著者
原田 幹生 宇野 智洋 佐々木 淳也 村 成幸 高木 理彰
出版者
一般社団法人 日本整形外科スポーツ医学会
雑誌
日本整形外科スポーツ医学会雑誌 (ISSN:13408577)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.22-26, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
9

小中学野球選手の睡眠を調べ,肩肘痛や投球パフォーマンスとの関係を検討した.野球肘検診に参加した小中学野球選手80名を対象として,アンケートを用いて,投球時の肩肘痛,投球パフォーマンス(KJOCスコア),および睡眠を調べた.肩肘痛を41名(51%)に認め,KJOCスコアは平均91点(38~100)であった.肩肘痛は,睡眠の質がとても良い選手(29%)に比べ,それ以外の選手(63%)で有意に多かった(p<0.05).睡眠において,就眠中の寒さ暑さ,睡眠時間が7時間以内,眠気による授業の支障,および起床時のすっきり感がKJOCスコアの低下と関連していた(いずれもp<0.05).適切な睡眠により,肩肘痛の予防や投球パフォーマンス低下の予防に繋がる可能性がある.
著者
佐藤 力 高原 政利 宇野 智洋 三田地 亮 原田 幹生
出版者
一般社団法人 日本整形外科スポーツ医学会
雑誌
日本整形外科スポーツ医学会雑誌 (ISSN:13408577)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.7-11, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
8

上腕骨内側上顆裂離(裂離)のある野球選手44例(平均年齢11歳)の保存治療成績を調査した.全身コンディショニングを行い,投球休止は平均55日であった.経過観察期間は平均8ヵ月(最低3ヵ月)であった.肘痛の再発は14例であった.骨癒合は40例に得られ,そのうち29例では骨癒合後に裂離の再発はなく,11例で骨癒合後に裂離の再発がみられた.裂離が再発した11例のうち,9例では再癒合したが,2例では再癒合はなかった.4例は経過中に骨癒合は得られなかった.最終観察時に未癒合だった群では初診時年齢が有意に低かった.骨癒合前に投球を開始した群では再発や未癒合が有意に多かった.低年齢選手や骨癒合前の投球には注意を要する.
著者
原田 幹生 高原 政利 村 成幸 丸山 真博 大石 隆太 宇野 智洋 佐竹 寛史 結城 一声 鶴田 大作 高木 理彰
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.564-568, 2017

Lateral Scapular Slide Test(以下LSST)は,肩甲骨の位置を評価し,肩甲骨下角とその高さの脊柱との距離で示される.本研究の目的は,成長期の野球選手において,LSSTと関連する因子について検討することである.野球選手382名を対象とした(小学:185名,中学:133名,高校:64名).小中高の順序で,肩痛あり(26,29,44%),投球パフォーマンススコア(最悪0-100%最高)(80,79,70%)であった.LSSTは,小中高の順序で,投球側(7.8,8.5,9.5 cm),非投球側(7.8,8.4,9.3 cm),左右差(投球側と非投球側の差)(0.0,0.1,0.2 cm)であり,左右差が1 cm以上ある選手は(10,16,25%)であった.僧帽筋下部の筋力低下は,小中高の順序で,(23,58,45%)であった.LSST(左右差)は,中学生では関連する因子はなかったが,小学生では,投手,肩痛あり,および低い投球パフォーマンスと関連し,高校生では,投手と関連していた.LSST(左右差)は,小中高いずれにおいても,僧帽筋下部筋力と関連はなかった.
著者
宇野 智洋 高原 政利 原田 幹生 丸山 真博 高木 理彰
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.254-259, 2017

<p> 背景:本研究の目的は,野球選手における肘内側側副靱帯損傷(以下,MCL)の保存療法成績と,保存療法に反応しない危険因子を調査することである.</p><p> 対象と方法:肘MCL損傷を有する68名の野球選手を後ろ向き調査した.平均年齢は16.8歳(12~24歳)であった.診断基準は,肘内側痛,MCL直上の圧痛,moving valgus stress test陽性,以上3項目を満たすもので骨端線閉鎖前の内側上顆裂離を除外した.保存療法の平均観察期間は4.4か月(1~15か月)であった.3か月以内の野球への復帰状況を調査した.</p><p> 結果:3か月以内の完全復帰は23名(34%),不完全復帰は21名(31%),復帰不能は21名(31%),および不明は3名(4%)であった.</p><p> 結論:保存療法に反応しない危険因子は,初診時に高年齢,主観的評価の肘痛,KJOCスコアが不良,外反ストレスX線で不安定あり,MRIで靱帯高信号が50%以上,および肩甲上腕関節の柔軟性不良であった.</p>
著者
原田 幹生 高木 理彰 村 成幸 丸山 真博 宇野 智洋 佐竹 寛史 鶴田 大作 結城 一声 大石 隆太 高原 政利
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.548-551, 2018

関節内インピンジメント(インピンジ)は,投球動作の肩外旋時に,腱板と後上方関節唇が接触し,肩痛を生じる病態である.本研究の目的は,中学野球選手に生じるインピンジの頻度を調べ,後方タイトネス(タイトネス)とインピンジの関係を検討することである.中学野球選手154名を対象とした.投球側の肩痛(なし0点-最悪40点)の平均点は8.0点(1~36)であった.タイトネスは59名(38%)であった.fulcrumテストとrelocationテスト陽性をインピンジとすると,12名(8%)に認められた.平均の肩痛は,いずれもなし(n=87):2.3点,タイトネス単独(n=55):3.6点,インピンジ単独(n=8):9.1点,両者の合併(n=4):26.0点であり,タイトネスとインピンジの合併は,他の3群に比べ,有意に高かった(p<0.05).インピンジにタイトネスが合併すると,肩痛が有意に強くなっていた.タイトネスのため,インピンジによって加わる腱板への圧力がさらに増大し,肩痛が強くなったと推測された.
著者
清木 宏徳 森下 元賀 弘中 一誠 上田 亮輔 原田 幹彦
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.301-309, 2017-08-01 (Released:2017-07-12)
参考文献数
24

The purpose of this study was to clarify the effects of external and internal factors (EF and IF, respectively) on attention during exercise on a cross test in elderly inpatients with respect to physical and attention functions. The subjects were 27 elderly inpatients with orthopedic diseases, cerebrovascular diseases, or disuse syndrome (mean age, 77.8±8.8 years). They were randomly divided into two groups, and instructed to pay attention in different directions for a cross test. Measurement was conducted in a pretest, during a 14-day period of practice, during a 7-day period of discontinuation, and in a post-test. In the EF group, the subjects were instructed to place their body weight on the floor while paying attention to the floor. In the IF group, they were instructed to tilt their whole body while paying attention to the body. The physical function was evaluated using the Berg Balance Scale and Timed Up and Go Test, attention using the Trail Making Test Part-A. In the EF and IF groups, the physical and attention functions were lower than the reference ranges, and a cross test showed a significant improvement in the EF group both 7 days and post-test. On the other hand, there were no correlations between the improvement rating for the cross test in pre- and post-tests in the EF and IF groups and physical and attention functions. These results suggest that the use of EF improves the cross test in patients with mild physical, attention hypofunction, promoting exercise learning.
著者
原田 幹
出版者
日本考古学協会 = Japanese Archaeological Association
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-16, 2015-05

本研究は、実験使用痕研究に基づいた分析により、良渚文化の石器の機能を推定し、農耕技術の実態を明らかにしようとする一連の研究のひとつである。 長江下流域の新石器時代後期良渚文化の「石犂」と呼ばれる石器は、その形態から耕起具の犂としての機能・用途が想定されてきた。本稿では、金属顕微鏡を用いた高倍率観察によって、微小光沢面、線状痕などの使用痕を観察し、石器の使用部位、着柄・装着方法、操作方法、作業対象物を推定した。分析の結果、①草本植物に関係する微小光沢面を主とすること、②先端部を中心に土による光沢面に類似する荒れた光沢面がみられること、③刃が付けられた面(a面)では刃部だけでなく主面全体に植物による光沢面が分布するのに対し、④平坦な面(b面)では刃縁の狭い範囲に分布が限定されること、⑤刃部の線状痕は刃縁と平行する、といった特徴が認められた。 石器は平坦な面(b面)が器具に接する構造で、先端部の方向に石器を動かし、左右の刃部を用いて対象を切断する使用法が考えられた。使用痕の一部には土との接触が想定される光沢面がみられるが、その分布は限定的であり、直接土を対象とした耕起具ではなく、草本植物の切断に用いられた石器だと考えられる。 前稿で検討した「破土器」と同じように、石犂の使用痕も草本植物との関係が想定され、従来の耕起具とは異なる解釈が必要である。この点について、農学的な視点からのアプローチとして、東南アジア島嶼部の低湿平野で行われている無耕起農耕にみられる除草作業に着目し、破土器、石犂は、草本植物を根元で刈り取り、低湿地を切り開くための農具であったとする仮説を提示した。 実験的な検討など課題は多いが、本分析の成果は、従来の良渚文化における稲作農耕技術に関する理解を大きく変える可能性がある。