- 著者
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宮本 教雄
武藤 紀久
吉川 博
- 出版者
- The Japanese Society for Hygiene
- 雑誌
- 日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.6, pp.1045-1055, 1988-02-29 (Released:2009-02-17)
- 参考文献数
- 11
冬期における日常生活の中で,手足が冷えて苦痛に感じている人が,意外に数多く存在して,中には手足の指先の触感の欠如など,かなり深刻な問題として悩んでいる人もいるようである。そこでこの手足の冷えを合理的に防止あるいは回復するため,厳寒期において,実際の手足の皮膚温がどの程度で推移して,その低下している皮膚温が暖房によってどのように回復していくか,またソックスの着用が皮膚温の回復にどのように寄与しているかを,女子学生20名について調べ,次のような結果を得た。1.25°Cの温暖環境に入室後,素足の状態で90分間に渡って測定したところ,手母指掌側先端部皮膚温の経時的変化によって,被験者は次の3群に分類される。1) 低温群:測定開始時にかなり低い22°C程度の温度を示し,90分経過後も室温程度にしか上昇しない。2) 中温群:測定開始時に比較的低い20∼26°C程度の温度であるが,30分以内には30°C以上に急上昇して,暖環境に反応する。3) 高温群:測定開始時にすでに30°C以上の高温状態にあって,90分間その状態を維持する。2.低温群は手指先のみならず,足指先においても皮膚温が低く,90分経過しても室温にも達しない。ソックスを着用すると,手指先は回復する傾向をみせるが,足指先は依然と上昇しない傾向が強い。被験者本人も,非常に冷えやすいことを,日頃から感じており,かなり堅固な冷えの状態である。3.中温群の手指先皮膚温は,急上昇して環境の変化に反応し,ソックスを着用すると,その反応は一層強いものとなる。4.中温群の足指先皮膚温は,暖環境にあまり反応を示さない。ソックス着用時には,約半数が反応して皮膚温が上昇するが,あとの半数は反応を起こさず,素足時と同じ反応である。5.高温群は他の群とは異なり,最初から手指先は30°C以上であり,足指先も比較的初期に上昇する。平常時にすでにかなり高い皮膚温を保っていると推測され,ソックス着用時でも,素足時とほとんど傾向は変わらない。6.同じ暖環境温度に対して,群によって反応が異なり,同一被験者においても部位によって反応形態が異なる。7.ソックス着用が皮膚温の経時的変化に与える影響は,直接被覆されている足部よりも,直接被覆されていない手部に強くあらわれる。