著者
大久保 史佳 小笠原 太一 竹林 佐那 野㟢 祐未 吉川 幸雄 難波 美帆
出版者
学校法人 グロービス経営大学院大学
雑誌
グロービス経営大学院紀要 (ISSN:27584046)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.99-106, 2023-11-30 (Released:2023-12-05)

日本の国立公園では,法的に管理運営を強制することができない中,数多く存在する「ステークホルダー(所有者,事業者,関係当局,地域等)間の合意形成の難しさ」が共通の課題としてある.本研究では,自然を保全しながら国立公園の管理運営がうまくいっている尾瀬国立公園と複数の国立公園を比較し,ステークホルダーの合意形成の難しさという課題をいかに解決することができるかを明らかにしようとした. 尾瀬国立公園は,福島県,栃木県,群馬県及び新潟県の4県にまたがり,本州最大の高層湿原である尾瀬ヶ原(約760ha)を始めとした大小の湿地群(池塘)であり,日本の国立公園全34公園中19番目の広さを誇る. 調査の結果,尾瀬国立公園では,植生回復事業による湿原面積の回復や湿原保護のための木道敷設など自然の保護と人々の観光利用の促進に,民間企業が多大な貢献をしていることが明らかになった.一方,国立公園ごとに地域性や歴史といった特性の違いがあり,それによって生じる課題やステークホルダーの積極的な関わりに向けての動機付けの方法なども多種多様であるので,国立公園毎に適した体制づくりや運営方法が存在すると考えられる.
著者
梶原 太一
出版者
日本会計教育学会
雑誌
会計教育研究 (ISSN:21885575)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11_7-11_16, 2023-06-01 (Released:2023-07-12)
参考文献数
8

本稿は,遠隔授業時代の大学会計教育の担当者がどのような課題や変化に直面しているのかを解明するために,質問票調査を実施し,回答結果に見られる傾向を考察する。特に,会計教育の内容・方法・目標の変化,遠隔授業への対応と評価,遠隔授業と学習者中心の教育パラダイムの関係等を検証する。会計教育の内容・方法・目標に関する先行調査との比較では,遠隔以前と同様の傾向が観察され,遠隔授業時代にあっても不変の会計教育の本質の一端が示された。教授法の違いに注目すると,学習者同士の協調的な学習を志向する場合ほど,教員の感じる遠隔授業のつらさが高まり,対面授業を希求する兆候が示された。遠隔の弱点には,学生間や教員との交流の制限,教員による学生の反応や理解度の把握の困難,とする回答が多く寄せられた。遠隔でのフィードバック機能を兼ね備えた新しいテクノロジー等でこの弱みを克服できれば,遠隔授業の可能性は拡大する。
著者
笠原 太一 福田 信二 木村 匡臣 浅田 洋平 乃田 啓吾
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.G-0268, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
32

島嶼地域での水資源開発のために建設された河川横断構造物等は,河道内の物理環境を改変し,生態系に影響を及ぼすことから,総合的な環境評価が求められる.本研究では,石垣島宮良川流域における網羅的な魚類生息環境調査によって物理環境と魚類相の流程分布を明らかにし,河川横断構造物の影響について検討した.結果として,宮良川全域で29科72種確認され,純淡水魚が7種,通し回遊魚が17種,周縁性淡水魚が37種および海産種が11種観察された.また,水域区分ごとに水温や水深などの物理環境条件が有意に異なっており,魚類相にも差異がみられた.本調査結果から,石垣島宮良川において河川横断構造物は,湛水部形成による物理環境の改変と感潮域境界部における魚類の移動阻害により魚類相の流程分布に影響を及ぼす可能性が示唆された.
著者
漆原 康子 原 太一 山田 哲史 藤永 周一郎
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.155-160, 2016 (Released:2016-11-15)
参考文献数
11

小児のステロイド依存性微小変化型ネフローゼ症候群(SDNS)において,シクロスポリン(CsA)は非常に有効な免疫抑制薬であり,1 日2 回の食前内服が推奨されている。今回,SDNS 患児においてシクロスポリン1 日1回投与法による初回治療(以下1 回法,目標内服2 時間濃度600~800 ng/ml)を試みた23 例について有効性と安全性について,後方視的に検討を行った。1 回法はSDNS からの脱却率が65%,2 年間の無再発率は34.8%であった。さらに,1 回法におけるCsA 投与量は平均2.6 mg/kg であり,通常の2 回法より明らかに減量することが可能であった。しかし,1 回法も1 例(8.3%)に間質線維化を認めたため,2 回法と同様プロトコール腎生検は必要であると考えられた。SDNS 患児に対して,1回法はアドヒアランスの向上とCsA 投与量の削減が可能な有効な治療と思われた。