4 0 0 0 OA 身体症状症

著者
吉原 一文 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.1558-1565, 2018-08-10 (Released:2019-08-10)
参考文献数
10

身体症状症とは,さまざまな苦痛を伴う身体症状が長期に持続する疾患である.身体症状症の要因には,遺伝的要因や環境的要因(ストレス等),患者側の要因(パーソナリティ特性や認知的要因)があり,生物学的要因も示唆されている.診断には,「精神疾患の診断・統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)-5)(アメリカ精神医学会,2014年)の診断基準を用いて診断する.身体症状症には不安や抑うつが併存している割合が高い.身体症状症の治療には,医師との信頼関係が重要である.また,病因・病態の推定には心理社会的背景の聴取が必要になる.病因・病態に応じて治療を行うため,治療法は多岐にわたり,効果も一様ではない.身体症状症に効果のある薬物療法には抗うつ薬があり,特に疼痛症状に対する効果が認められる.心理療法に関しては,認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT),リラクセーション法,ペーシング,段階的運動療法等の有効性が示されている.その他にも,必要に応じて家族面接や心理教育を行う場合がある.
著者
古川 智一 中野 博 平山 健司 棚橋 徳成 吉原 一文 須藤 信行 久保 千春
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.790-798, 2011
参考文献数
51
被引用文献数
1

閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)は,のちに患者であることが判明した新幹線運転士の居眠り運転にみられるように,その社会的インパクトから最近注目されるようになった.また,OSAと合併症である高血圧,心血管障害,脳卒中との関連についても,多くの研究結果から明らかにされてきている.OSAの主症状であり日常的によくみられるいびきは,いびき症者のみならずベッドパートナーの睡眠も妨げるため重要な問題である.質問紙を用いた主観的ないびきと心血管障害との関連が過去の疫学研究によって報告されているが,そのいびきはOSAの代理指標とされ,OSAのないいびき症の臨床的意義についてはあまり注目されていなかった.しかし,最近の研究でいびきがOSAとは独立して眠気や血圧上昇に関与することが示唆されており,今後その臨床的意義について明らかにされることが望まれる.
著者
須藤 信行 古賀 泰裕 吉原 一文 山下 真 波夛 伴和
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

近年、宿主と細菌との情報伝達、いわゆる“インターキングダム・シグナリング(IKS)”が注目を集めている。本研究にて、次の事実は明らかになった。①炎症性腸疾患モデルにおいて、カテコラミン(CA)を介したIKSをブロックする化合物であるLED209は腸炎を改善した。②腸管管腔内には生理活性を有するセロトニンが存在しており、一部はグルクロン酸抱合などを受け不活化されていた。以上の結果は、CAを介したIKSが炎症性腸疾患の病態形成において重要や役割を担っている可能性を示している。また管腔内に5-HTの生成や代謝には腸内細菌が深く関わっていることが明らかとなった。
著者
須藤 信行 吉原 一文 古賀 泰裕 古川 智一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、オープンフィールド法とビー玉埋没テストを用いて、人工菌叢マウスの行動特性を、アイソレーター内測定法を用いて厳密に測定した。無菌マウス(GF)は、SPFマウスの糞便を移植した無菌マウス(EX-GF)と比較し、多動で不安レベルが高かった。GFマウスにBifidobacterium infantisを移植すると運動能が、Blautia coccoidesの移植によって不安関連行動が減弱した。このように腸内微生物は宿主の行動特性やストレス応答の発現に関わっていることがわかった。
著者
須藤 信行 服部 正平 三上 克央 吉原 一文 高倉 修 波夛 伴和 古賀 泰裕
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

極端なやせを追求する神経性やせ症(anorexia nervosa: 以下ANと略)患者においては、体重を恒常的に増加させることが極めて困難であり、種々の治療に抵抗性を示し、重篤な感染症や肝機能障害を併発して死の転機をとることも珍しくない。ANの早期診断、治療、予防法を開発することは喫緊の課題であるが、未だその取り組みは十分な成果を上げていない。本研究では、AN患者群の糞便中腸内細菌叢を次世代シークエンサーによって解析し、健常者と比較することでその詳細な特徴を明らかにするとともにAN患者の腸内細菌叢を移植した“AN型人工菌叢マウス”を用いて、AN患者に見られる腸内細菌叢の異常が、実際の体重変動や行動特性の発現に関与しているかについて検討している。平成29年度は、AN患者の腸内細菌を無菌マウスに移植して作製した“AN型人工菌叢マウス”を用いてAN患者の腸内細菌が体重制御や行動特性の発現にどのように影響しているかについて検討した。その結果、“AN型人工菌叢マウス”では、健常女性の糞便を移植して作製した人工菌叢マウスと比較し、体重増加が不良であった。しかしながらどちらの人工菌叢マウスもエサの摂取量は同程度であった。この結果は、“AN型人工菌叢マウス”では、摂取した食事成分から栄養を抽出する効率、いわゆる栄養効率が低下していることを示唆している。次に人工菌叢マウスの行動特性について、我々のグループが開発した“アイソレーター内行動解析法”にて検討を進めている。