著者
白井 保之 木下 善博 幸本 達矢 川野 道隆 中村 綾子 大石 俊之 原田 克則 吉田 智治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.2293-2297, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
11

上部消化管内視鏡検査後に両側または片側の耳下腺部から頸部の腫脹が認められることがまれにある.われわれが経験した7例は1例が両側性,6例は左側の発症であった.いずれも経口内視鏡後の発症で,6例は無鎮静であり,DBERCP(Double balloon ERCP)後の1例は鎮静下での内視鏡であった.2例は以前にも同様の腫脹の経験があった.6例は疼痛なく,1例は腫脹部の軽度の疼痛があった.6例は約1時間で改善したが,1例は消失まで半日程度かかった.単純X線検査を施行した2例で空気の貯留は見られず,CTを施行した1例より耳下腺部の腫脹と診断した.上部消化管内視鏡後に一過性に起こる耳下腺部・頸部の腫脹自体は無害であり自然に改善するが,本疾患の知識は内視鏡医にとって重要であると考え報告する.
著者
吉田 智治 白石 慶
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.3051-3062, 2009 (Released:2012-04-24)
参考文献数
86

高齢化につれて脳・心血管疾患を有する症例が増加している.脳・心血管疾患において抗血栓療法は大変重要であり,血管イベントの二次予防目的に抗血小板薬を投与されている症例も多い.なかでも頻用されている低用量アスピリンは,食道,胃,十二指腸,小腸,大腸にいたる全消化管の粘膜傷害を引き起こす可能性がある.この消化管粘膜傷害は,出血や穿孔を合併し時に致命的となりうるため,適切な対策が急務である.また,消化管出血に伴い,低用量アスピリンなどの抗血小板薬を休薬中に,重篤な血栓塞栓症を合併した症例も経験される.よって,迅速かつ適切な内視鏡的止血を達成し,早急に抗血小板薬を再開することが求められる.この様な抗血小板薬と消化管傷害に関する情報は,消化器科医のみならず,抗血小板薬の処方医も共有し,各診療科が連携を取りつつ症例毎に適切な抗血小板薬の投与ならびに消化管病変の発生予防,発生時の対処を行うべきであると考えられた.
著者
古田 隆久 加藤 元嗣 伊藤 透 稲葉 知己 小村 伸朗 潟沼 朗生 清水 誠治 日山 亨 松田 浩二 安田 一朗 五十嵐 良典 大原 弘隆 鈴木 武志 鶴田 修 吉田 智治 芳野 純治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.1466-1491, 2016 (Released:2016-09-20)
被引用文献数
2

2008年(平成20年)より2012年(平成24年)の5年間における消化器関連の偶発症数は,総検査数17,087,111件に対して12,548件(0.073%)であった.観察のみの偶発症の発生率の0.014%に対し,治療的な内視鏡検査での偶発症発生率は0.67%と約50倍高かった.死亡事案は220件あり,特に70歳以上の高齢者での死亡が164件と全体の3/4をしめた.
著者
遠座 昭 飯沼 清 吉田 智治
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.81-87, 1995-04-10

1月17日に発生した兵庫県南部地震は、阪神間の平野部に大きな被害をもたらしたが、被害は周辺の台地、丘陵地にも生じた。筆者らは地震発生の翌日(平成7年1月18日)から平成7年1月25日にかけて、比較的被害の小さかった芦屋市〜宝塚市にかけての六甲山地東南縁の丘陵地において、地震被害の調査を行った。調査範囲には、既往の文献^1)により活断層とされている甲陽断層が北東-南西方向に走り、また台地、丘陵地を開析する谷が発達することから、地形・地盤条件と地震による被害の関連を検討できる資料が得られるものと考えられる。調査地域の全般的な予察踏査を行った後、芦屋から武庫川にかけての地域に甲陽断層に直交する14のルートを選定し(図-1、p.84)、縮尺1:2,500の地形図を用い現地踏査を行い、顕著な地盤変状、家屋ほかの構造物の破壊状況および道路面に見られる顕著なクラックの分布や形状等について調査した。ここでは、上記調査結果のうち、主に地形や地盤条件に大きく影響されて生じたと考えられる地盤の変状について報告する。なお、調査は(株)建設技術研究所大阪支社、東京支社および福岡支社の地質部員によって行われた。