- 著者
-
大竹 二雄
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1996
1993年12月27日に,種子島海岸で採集されたシラスウナギの5個体の耳石について,SIMS(二次イオン質量分析法)を用いた酸素同位体比(^<18>O/^<16>O)の微小局所領域測定を試みた。測定にはCAMECA社製IMS-6f型(東京大学理学系大学院地球惑星物理学研究室所属)を用いた。分析条件はPrimary beam:CS+,10kV,Primary beam size:〜25μmφ,Primary beam intensity:〜8x10-11A,Secondary HV:-9.5kV(Normal-incidence Electron Gun(-9.5kV)を用いる),測定時間:-10min/analysisとし,試料には金蒸着を施した。また標準試料としてCaCO_3 stdを用いた。耳石は研磨して中心面を表出させ,1μmダイヤモンドペーストを用いて鏡面を作成し分析試料とした。2個体の耳石について分析値の再現性を検討し,3個体については中心から縁辺に至る耳石中心面状の3〜4点について分析し,生息水温が既知の部位の分析値と生息水温を対応させることにより水温-酸素同位体比の関係を求め,耳石中心の水温(産卵水温)の推定を試みた。標準試料を用いた分析における再現性は,連続分析においては2∂が±1.5‰の範囲に収まり,非常に良好であった。耳石試料では,±4‰であったが技術的に再現性を向上させることは十分可能であると考えられた。本年度の分析値は測定精度の点から不十分な結果しか得られず,水温-酸素同位体比の関係を具体的に求めることはできなかった。しかし耳石中心と縁辺部の酸素同位体比の差は極めて小さいことが分かった。縁辺部にあたる水温は約20℃であったことから産卵水温もこれに近いものと推測される。今後,さらに測定法の検討を行い精度の高い分析を行う必要がある。