著者
古市 憲寿
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.53-62, 2012

本論文は、ノルウェーにおける戦後育児政策を検討するものである。1960年代までノルウェーは「主婦の国」 と呼ばれており、労働力不足であったはずの戦後復興期にも女性が労働力として注目されることはなかった。しかし1970年代以降、パブリック・セクターの拡大に伴い、母親を含めた女性の労働市場への進出が本格化、「主婦」というカテゴリーは失効していく。そこで前景化したのが 「子ども」である。近年は現金による育児手当など、「主婦」ではなく「子ども」の価値を強調することによって、男女の性差を前提とした政策が実施されている。それは、国家フェミニズム成立時の「母親」と「国家」の同盟が、ノルウェーにおいては男女の差異を前提として成立したためだと考えられる。
著者
古市 憲寿
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.376-390, 2012-12-31 (Released:2014-02-10)
参考文献数
46
被引用文献数
1 1

本稿は, 1990年代後半以降に政府や経済界から提出された「起業」や「起業家」像の検討を通して, 日本の社会秩序が「起業」や「起業家」をどう規定し, 受け入れてきたのかを分析するものである.バブル経済が崩壊し日本型経営が見直しを迫られる中で, 「起業家」は日本経済の救世主として政財界から希求されたものだった. しかし, 一連の起業を推奨する言説にはあるアイロニーがある. それは, 自由意志と自己責任を強調し, 一人ひとりが独立自尊の精神を持った起業家になれと勧めるにもかかわらず, それが語られるコンテクストは必ず「日本経済の再生」や「わが国の活性化」などという国家的なものであったという点である. 自分の利益を追求し, 自分で自分の成功を規定するような者は「起業家」と呼ばれず, 「起業家」とはあくまでも「日本経済に貢献」する「経済の起爆剤」でなければならないのである. さらに, 若年雇用問題が社会問題化すると, 起業には雇用創出の役割までが期待されるようになった.1999年の中小企業基本法の改正まで, 日本の中小企業政策は「二重構造」論の強い影響下, 中小企業の「近代化」や大企業との「格差是正」を目指すという社会政策的側面が強かった. その意味で, 起業家に自己責任と日本経済への貢献を同時に要求する理念は, 1990年代後半以降の時代特殊的なものと言える.
著者
古市 憲寿
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.376-390, 2012
被引用文献数
1

本稿は, 1990年代後半以降に政府や経済界から提出された「起業」や「起業家」像の検討を通して, 日本の社会秩序が「起業」や「起業家」をどう規定し, 受け入れてきたのかを分析するものである.<br>バブル経済が崩壊し日本型経営が見直しを迫られる中で, 「起業家」は日本経済の救世主として政財界から希求されたものだった. しかし, 一連の起業を推奨する言説にはあるアイロニーがある. それは, 自由意志と自己責任を強調し, 一人ひとりが独立自尊の精神を持った起業家になれと勧めるにもかかわらず, それが語られるコンテクストは必ず「日本経済の再生」や「わが国の活性化」などという国家的なものであったという点である. 自分の利益を追求し, 自分で自分の成功を規定するような者は「起業家」と呼ばれず, 「起業家」とはあくまでも「日本経済に貢献」する「経済の起爆剤」でなければならないのである. さらに, 若年雇用問題が社会問題化すると, 起業には雇用創出の役割までが期待されるようになった.<br>1999年の中小企業基本法の改正まで, 日本の中小企業政策は「二重構造」論の強い影響下, 中小企業の「近代化」や大企業との「格差是正」を目指すという社会政策的側面が強かった. その意味で, 起業家に自己責任と日本経済への貢献を同時に要求する理念は, 1990年代後半以降の時代特殊的なものと言える.
著者
古市 憲寿
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-11, 2019 (Released:2020-07-01)

本稿の目的は、ノルウェーと日本の育児政策の変遷を概観することで、その背後にある両国の「男女平等」を理解することである。ノルウェーと日本は共に「母親」の役割を強調しながら、女性に対する権利拡充が進んできた国であった。そのため公的保育サービスの普及は遅れたものの、ノルウェーでは1960 年代の福祉国家拡大による労働力不足、日本では1990 年代の少子化に対する危機から、育児の社会化が意識された。共通するのは、労働力不足や少子化という、「男女平等」とは直接的には関係のない外在的な社会変化によって、公的保育サービスの必要性が認識されたという点である。しかし、市場や家族にとってすぐ保育園を整備することが合理的である労働力不足と違い、少子化という直ちに社会に大きな影響を与えない問題から育児政策を充実しようとした日本では、高齢化対応が優先され、未だに待機児童問題さえ解決の目処が立っていない。
著者
古市 憲寿
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.53-62, 2012 (Released:2018-10-01)

本論文は、ノルウェーにおける戦後育児政策を検討するものである。1960年代までノルウェーは「主婦の国」 と呼ばれており、労働力不足であったはずの戦後復興期にも女性が労働力として注目されることはなかった。しかし1970年代以降、パブリック・セクターの拡大に伴い、母親を含めた女性の労働市場への進出が本格化、「主婦」というカテゴリーは失効していく。そこで前景化したのが 「子ども」である。近年は現金による育児手当など、「主婦」ではなく「子ども」の価値を強調することによって、男女の性差を前提とした政策が実施されている。それは、国家フェミニズム成立時の「母親」と「国家」の同盟が、ノルウェーにおいては男女の差異を前提として成立したためだと考えられる。
著者
古市 憲寿
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.552, pp.42-43, 2012-09-24

1985年生まれ。社会学者。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程在籍。慶応義塾大学SFC研究所訪問研究員(上席)。ゼント執行役。著書に「絶望の国の幸福な若者たち」(講談社)などがある平成生まれ、ゆとり世代、草食系、内向き──。現代の若者を評する言葉は数知れない。
著者
古市 憲寿
出版者
新潮社
雑誌
新潮45
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.98-102, 2013-05
著者
古市憲寿著
出版者
小学館
巻号頁・発行日
2015
著者
古市憲寿著
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2013