時)の気象観測を行った。水利技師アレクサンドル・デラマーシュ(1815-1884年)は,フランス海軍兵站部によってフュレ神父に委託された気象測器の検定を行った。気象観測は,1850年代のフランスで使われていた気象観測方式に従って実施された。気圧観測データは,気圧計の読みとり値,気圧計付随温度計の読みとり値,そして温度補正した気圧の数値で記載されている。気圧データは,必要に応じて,1850年代に使われたデルクロスとハイゲンスの公式を用いて検定・補正された。この歴史的な気圧観測データを現在の那覇における気圧平年値と比較した。観測期間中の1857年5月に台風が接近通過したことが,ルイ・フュレ神父によって目撃されている。ほかにも何度か気圧の低下が観測されているが,おそらく発達した低気圧の通過によるものであろう。そうしたなかで,オランダ船ファン・ボッセが多良間諸島の近くで難破したことがあったが,船長と彼の妻や船員達は島民に救助された。その後,彼らは沖縄の那覇に移送されたが,そこで3名のフランス人宣教師と出会い,最終的に出島のオランダ交易所からバタビア(現在のジャカルタ)へと航行した。</p>
著者
GROSSMAN Michael J. 財城 真寿美 三上 岳彦 MOCK Cary
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.457-470, 2018
被引用文献数
2

<p> 歴史文書は,気象官署による測器を用いた公式気象観測が開始される以前の台風復元において,貴重な情報源となる。本稿では,1877年の日本(北海道,本州,四国,九州)に影響をおよぼした台風について,詳細な情報を含む5つの資料(1:日本で出版された英字新聞,2:歴史天候データベース,3:日本の灯台気象観測記録,4:イギリスおよびアメリカ合衆国の船舶の航海日誌,5:中央気象台の気象観測表)の検証を行った。そしてこれらすべての資料から,1877年において日本に上陸もしくは接近した4つの台風事例(6月11日,7月26-27日,8月25-27日,10月11日)が明らかとなり,歴史文書は,日本における暴風雨の位置,移動経路,風速,気圧,被害などに関する詳細な情報を含んでいることが裏づけられた。歴史文書に記録された台風に関する情報は,台風の襲来頻度や強度,挙動に関する理解を,気象観測や台風観測の詳細な数値データが十分に得られない過去の時代にまで,さかのぼる可能性を有しているといえる。</p>
著者
久保田 尚之 松本 淳 三上 岳彦 財城 真寿美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<b>1.はじめに</b><br>台風の長期変動を明らかにするには、台風経路や強度に関するデータが欠かせない。西部北太平洋地域では現在、気象庁、アメリカ海軍統合センター(JTWC)、香港気象局、上海台風研究所が台風の位置や強度に関する情報を1945年以降提供している。<br><br>過去の気象データを復元する「データレスキュー」の取り組みで、それぞれの気象局が1945年以前についても台風の位置や被害に関する記録を残していた(Kubota 2012)。過去の台風に関する情報を復元することで、100年スケールの台風の長期変動の解明に向けた研究を報告する。<br><br><b>2. 台風経路データの整備</b><br><br>現在台風は最大風速から定義されている。台風の正確な位置や強度を特定するには、航空機の直接観測や気象衛星からの推定が必要である。このため現在と同精度で利用可能な台風データは1945年以降に限られている。一方でデータレスキューにより、各気象局から台風情報を入手し、これまで台風の位置情報をデジタル化してきた(Kubota 2012)。香港気象局と徐家匯(上海)気象局の資料は1884年まで遡ることができる(Gao and Zeng 1957, Chin 1958)。ただし、当時は台風の定義がなく、船舶や地上の気象台のデータから台風の位置を推定しており、精度の面で現在の台風データと同等に扱うのが難しいという点があった。<br> 台風の最大風速と中心気圧には関係がある(Atkinson and Holiday 1977)ことを用いて、台風の中心気圧を用いて台風を再定義する品質検証を行った(Kubota and Chan 2009)。気圧データは陸上に観測点が多く入手が容易なため、日本に上陸した台風に着目し、解析を進めた。北海道、本州、四国、九州に上陸した台風を対象とする。現在の台風の定義である最大風速35ktは中心気圧1000hPaに対応しており、陸上で1000hPa以下を観測した場合を台風上陸と定義し、全期間統一した定義を適応して台風データを復元した(熊澤他 2016)。気圧値だけでなく、上陸時両側の観測点の風向変化が逆になる力学的特徴も考慮した。<br>日本の気象台は1872年に函館ではじまり、全国に展開し、1907年には100地点を超えた。ただ、19世紀は地点数が少なく、地域的な均質性に問題があった。一方で、日本には1869年以降灯台が建設され、気象観測も行われるようになった(財城他 2018)。1880年には全国で35か所の灯台で気象観測が行われ、1877-1886年の灯台の気象データが収集できており、台風データの復元に利用した。<br><br><b>3. 結果</b><br>図に日本に上陸した1881-2018年の年間台風数を示す。年間平均3個上陸し、1950年は10個、2004年は9個上陸した。1970年代から2000年代は上陸数が少なく、上陸数なしの年も見られた。それに対して、1880年代から1960年代は上陸数が多い傾向が見られ、19世紀においても毎年2個以上の台風が上陸した。19世紀の台風データの復元には1883年から気象庁の前身の天気図が、1884年から台風経路データが利用できたが、それ以前は利用できる気象資料が少ない。最近、江戸時代末期からの外国船が気象測器を搭載しながら日本近海を往来した資料が見つかっている。より長期の台風データの復元には、外国船の航海日誌に記録された気象データの活用が期待される。
著者
浜田 崇 三上 岳彦
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.518-529, 1994
被引用文献数
31

東京の明治神宮・代々木公園とその周辺市街地における気温の長時間観測に基づいて,大都市内の緑地がもつクールアイランド(低温域)現象について検討・考察を行なった.その際緑地内の気温から市街地平均気温を減じた値:をクールアイランド強度 (CII: Cool Island Intensity) と呼ぶことにした.緑地のクールアイランド強度が高まる時間帯は,植栽によって特徴づけられることがCIIの日変化から明らかとなった.クールアイランド強度は,芝生地の場合,日中は小さく,夜間は大きい.樹林内の場合は,日中および夜間ともに大きい.その成因としては,夜間は芝生および樹木面からの放射冷却による効果が大きいと考えられる.また,クールアイランド強度は,天候(晴天および曇天)によってほとんど変化しない.<br> 緑地のクールアイランド現象の観測事例として,緑地内外の気温断面図と緑地内の気温鉛直分布図を示した.緑地内外の地上気温断面図から,緑地周辺の市街地の気温は緑地内の低温な空気の流出によって低下していることがわかる.また,緑地内の気温鉛直分布から,夜闇に都市(市街地)では接地逆転が起こらないのに対し,緑地内では放射冷却による接地逆転が起こると考えられ,その高度は最高60mに達することが明らかになった.