著者
竹内 裕紀 大野 能之 和泉 智 鎌田 直博 田中 章郎 長谷川 功 三宅 健文 奥田 真弘
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.160-167, 2016-03-10 (Released:2017-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

The dosage and administration of renally excreted drugs to patients with decreased renal function need to be optimized in accordance with their renal function. However, drug package inserts do not necessarily have sufficient information. Therefore, we identified and classified the issues regarding this lack of information and investigated the percentage of affected package inserts.We investigated 341 oral drugs in the Clinical Practice Guidebook of Chronic Kidney Disease 2012.1. The shortcomings in the description of urinary excretion parameters, which is needed for dose adjustment in accordance with renal function, are classified as follows: (1) unchanged drugs and metabolites are not indicated (28%, 95/341), (2) bioavailability for oral dosage is not taken into account (84%, 286/341), and (3) sufficient recovery time for urinary excretion is not acknowledged (3.5%, 12/341).2. With respect to the dosage regimen of renally excreted drugs, the following information was absent: (1) dosage and dosing interval in accordance with renal function are not described (63%, 70/111) and (2) considerations for dose reduction are not provided (32%, 36/111).3. A major shortcoming in the description of drug administration for anuric dialysis patient is that nephrotoxic drugs, such as, nonsteroidal anti-inflammatory drugs, are described as being contraindicated (100%, 11/11).We found that the current information in package inserts of several drugs is insufficient to understand the required dose adjustment or the correct method of administration to patients with decreased renal function. We aim to improve the information in drug package inserts to allow for effective and safe pharmacotherapy.
著者
吉田 拓弥 古久保 拓 三宅 瑞穂 和泉 智 庄司 繁市 山川 智之
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.533-539, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
9

低酸素誘導因子―プロリン水酸化酵素阻害薬ロキサデュスタット(ROX)投与後に血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルが低下した血液透析(HD)患者の症例が報告されている.白鷺病院で維持HD を施行し,ROX を開始したHD 患者11 例(71±15 歳)を対象とし,血清TSH および遊離サイロキシン(FT4)レベル低下の頻度や程度について調査した.血清TSH レベルは,ROX 開始後11 例中9 例で低下し,3 例が基準値以下となった.血清FT4 レベルは,ROX 開始後11 例全例で基準値以下まで低下した.ROX 開始前後の血清TSH 変動と血清FT4 変動の間には強い正相関が認められた(ρ=0.838,p=0.001).影響が顕著だった1 例では,ROX 開始12 日後,血清TSH レベルは8.81 から1.04 μIU/mL,血清FT4 レベルは1.05 から0.38 ng/dL へ低下し,ROX 中止後に正常範囲まで改善した.ROX はHD 患者において高頻度で血清TSH レベルおよびFT4 レベルの低下を起こし,症例によってはその急速な発現や症状を伴う可能性に注意が必要であると思われた.
著者
三宅 瑞穂 古久保 拓 吉田 拓弥 和泉 智 庄司 繁市
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.179-183, 2022 (Released:2022-08-13)
参考文献数
10

低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬であるロキサデュスタット投与中のみ血中甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低下し、ダプロデュスタット投与中は低下しなかった症例を経験した。90歳代女性、CKD G5の患者、過去に甲状腺機能異常の指摘はなかった。腎性貧血治療にダプロデュスタット、ダルベポエチンアルファ、ロキサデュスタットを順に使用した。ダプロデュスタット投与中はTSH 5.950 μIU/mL、遊離サイロキシン(FT4)0.77 ng/dLであった。HD導入時にダプロデュスタットからダルベポエチンアルファに変更し、投与中のTSH 2.830 μIU/mL、FT4 1.14 ng/dLであった。ヘモグロビン7.9~9.8 g/dLと低値で経過し、ダルベポエチンアルファからロキサデュスタットに変更した。ロキサデュスタット開始4日目頃より倦怠感、開始15日目に希死念慮、HD拒否の抑うつ症状が出現した。その症状と過去の報告より、ロキサデュスタット投与に関連した甲状腺機能低下症が疑われた。ロキサデュスタット開始16日目にTSH 0.051 μIU/mL、FT4 0.77 ng/dLとTSHの著明な低下を認めた。開始21日目にロキサデュスタットを中止した。中止7日目頃に倦怠感は軽減し、中止19日後にTSHは正常化した。ロキサデュスタットはトリヨードサイロニンと類似した化学構造を有し、視床下部と下垂体の甲状腺ホルモン受容体に作用し、TSH分泌を抑制させると考えられている。本症例は、TSH低下がHIF-PH阻害薬に共通の現象でない可能性を示している。ロキサデュスタット開始後は甲状腺関連検査を実施し、甲状腺機能異常に伴う症状をモニターすべきと考えられる。
著者
野嶋 素子 中山 裕子 小川 幸恵 保地 真紀子 和泉 智博
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0293, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】腰椎疾患においてL4/5とL5/S椎間は障害が多い部位である。L5神経根は前脛骨筋,中殿筋を優位に支配し,これまでに下垂足に伴い股関節外転筋力は低下し,歩行に影響することが報告されている。一方でS1神経根は下腿三頭筋,大殿筋を優位に支配しているが,S1神経根障害における臨床像と歩行能力の報告は少ない。本研究の目的はL5,S1神経根障害における筋力低下・感覚障害および歩行について調査することである。【方法】対象は2011.4~16.9に,L4/5またはL5/Sの単椎間ヘルニアで,内視鏡を含むヘルニア摘出術を施行したL4/5椎間板ヘルニア59名(以下L4/5群),男性43名,女性16名,平均46.9±14.4歳と,L5/S椎間板ヘルニア49名(L5/S群),男性31名,女性18名,平均40.0±11.7歳である。検討項目は,術前の前脛骨筋(以下TA),中殿筋(GME),ハムストリングス(HA),腓骨筋(PE),下腿三頭筋(TS),大殿筋(GMA)のMMT,感覚障害の有無とその部位,歩行速度,Timed Up and Go Test(以下TUG)であり,カルテより後ろ向きに調査した。またMMT3以下を筋力低下とし,L4/5群の筋力低下がある26名(以下L4/5-P群),男性19名,女性7名と,低下がない33名(L4/5-N群),男性24名,女性9名,L5/S群の筋力低下がある29名(L5/S-P群),男性18名,女性11名と低下がない20名(L5/S-N群),男性13名,女性7名に分類し,歩行に関する項目について比較した。統計解析はt検定を用い,有意水準は5%とした。【結果】L4/5群の筋力低下の割合は重複を含め,TA12名(20%),GME10名(17%),HA2名(3%),PE5名(8%),TS15名(25%),GMA5名(8%)であった。TAに筋力低下を認めた12名中5名(42%)にGMEの低下が見られ,4名は同時にTSが低下し,更に2名はGMAも低下していた。感覚障害はL5領域29名(49%),S1領域14名(24%)に,両領域12名(20%)に認めた。L5/S群の筋力低下は,TA6名(12%),GME9名(18%),HA7名(14%),PE3名(6%),TS22名(45%),GMA12名(24%)であり,TSに低下を認めた22名中12名(55%)にGMAの低下が見られ,そのうち3名はGMEに,更に2名はTAも低下していた。感覚障害はL5領域23名(47%),S1領域27名(55%),両領域17名(35%)に認めた。歩行速度はL4/5-P群1.4±0.4 m/s,L4/5-N群1.5±0.4m/s,TUGは10.6±2.9秒,9.7±2.6秒であり両群に差を認めず,L5/S-P群とL5/S-N群は,歩行速度が1.3±0.4m/s,1.5±0.4m/s,TUGは12.4±4.9秒,9.7±2.0秒であり,両群間に有意差を認めた。【結論】L4/5群ではTAの筋力低下に伴いGMEが低下,L5/S群もTSと同時にGMAが低下している症例が見られ,L4/5群では更にTS,L5/S群ではGMEの低下も一部認めた。感覚障害についても混在例が存在していた。これらは神経支配のオーバーラップによる障害の影響等が考えられるが明らかではない。L5/S-P群は,L5/S-N群に比べ歩行能力の低下を認めた。S1神経根障害による筋力低下は歩行障害を生じやすいため詳細な理学療法評価が重要である。