- 著者
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鈴木 博志
宮崎 幸恵
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.1, pp.53-62, 1995
以上の結果は, 次のように要約される.<BR>(1) 単身世帯の男女とも, 年齢層が高くなると住宅水準の高い [マンション] や [鉄賃アパート] への住み替えが進むが, その一方で [木賃アパート] の「沈殿層」が一定程度析出されている.この「沈殿層」は, 「50歳以上」の女性に多いとみられる.若年層から高年層まで, 女性は男性より水準の高い [マンション], [鉄賃アパート] の居住が多い.いずれの住宅型でも女性の平均収入は男性より低いが, 逆に畳数水準は高く, 女性の住宅への関心の高さが伺われる.また, 長期居住による住居費の低廉化は, 高年層の女性に多く寄与している.<BR>(2) 単身世帯の現住宅に対する不満度は, 総合評価で44%と高い.各評価項目別の不満度についても同様に高いが, とくに住宅の居住空間より設備・性能に関する項目の不満度が高い.全体に女性の不満度は男性より低いが, これは現住宅の居住水準が高いことの反映でもある.住宅の評価を具体的な客観的指標 (規模, 日照, 設備水準) と照合してみると, 住宅水準が低下すると不満度が高くなる傾向が読み取れる.他方, 単身世帯の住環境に対する不満度は, 総合評価で27%と低い.各評価項目別では, 中央線沿線の立地, イメージの良さから男女とも立地の利便性や地域イメージに関する項目の不満度は低い. しかし, 居住地の安全性やアメニティに関する項目の評価では, 不満度が高く表れている.<BR>(3) 単身世帯の現住宅選択理由は, 「通勤・通学の利便性」が圧倒的に多い.二義的選択理由として, 男性は「価格・家賃が適当」の経済重視が多いが, 女性は「買物などに便利」とする日常生活の利便性を重視する傾向に分かれる.今後の住宅選択の重視項目では, 全体に「通勤・通学の便利さ」の利便性以上に, 「家賃・価格の安さ」の経済性を重視する傾向にある. [~29歳], [30歳代] では, 男女とも「通勤・通学の利便性」, 「家賃・価格の安さ」が重視されるが, [40歳代] では, 「日常生活の便利さ」, 「住宅の広さ」の比重が高くなる.高年層になると, 男性は「家賃・価格の安さ」の経済性が依然として多いが, 女性は「日常生活の便利さ」, 「住宅の設備・性能」など日常生活のしやすさを重視する傾向が強くなる.<BR>(4) 単身世帯の定住希望は, 全体で61%を占める.性別では女性の方が高い.定住希望の高い年齢層は, 男性では若年層だけであるが, 女性では若年層と高年層の両極で高い.<BR>(5) 単身世帯の住宅関連設備の要求では, 男女とも「専用の風呂」や「専用のトイレ」と最も基本的な要求であり, 「独立のキッチン」や「エアコン (冷暖房用) 」は, それにつぐ高い要求とされる。女性は, とくに住宅の安全性や生活の便利さに配慮した要求内容が多い.また, 男女とも年齢が高い層に「エレベーター装置」, 「住棟内トランクルーム」, 「衣類乾燥機付浴室」の要求がやや多い.単身世帯の住宅関連サービスの要求については, 「ゴミ処理サービス」や「セクレタリーサービス」が最も多い.「セキュリティサービス」など住宅の安全性は, 女性では若年層から高年層まで共通して多い.男女とも「ケアサービス」は, その必要性の認識が高くなる高年層に多い.