著者
伊藤 直人 吉田 彩夏 森 晃爾
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-12, 2020-01-20 (Released:2020-01-25)
参考文献数
10

目的:特定業務従事者健康診断は,業務内容に関わらず定期健康診断と同じ検査項目であり,特殊健康診断との役割も不明確である.このため,特定業務従事者健康診断の対象業務の妥当性について課題が提示されているが,法制度が複雑でありその解釈は容易ではない.そこで,特定業務従事者健康診断の実施対象となる業務とその基準に関する変遷を明らかにする.方法:特定業務従事者健康診断の歴史に関連する法令,通達,文献,書籍の内容を調査した.結果:特定業務従事者健康診断の対象業務は,差し当たり特別な衛生管理をしなければならない有害物を取り扱う業務として昭和22(1947)年に旧労働安全衛生規則第48条で定められ,対象業務の定量的基準は当面妥当と考えられる基準値として昭和23(1948)年の通達によって示され,その後大きく変更されていない.その結果,多くの特定業務従事者健康診断の実施基準の多くは,許容濃度を超えていた.結語:特定業務従事者健康診断の対象業務及びその基準は,約70年間ほとんど変更されていない.社会環境の変化や有害業務の管理手法の向上を鑑み,特殊健康診断と特定業務従事者健康診断の目的や役割を再整理し,特定業務従事者健康診断のあり方を改めて考える必要がある.
著者
早川 洋一 瀧田 真平 菊池 一也 吉田 彩夏 小林 牧人
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.111-124, 2012-11-05 (Released:2014-12-02)
参考文献数
39
被引用文献数
2

The importance of olfaction in spawning of medaka Oryzias latipes was established for the first time by observation of spawning behavior by fish subjected to an olfactory blockage. Experimental fish were prepared by (1) covering the nostrils on both sides (bilateral treatment), thereby excluding all olfactory stimuli, and (2) covering nostrils on one side only (unilateral treatment), thereby giving partial exclusion. A control group comprised untreated (intact). Experiments conducted for both males (bilateral male-intact female, unilateral male-intact female and intact male-intact female) and females (bilateral female-intact male, unilateral female-intact male and intact female-intact male) resulted in no spawning by intact females paired with bilateral males, whereas spawning occurred in intact females paired with both unilateral and intact males. Spawning also occurred when intact males were paired with intact, unilateral or bilateral females, indicating that olfactory stimuli were necessary for males to complete spawning, but not so for females. Spawning acts exhibited from pairing started by bilateral males-intact female pairs included “following” (initial act of following female), “positioning” (lateral courtship display), and “quick circle” (turning in front of female), but they did not include “contact” (bodies in contact posteriorly prior to gamete release), “wrapping” (male embracing female using their dorsal and anal fins during gamete release). On the other hand, intact and unilateral males participated in all of the above spawning acts, indicating that olfactory stimuli are indispensable for behavior concerning emitting semen.
著者
山形 亘 磯貝 俊明 小木曽 正隆 吉田 彩乃 西村 睦弘 田中 博之 手島 保
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1243-1248, 2018-11-15 (Released:2019-12-25)
参考文献数
16

症例は43歳男性.覚醒剤使用で服役中,運動時に心室細動による心肺停止となり,自動体外式除細動器で除細動され当院に搬送された.心電図で陰性T波を認めたが,心エコー検査では壁運動異常を認めなかった.緊急冠動脈造影で右冠動脈に数珠状のびまん性冠動脈瘤を認めた.血管内超音波検査で複数の隔壁を有し複雑に拡張した血管径の大きい病変であったため,経皮的冠動脈形成術は困難と判断した.薬物治療と心室細動の二次予防として植込み型除細動器を留置した.覚醒剤やコカインなどの違法薬物は心血管系に作用し,動脈瘤を形成しうるとされる.本症例では覚醒剤の使用は病歴聴取により確認できたものの,コカインなどの他の違法薬剤の使用歴は明らかにできず,また本症例と同様の病変を示す違法薬物患者の先行報告がないため,違法薬物自体とこの特殊な冠動脈病変との因果関係について断定はできない.しかしながら,川崎病や自己免疫疾患による血管炎の既往はなく,通常の動脈硬化病変とは考えにくい特殊な病変であったことから,違法薬剤が数珠状冠動脈病変の形成に関与した可能性が示唆された.
著者
阿部 美穂子 吉田 彩子 山川 俊幸 森 光康
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.3-13, 2014-05

本研究では、児童福祉施設併設特別支援学校に在籍する知的障害のある中学部生徒のキャリア力を育てることを目的に、生徒らが働く喜びを知り、自らの果たすべき役割の理解と働くことの意義を知るための授業実践に取り組んだ。役割を継続的に実行できれば、周囲から認められる機会が増え、働く喜びにつながると考え、このような経験の積み重ねで、キャリア力の裏付けとなる自己有用感を高めることを目指した。実践にあたっては、①「成果のイメージつくり→役割の実践→実践に対する自己評価→役割の価値理解」を「学習サイクル」として組み入れること、②グループでの活動を基本とすること、③自作「自己評価シート」を活用すること、さらに、④「グループの仲間のため」「見える他者のため」、「見えない他者のため」の3つの相手を設定して活動を設定することの4点から、授業を組み立てた。実践の結果、対象児らにグループの成員として質の高い仕事を成し遂げるため、自ら役割を果たそうとする行動が見られるようになり、併せて対象児らの自己評価から、その自己有用感が高まったことが確認された。
著者
吉田 彩子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.240-247, 2020-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
19

微生物のもつ多彩な機能を利用して,多くの有用物質生産に微生物による発酵法が用いられている.そのなかでもグルタミン酸発酵を発端としてわが国が主動的な役割を果たしたアミノ酸発酵技術の発展により,ほとんどのアミノ酸の微生物による生産法が確立されている.発酵生産技術の開発過程で,さまざまなアミノ酸の生合成経路やその代謝制御機構の存在が明らかとなり,代謝制御発酵が進んだ一方で,生合成機構や調節機構の詳細はあまり明らかにされてこなかった.筆者らはこれまで構造生物学的手法などを用いて,リジン生合成の鍵酵素の活性調節機構を明らかにしてきた.本稿ではリジンをはじめとするアミノ酸の生合成機構やその進化,生合成酵素の調節機構について,筆者らが行った研究を中心に紹介する.
著者
吉田 彩
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.260-269, 2020 (Released:2020-12-10)
参考文献数
16

目的:在宅がん患者の看取りにおける家族の対処の過程を明らかにする.方法:がん患者の看取り期に訪問看護を利用した20名の家族を対象に,家族の対処の過程について半構造化面接を行った.分析は複線径路・等至性モデルを用いた.看取りの過程を一連の径路に示し,家族の対処とそれに影響した要因を検討した.結果:対処の過程は2つに大別され,その差異は,患者が臥床がちになるなどの看取り期の変化の時期に生じた.患者の変化を捉え,昼夜を問わず患者のそばにいるなどの対処をとった家族は,心身の不調をきたしながらも,「自分ができるだけのことを一生懸命やれた」という認識に至った.一方,患者の死を予期せず自分の生活を優先するなどした家族は,「患者との死別や死の状況は受け入れがたい」という認識に至った.結論:家族が心身の健康を保ちながら,看取り期の患者の変化に対処できる,介護への適度な距離を保つ必要性が示唆された.
著者
村上 加奈 吉田 彩香 吉永 一也
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.59-63, 2014 (Released:2015-06-12)
参考文献数
37
被引用文献数
1

精子は、精巣上体を通過する過程で運動能と受精に必要な能力を獲得して成熟する。しかし、精子は射精されて雌性生殖管に入るまでは、余分なエネルギーを消費しないように運動が抑制され、休眠状態となっている。この休眠状態を保つために、精巣上体管の管腔液は酸性に保たれている。精巣上体管上皮は明細胞、主細胞、基底細胞で構成される。最近、明細胞はプロトンポンプ(V-ATPase)を発現しプロトン分泌を促進すること、主細胞が分泌する重炭酸イオンはV-ATPase を明細胞微絨毛へ蓄積させる作用をもつこと、そして基底細胞は一酸化窒素を分泌し明細胞のプロトン分泌を促進すること、などが明らかにされてきた。本稿では、こうした異なった種類の上皮細胞によるクロストークと精巣上体の酸性環境を調節する機構について概説する。
著者
吉田彩子著
出版者
ポプラ社 ; 1971.4
巻号頁・発行日
1971
著者
吉田 彩乃 櫻沢 繁
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.17-21, 2017 (Released:2017-05-03)
参考文献数
7

複雑な実世界に適応するロボットを開発するために,生物の階層性を模倣したシステムが開発されている.しかしそれらのシステム全体を制御するための同期機構は,コンピュータによる計算によって構成されている.そのアルゴリズムは設計者によってシステムの外部から与えられているため,フレーム問題を回避できない.フレーム問題を回避するためは,システムの内部から生ずる計算アルゴリズムによってシステムが動作する必要がある.そこで我々はBZ反応が計算として機能することに着目し,BZ反応による自励振動ゲルを用いて,アルゴリズムを与える事無く自発的に一方向の運動を示す化学ロボットの開発を目指した.その結果,BZ反応に寄与する物質の拡散速度とゲルの形やサイズのバランスをとることで,内生的に非対称性を作りだすことと,その化学反応によって実際にゲルが一方向に蠕動運動することを具体的に示すことに成功した.