著者
花田 匡利 及川 真人 名倉 弘樹 竹内 里奈 石松 祐二 城戸 貴志 石本 裕士 坂本 憲穂 迎 寛 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.93-98, 2022-12-26 (Released:2022-12-26)
参考文献数
20

近年,間質性肺疾患に対する呼吸リハビリテーションに関する報告が集積され,診療ガイドラインにおいても弱いながら推奨されるレベルに位置付けられている.しかし,不均質な病態かつ,難治性疾患という本疾患の基本的特徴は呼吸リハビリテーションに様々な影響を及ぼし,COPDを対象として確立されたエビデンスの高いプログラムを適用できないことも少なくない.そのため今後,従来の呼吸リハビリテーションとは異なる疾患特異的な方法論の確立,さらには維持プログラムのあり方が重要な課題となる.
著者
瀬川 凌介 及川 真人 花田 匡利 名倉 弘樹 新貝 和也 佐藤 俊太朗 澤井 照光 永安 武 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.110-116, 2022-12-26 (Released:2022-12-26)
参考文献数
19

【目的】肺癌の外科治療では,術後に遷延する呼吸不全によって酸素療法の継続を余儀なくされる患者も存在する.本研究は,退院時に酸素療法を必要とした患者の割合と,その臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】本研究は単施設の後方視観察研究であり,2009年から2018年に長崎大学病院にて肺切除術を施行された肺癌患者を対象とした.診療録より,対象者背景,術前の呼吸機能および身体機能,手術関連項目,術後経過,退(転)院時転帰を調査した.【結果】解析対象者は1,256件で,そのうち46件(3.7%)が酸素療法継続となった.酸素療法継続に対して重要度が高い評価項目を推定するランダムフォレスト解析において,術前の肺拡散能や6分間歩行試験中の酸素飽和度低下が抽出された.【結語】肺切除術後患者において,術前の肺拡散能や6分間歩行試験中の酸素飽和度低下は,術後の酸素療法の必要性を予測する指標となる可能性が示唆された.
著者
及川 真人 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.183-186, 2015 (Released:2015-06-24)
参考文献数
13
被引用文献数
8

〔目的〕歩行パフォーマンスと生活空間の関係を明らかにすることとした.〔対象〕脳血管障害により片麻痺を呈し,当院外来に通院している138名とした.〔方法〕歩行パフォーマンス評価には10m歩行時間を生活空間評価にはLife-space Assessment(以下LSA)を用いた.両変数の相関を分析し,単回帰式を算出した.また,より適合する曲線回帰を検討した.〔結果〕LSAと10m歩行時間はr=-0.576と負の相関を示した.また,直線回帰に比べ,逆数回帰がr=-0.768とより適合した.〔結語〕10m歩行時間から生活空間を把握し,生活アドバイスを行うことは生活期リハにおいて有効であると考える.
著者
及川 真人 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.843-846, 2015 (Released:2016-01-09)
参考文献数
14
被引用文献数
4 2

〔目的〕地域在住脳卒中片麻痺者の屋外活動可否を決定する要因を明らかにすることとした.〔対象〕発症後180日以上経過し,当院に通院している60歳以上の脳卒中片麻痺者65名とした.〔方法〕Life-space Assessment(LSA)から最大自立活動範囲が寝室・屋内の者を屋内活動群,それ以上の者を屋外活動群の2群に分類し,10 m歩行時間(10 m歩行),6分間歩行(6MD),30秒立ち上がりテスト(CS-30)の群間比較を行った.また,有意差が認められた変数について,カットオフ値を算出した.〔結果〕10 m歩行,6MD,CS-30について有意差が認められた.それぞれのカットオフ値は10 m歩行が22.9秒,6MDが112 m,CS-30が5.5回であった.〔結語〕10 m歩行,6MD,CS-30から屋外活動の可否が検討できることが示唆された.
著者
及川 真人 加藤 勝利 松原 徹 山中 誠一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb0598, 2012

【はじめに/目的】 回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ)は急性期から早期の転院を受け入れ、高頻度のリハビリテーション(以下、リハ)を提供し、廃用症候群の予防、日常生活活動(以下、ADL)向上、早期在宅復帰を目指している。また、在宅復帰後の継続的なリハを提供する場として訪問リハや外来リハ、通所リハ等が存在する。当院回復期リハ病棟は、365日リハ・1日9単位のリハを提供しており、結果として早期退院が実現する事が多く、発症から180日未満で外来リハを開始する方が殆どである。従って、発症から間もないこともあり、能力改善の余地を残して外来リハを開始するケースが多い。また、診療報酬における算定日数上限180日以降も、カンファレンスにおいて医学的判断に基づいた改善見込みについて検討し、外来リハを継続している。病院退院後の片麻痺者の身体機能については古くから研究が行われている。20年前においては機能維持、予後予測の観点から研究が行われている。現在では在宅におけるリハ効果について報告が多く、それらの研究は、FIM等を用い、ADLの経過を追ったものが多く、歩行パフォーマンスの経過を追っているものは少ない。上記のように、今日の医療保険制度を考えると、定量評価によるパフォーマンンスの改善を示す事と、経時的なデータを追う事は、外来リハを継続する上で重要であると考える。そこで今回我々は、10m歩行所要時間(以下、10mtime)を指標とし、当院回復期リハ病棟を退院した脳卒中片麻痺者の歩行能力の変化を追う事とした。【方法】 対象は、脳血管障害(脳梗塞もしくは脳出血)により片麻痺を呈し、かつ2008年1月から2011年1月までに当院回復期病棟に入院し、退院後に当院外来にてリハビリテーションを開始した109名(男性84名,女性25名 年齢61.2±12.9歳)とした。なおデータを採用するにあたり、カルテ上に10mtimeが記載されていなかった者、介助にて10m歩行評価を実施した者、研究期間中に他院へ入院した者は除外した。10mtimeは3カ月毎の定期カンファレンスで報告されている値で、外来開始、3ヶ月後(以下、3M)、6ヶ月後(以下6M)、9カ月後(以下、9M)の値とした。測定方法は当院PT部門で定められており、10m区間前後に約3mの予備区間を設け、ストップウォッチにて最大歩行速度における所要時間を計測した。計測した外来開始、3M、6M、9Mの10mtimeについて反復測定分散分析を行った。また、反復測定分散分析で主効果が有意であった場合、TukeyのHSD検定を用いた。なお、有意水準は5%未満とした。統計解析はSPSS12.0J(SPSS Japan)を用いた。【説明と同意】 本研究は、所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 外来開始の10mtimeは14.5±11.2秒、3Mは12.7±9.2秒、6Mは12.3±9.4秒、9Mは11.9±9.4秒であり、反復測定分散分析の結果、有意な差が認められた(p<0.05)。また、多重比較検定の結果、外来開始と3M、6M、9M各期の10mtimeに有意差を認め(p<0.05)、3Mと9Mの10mtimeに有意差を認めた(p<0.05)。【考察】 片麻痺者に対する外来リハの目的の一つとして、病棟退院後の在宅生活の安定が挙げられる。一方で利用者からは更なる機能・能力向上の希望が挙げられ、とりわけ歩行能力向上に対するニーズが聞かれる事が多い。今回の外来開始から3Mの10mtime改善を考えると、外来リハ初期においては積極的に機能・能力回復に対してアプローチする価値があると考える。また、その後の10mtime改善の経過に関しては、はじめの3Mと比較すると緩やかになっているものの、継続した改善がみられた。回復期リハ病棟からの早期退院を考えると、外来開始初期は算定日数上限内に収まるものの、数カ月すると算定日数を超える利用者が殆どである。算定日数上限以降も、医師が改善の見込みがあると判断した場合、リハを継続することが可能である。よって今回の継続的な10mtimeの改善は、維持期リハを継続する為の医学的判断の一助になると考える。今後、さらに調査期間を延長し、歩行パフォーマンスの改善に対する調査を継続して行っていきたい。【理学療法学研究としての意義】 今回、外来通院している片麻痺者の10mtimeの継続的な改善がみられた。外来初期は能力改善の余地が大きく、積極的なリハが望まれる。また、算定日数上限以降の継続的なパフォーマンス改善は、外来リハを継続する為に必要な医学的判断の一助になると考える。