- 著者
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古久保 拓
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学療法学会
- 雑誌
- 日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.4, pp.462-466, 2008-07-10 (Released:2011-08-04)
- 参考文献数
- 9
ニューキノロン系合成抗菌薬のpazufloxacin mesilate (PZFX) の腎不全患者における体内動態に関する検討は十分でない。今回, のう胞腎感染症と診断された4名 (年齢65.3±9.7歳, 体重49.0±4.1kg, 男1名) の血液透析 (HD) 患者を対象として, PZFX 300mgを週3回HD後に投与し, 体内動態を評価した。初回投与時のPZFXのCmaxは10.47±2.19μg/mL, AUC(0-∞)は421±175μg・h/mLであり, 腎機能正常者に比べ消失の著しい遅延が認められた。一方で, 3回目投与時の投与終了2時間後の血漿濃度は11.12±2.30μg/mLであり, この値は健常成人に常用量を反復投与した成績と同レベルであり, 消失の遅延から予測される程度には上昇していなかった。HD除去率は4時間のHDによりみかけ上58.7±7.7%であったが, HD終了1時間後までに認められた平均13.5%のリバウンド現象を考慮すると45.2±5.9%と算出された。全例において治療期間内に血漿濃度依存的な毒性は認めなかった。以上より, HD患者におけるPZFXの消失は腎機能正常患者に比べ大幅に遅延しているものの, HD除去性が高いために血漿濃度の蓄積性は小さいと考えられ, 毎HD後の投与が合理的であると考えられた。