- 著者
-
古関 喜之
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.81, no.6, pp.449-469, 2008-07-01 (Released:2010-03-12)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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2002年にWTOに加盟した台湾は, 国際競争力を持っ輸出型産業としての農業の体質強化を図っている. 本稿では, 日本への輸出拡大を図っているマンゴーの重要な生産地域である台南県玉井郷を対象として, 経済のグローバル化に伴って, 台湾のマンゴー栽培がどのような条件のもとで行われているのかを明らかにし, マンゴー輸出の発展の可能性とその課題にっいて検討した. 生産面では, 生産者の高齢化, 後継者不足, 臨時雇用への依存, 市場価格の低迷などの問題を抱えている. また, 流通面では, 価格や労働の面で生産者の利益を守ることができる農会による共同販売が十分な役割を果たしていないことが明らかになった. 農家がマンゴー栽培を継続するためには, 安定した収入が確保できる販路を確立することが必要である. しかし, 現在台湾が最も重視する日本市場との関係をみると, 生産と輸送のコストが高いため, 市場での厳しい価格競争にさらされている. 台湾が日本市場ヘマンゴーの輸出を続け, 発展させていくためには, 日本の輸入業者から求められているトレーサビリティーへの対応と, 安定供給のための保証価格や栽培契約を導入するなどの取組みが必要である. 他国との厳しい競合の中で, 安全性や品質による差別化が不可欠である.