著者
山内 豊明 吉川 博子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.677-681, 2002-11-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
12

Creutzfeldt-Jakob病は比較的まれな神経疾患であり, 亜急性の経過で痴呆, 精神症状, 錘体路・錘体外路症状, 小脳症状などさまざまな中枢神経症状を呈する. 症状が進行するにしたがいミオクローヌス, 高度痴呆, 無動性無言の状態となり, 通常発症後2年以内に死に至る. 孤発性, 遺伝性, 感染性に大別され, 感染性の場合は, ほとんどが医原性の感染であり, 患者に常時接している家族にCJDが発症したという報告はない. しかしながら感染性の疾患である本疾患に対しての, 病室, 手洗い, 器具の扱い, 身体清潔, 食事, 汚染物の扱い, などに関する正しい感染防止の知識は不可欠である. その一方で, 過剰な感染対策にならないよう, 感染性そのものについて十分に理解して対応することも重要である. 本疾患については, 疾患概念ならびに患者やその家族などの立場を理解し, かつ医療従事者や他の患者に感染させないことが鍵となる事項であろう.
著者
吉川 博昭 安藤 富男 渡部 真人 北村 晶
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.172-175, 2016-03-15 (Released:2016-04-20)
参考文献数
4

気管分岐異常を有した患者において分離肺換気を必要とする全身麻酔管理症例を経験した.症例は24歳の男性で左後縦隔腫瘍に対する腫瘍切除が予定された.37Fr左用ブロンコキャスTMを用いた盲目的な2回の気管支挿管では適正な位置への留置ができなかった.3回目に気管支鏡で観察した際,気管分岐部の高さで右上葉気管支(気管気管支)を含む3腔が同時に観察された.気管支鏡ガイド下の誘導により,適正位置への留置および分離肺換気が可能となった.本症例では画像での気管分岐異常の術前評価ができていなかった点,および初回から気管支鏡ガイド下の誘導法による気管支挿管を用いなかった点が反省点であった.
著者
志田 泰世 野口 久美子 金子 潤子 金沢 宏 吉川 博子
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.184-187, 2005-09-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
7
被引用文献数
5

平成15年12月30日, 新潟市民病院の神経内科と整形外科の混合病棟の入院患者47名中13名に下痢, 嘔吐の症状が出現した. 準夜勤務者 (3名) にも同様の症状が認められた. 病棟発生調査とおよび脱水症状の患者への治療が開始された. 出勤していないスタッフにも同様の症状が多いことがわかった. 緊急対策会議を開催し, 患者隔離・スタンダードプリコーションの徹底及び厳重な接触感染予防策が実施された. 胃腸炎の原因はノロウイルスであることが判明した. 1月8日には有症状患者は0となり, 10日患者の隔離解除・平常業務体制となった. ノロウイルス感染の症状は, 嘔吐69%, 下痢66%といわれ, 成人では下痢, 小児では嘔吐が多いとされている. そのため, ノロウイルスの主要感染ルートは, 糞口感染で, 高齢者ではおむつ交換時, 汚染された水や貝 (二枚貝) で, 時に飛沫による感染が推定されることから, 注意が必要である.
著者
倉田 行伸 田中 裕 照光 真 弦巻 立 金丸 博子 吉川 博之 小玉 由記 山崎 麻衣子 瀬尾 憲司
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.93-97, 2013 (Released:2013-07-06)
参考文献数
12

【目的】今まで外科的顎矯正手術を受けた患者で術後に下歯槽神経の損傷によって生じたと考えられるオトガイ部の触覚閾値が上昇した患者の治癒について検討してきた.そこで本研究では抜歯などの一般的な歯科処置を含む外傷性三叉神経障害を対象として,術後経過の記録から同領域における感覚が自然治癒しにくいと予測できる触覚閾値を後ろ向きに検討した.【方法】顎顔面領域の手術や外傷でオトガイ部に感覚障害を生じた,受傷から初回の触覚閾値測定までの日数が7日から14日であり,受傷から2回目の触覚閾値測定までの日数が21日から56日であった69名を対象とし,初回に対して2回目の触覚閾値が悪化または治癒傾向となった感度,特異度,陽性予測度,陰性予測度を算出し,感覚の自然回復が困難であると予測できる診断効率を比較した.【結果】受傷から1~2週間の触覚閾値が3.0 gのときに感覚の自然回復が困難であると予測できる診断効率が最も高かった.【結論】顎顔面領域の感覚障害では,受傷から1~2週間の触覚閾値が3.0 g以上であると,その後3週間の感覚は自然回復しにくくなることが示唆された.