著者
石井 望 中村 光彦
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成十八年度、北京にて發見した「北西廂訂律」は、現存最古の元曲譜として極めて貴重なものだったので、平成十九年度はその詳細な分析のために、比較の封象となる曲譜を蒐集し、比較を行なった。その結果「北西廂訂律」に古メロディーが留存してゐることがいよいよ明瞭になって來た。メロディー研究の基礎となる曲韻研究に於いては、范善臻「中州全韻」の七聲體系こそが崑曲の正統であることを示す證據を「韻學驪珠」など諸韻書に求め、學會にて口頭發表した。曲韻研究の基礎となる音韻學概念を六朝に遡って探求し、インド輪廻方式の呉語音圖「歸三十字母例」が音韻學の源であり、それ以來呉語の曲韻に至るまで清濁を高低としてゐることを明らかにした。メロディー研究の今一つの基礎となる音階研究に於いては、太平御覧等に見える「制は角音にのっとる」との記載にもとづき、ファ・ファ#・シ・シ♭を曖昧にする音階が唐代より宋詞・元曲を経て崑曲に至るまで基本原理となってゐることを明らかにし、臺灣にて口頭及び誌上にて發表した。また分擔者中村光彦の指導する卒研にては、機器吹奏を以て崑曲笛の音階を試測し、今後各地の古樂器の音階を計測するための準備を整へた。
著者
繁宮 悠介
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

交尾器破壊が起こらず多回交尾が可能なゴミグモでは、オスはメスの交尾歴に基づくメスの選択を行わず、交尾器破壊が起こり1回交尾と考えられるミナミノシマゴミグモでは、春世代に限れば未交尾のメスが選ばれやすかった。オスが糸を弾いて送る振動信号(求愛歌)は、種間の違いはあるものの、ミナミノシマでメスの1回交尾の機会を獲得するためにオスが行動を進化させている証拠は見つからなかった。どちらの種でも、メスの網に2匹のオスが同時に侵入した場合にもオス間の闘争は見られず、メスはどちらのオスとも交尾するなど、メスによる選択も起こらないようだ。
著者
本村 政勝 福田 卓 吉村 俊朗
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LDL受容体関連蛋白質4(Lrp4)抗体陽性重症筋無力症(MG)の臨床像と神経筋接合部病態を解明し「アセチルコリン受容体(AChR)抗体と筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体に次ぐ、第3番目の病因自己抗体になる」という理論仮説を検証した。我々はAChR抗体陰性MG患者から、Lrp4抗体を有する9症例を報告した(Ann Neurol. 2011)。その臨床像は、男女比4対5、発症平均年齢57歳、嚥下障害を主体とする全身型MGで胸腺腫の合併は無かった。神経筋接合部生検は、3例とも運動終板に免疫複合体の沈着は無く、電顕でも運動終板の破壊像は無くAChR抗体陽性MGとは異なるものであった。
著者
山田 由香里
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

鉄川与助の大工道具の復原を通して、教会建築がどのように実現したのか検討した。次の4点が判明した。①鉄川与助の時代の技術に通じる人は今やごく限られた人である。②復原鉋の削り形状を青砂ヶ浦天主堂(1910)と頭ヶ島天主堂(1919)で対照させた。聖体拝領台手摺り、階段手摺、窓枠などに合致した。③鉋のひとつはフランス・サンテチエンヌのMANUFACTURE FRANCAISE社製(期間は1902~1910)で、日本でもカタログを通じて購入可能であった。④③の溝鉋はド・ロ神父がもたらした可能性が高い。これは、パリ外国宣教会の宣教師の各地での活躍をカタログ通販が下支えした可能性を示唆する。
著者
石井 望
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1、崑山の笛の名手・高慰伯氏の演奏を録音し、指法の口述を録畫した。その成果等を参考にしつつ崑曲の音階について探究し、論文を發表した。楊蔭瀏以來ほとんどの研究者が從って來た雅樂俗樂二大音階説を否定し、笛の吹奏の便宜によるいい加減な音階が唐代から崑曲まで續いてゐることを明らかにした。2、前年度までの録音の成果を參考にしつつ、曲韻についての論文を發表した。「中州全韻」の七聲體系を明らかにすることを主眼とした。3、北曲傳承史研究の副産物として、曇陽子と牡丹亭についての論文を發表した。4、長老俳優の演劇歴と自分の研究過程の概略とを纏め、臺灣の雑誌に發表した。5、今後の研究のため、臺灣にて資料を蒐集した。
著者
横手 一彦
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

この5年間、在米資料や国内資料の確認作業から、新資料の発掘に努めた。また、GHQ/SCAP検閲制度の枠組みを解明する作業などによって、戦後文学成立期の全体性の再構築を試みた。そのため、本課題を10領域に細分化し、これらの研究作業や論究によって、全体的な成果を獲得する研究計画とした。また日本は、一九四五年八月から五二年四月まで、他国に軍事占領されていた。敗戦期文学や被占領下の文学との視座から、実証的な手法による論考を積み重ねることに努めた。その過程で、研究計画を策定する段階において、想定していなかった意想外の進展を得た。これを、研究成果項目に列記した。