著者
吉田 拓弥 古久保 拓 三宅 瑞穂 和泉 智 庄司 繁市 山川 智之
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.533-539, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
9

低酸素誘導因子―プロリン水酸化酵素阻害薬ロキサデュスタット(ROX)投与後に血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルが低下した血液透析(HD)患者の症例が報告されている.白鷺病院で維持HD を施行し,ROX を開始したHD 患者11 例(71±15 歳)を対象とし,血清TSH および遊離サイロキシン(FT4)レベル低下の頻度や程度について調査した.血清TSH レベルは,ROX 開始後11 例中9 例で低下し,3 例が基準値以下となった.血清FT4 レベルは,ROX 開始後11 例全例で基準値以下まで低下した.ROX 開始前後の血清TSH 変動と血清FT4 変動の間には強い正相関が認められた(ρ=0.838,p=0.001).影響が顕著だった1 例では,ROX 開始12 日後,血清TSH レベルは8.81 から1.04 μIU/mL,血清FT4 レベルは1.05 から0.38 ng/dL へ低下し,ROX 中止後に正常範囲まで改善した.ROX はHD 患者において高頻度で血清TSH レベルおよびFT4 レベルの低下を起こし,症例によってはその急速な発現や症状を伴う可能性に注意が必要であると思われた.
著者
小北 克也 山本 忠司 山川 智之
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.483-491, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
31
被引用文献数
1

酢酸を低濃度 (8~10mEq/L) 含有する重炭酸透析液における症候性低血圧症 (SH) と酢酸不耐症 (AI) を検討した. 外来透析患者391名を対象に, 透析中のSHとAIの頻度, 血漿酢酸濃度, 酢酸負荷速度および酢酸クリアランスを測定し, SHに関連する因子を解析した. SHは何らかの処置を要する低血圧症, AIはSHがあり血漿酢酸濃度≧2mmol/Lの症例とした. SHは391名中71名 (18.2%), AIは1名 (0.3%) であった. SHに関係する因子は糖尿病 (オッズ比, 1.92 ; 95%CI, 1.09-3.38), 体重減少率 (オッズ比, 1.29 ; 95%CI, 1.07-1.55) であり, 血漿酢酸濃度と関連性はなかった. 血漿酢酸濃度は開始2時間から定常状態となり4時間値で1.062±0.348mmol/Lであった. 酢酸負荷速度は1.51±0.48mmol/hr/kgで透析患者の代謝能力以内の負荷率, 酢酸クリアランスは1.30±0.42L/minで健常者の57%程度であった. 現行の低濃度酢酸含有透析液ではAIは解決されていると考えられた. 今後, 酢酸の影響についてはAIの定義を含めて再検討されるべきと考える.
著者
山川 智之
出版者
一般社団法人 日本在宅血液透析学会
雑誌
日本在宅血液透析学会誌 (ISSN:24352519)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.5-10, 2023-04-20 (Released:2023-04-20)
参考文献数
4

2010年に作成した「在宅血液透析管理マニュアル」は,在宅血液透析(HHD)患者の増加,多様化に伴い実態にそぐわない部分が出てきた.また高齢者住宅で患者教育を行わず医師不在で透析を行いHHDとして診療報酬を請求する(いわゆる非自己管理型HHD)事例が問題となった.そこで日本透析医会はHHDを施行されている医療者の意見を参考にしながら改定作業を行った.基本的には在宅血液透析の安全性を重視することを大前提とする一方,安全性や治療の合理性を損ねる恐れのある制約は減らすこととした.介助者の必要性については論点となったが,今回は安全性の観点から介助者は必要という結論となった.また非自己管理型HHDについては,改訂版では本マニュアルでは扱わないと明記し実質的にHHDとしての請求を禁止した.今後も医療技術の進歩も踏まえ関係者と議論を継続しながら, 必要があれば再度のマニュアル改訂も考慮したい.
著者
羽田 晋也 柳澤 博志 徳弘 宙士 増井 健二 桂 大輔 駒野 倫久 藤井 崇典 安井 一敏 坂口 史絋 髙濵 宏 町田 恒一 岩間 誠司 山川 智之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】バリアフリー展は,高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展として西日本最大規模を誇る展示会であり,近年の来場者数は開催3日間で9万人を超えている。(公社)大阪府理学療法士会は,理学療法の啓発を目的として,平成23年度よりリハビリテーション相談のブース出展と理学療法士が実践で培った介護技術を伝達する研修会を開催している。過去4年間のブース来訪者および研修会参加者へのアンケートから若干の知見を得たので 検討を加え報告する。【活動報告】ブースでは4年間で442件の相談を受けた(アンケート回収率35.1%;155件)。相談内容は,リハビリテーションや介護に関する全般的なことから個別的な治療,自主練習,制度および仕組み等の多岐にわたるものであった。アンケートより,相談に対する説明が分かりやすく,役に立つ内容で95%を超える方に満足いただけた。研修会は4年間で1,183名の参加があった(アンケート回収率70.0%;828件)。参加者は,介護福祉士,ケアマネージャー,ヘルパー,看護師,理学療法士,作業療法士など医療・福祉・介護に携わる専門家が65%以上を占めていた。アンケートより,理学療法士が実践で培った介護技術は,分かりやすい内容で75%を超える方に満足いただけた。【考察】リハビリテーション相談は,高い満足度を得ることができたが,スタッフの目の前でアンケートを記入することが回収率低下をまねいた一因と考える。研修会は,医療・福祉・介護に携わる専門家の参加が多く,理学療法士が実践で培った介護技術が多職種から認知されていると同時に,高い次元の内容を求められていたことがブースに比べて満足度が低かったと推察する。【結論】今回の取り組みは,理学療法により府民の医療・福祉・介護および健康保持に寄与するものであり,重要な公益目的事業に位置づけられている。今後,このような公益性の高い事業が全国に広まることを期待する。