著者
松本 隆之 北川 貴士 木村 伸吾 仙波 靖子 岡本 浩明 庄野 宏 奥原 誠 榊 純一郎 近藤 忍 太田 格 前田 訓次 新田 朗 溝口 雅彦
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-49, 2013-07-15

メバチThunnus obesusおよびキハダThunnus albacaresは三大洋の熱帯域を中心に温帯域にかけて広く分布し,日本をはじめとする各国により漁獲され,マグロ属魚類の中でもっとも多獲さる重要種である。大型魚,特にメバチは主としてはえなわ漁業で,小型魚はまき網,竿釣り等の漁業で漁獲される。日本沿岸においては,小型の竿釣り,曳縄等の漁業でも漁獲されており,それらの漁業にとっても重要な魚種である。しかしながら,これら2種については資源の減少もしくは低水準での推移が見られ,その動向には注視する必要があり,また,資源学的研究の強化,およびより精度の高い資源評価が望まれる。そのためには,移動,遊泳行動等の生物学的パラメーターのより詳細な解明も必要である。
著者
北川 貴士
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

東部太平洋で漁獲されたクロマグロの腹腔内にアーカイバルタグを装着し、2002から2004年の7-8月に合計300個体を放流し、これまでに再捕・回収された90個体のタグに記録された水温、遊泳深度、腹腔内温度の時系列データを解析した。クロマグロは表層混合層内で夜間は表層,昼間は摂餌のためより深い水深を遊泳しており,照度の昼夜変化に応じて,遊泳深度を日周期的に変化させていた。一方,水温躍層の発達する夏季は,躍層付近での急激な水温変化を避けて一日の大半を表層で過ごし,昼間は照度のなくなる水深まで5分程度の短時間の潜行を繰り返すようになった。夜間,クロマグロの平均遊泳深度と月齢とに有意な相関が認められた。しかし,摂餌はほとんど行なわれなかったことから,月の照度によって遊泳深度を変化させる行動は,捕食者から身を隠すためのものと推察された。またクロマグロは日出時と日没時にも必ず潜行を行ったが,摂餌は見られなかった。彼らの視細胞の明・暗反応の切り替えには多少時間がかかるため,急激な照度変化にさらされると,彼らは一種の盲目状態に陥ることが報告されている。よってこの鉛直移動は,朝夕の照度変化を避け,一定の照度環境を保つための補償行動ではないかと思われる。以上のようにクロマグロは時間的・空間的な照度変化を巧みに利用して,"食うこと"と"食われないこと"を満たしていると考えられた。東部太平洋の鉛直構造や餌分布様式ならびにバイオマスと本種の遊泳行動との関係や生息環境が本種の体温生理に与える影響を調べるため、平成17年3月から9月までアメリカ、スタンフォード大・ホプキンス臨海実験所、バーバラ・ブロック博士の研究室に滞在し、逐次再捕され回収に成功した遊泳水深、環境水温、体温などの時系列データの解析も行った。
著者
木村 伸吾 北川 貴士 銭本 慧 板倉 光 宮崎 幸恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ニホンウナギの回遊生態と生息環境の解明を目的として、産卵域が位置する北赤道海流域および代表的な生息水域である利根川水系での調査を中心に研究を実施したものである。その結果、レプトセファルス幼生は表層で懸濁態有機物を摂餌し、同じ形態を有していても種によって摂餌する水深が異なっていること、幼生の輸送過程は大西洋と大きく異なること、成魚は餌生物が多様な自然堤防域を好んで生息することなどを明らかにした。