著者
小島 荘明 (1992) 小島 莊明 NOYA Oscar NOYA Belkisy 古田 隆久 松本 直樹 北 潔
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

芽殖孤虫は、無制限ともみえる自己増殖を行ない、人体に寄生した場合最終的には全身諸臓器を侵して宿主を死に至らしめる寄生虫であるが、その生活史や感染経路については未だ明らかでない。そこで、この寄生虫の自然界における宿主を見出すべく、ヴェネズエラにおいて、トカゲ・カエル・フクロネズミなど水辺において捕獲した小動物の寄生虫について検索した。その結果、芽殖孤虫は発見できなかったが、これらの動物から、新種と思われる糸状虫1種、Taenia属条虫3種を見出したほか、回虫類、鞭虫、蟯虫、鉤頭虫などを得た。さらに、感染宿主の免疫応答や免疫変調、感染に対する感受性や病理学的変化の差異について検討するため、各種の純系マウスを用いて感染実験を行なった。虫体を1虫ないし1/3から1/7まで切断し、マウス腹腔内に注入し、経時的に血球算定と抗体産生について検討するとともに、虫体の増殖と病理組織学的反応について検討した。その結果、IgE抗体の産出については、C57BL/6において最も早く感染後18日目から検出され、かつ7週目に最も高いPCA抗体価(1:160)が得られた。虫体の増殖や感染動物の病理学的反応は必ずしも一定せず、また注入した虫体の大きさにも関係なく、早い場合には感染後3週目に腹水の貯留が顕著となり、死亡する個体も出現したが、奇妙なことには、それらから得られた虫体を同系統のマウスに継代しても、同様に激し状を起こすことなく6カ月以上経過する例も存在した。腹水貯留例について剖検すると、腹水は血性、膿性はリンパ性で激しい腹膜炎が起きており、肝表面に白色苔状の付着物が認められ、辺縁部は鈍となり、肝脾の腫脹が認められた。虫体は注入時より成長し、複雑に分岐したり、分裂増殖して個体数が増加していた。断端組織構造は、D.erinaceiのプレロセルコイドに類似していた。
著者
古田 隆久 加藤 元嗣 伊藤 透 稲葉 知己 小村 伸朗 潟沼 朗生 清水 誠治 日山 亨 松田 浩二 安田 一朗 五十嵐 良典 大原 弘隆 鈴木 武志 鶴田 修 吉田 智治 芳野 純治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.1466-1491, 2016 (Released:2016-09-20)
被引用文献数
2

2008年(平成20年)より2012年(平成24年)の5年間における消化器関連の偶発症数は,総検査数17,087,111件に対して12,548件(0.073%)であった.観察のみの偶発症の発生率の0.014%に対し,治療的な内視鏡検査での偶発症発生率は0.67%と約50倍高かった.死亡事案は220件あり,特に70歳以上の高齢者での死亡が164件と全体の3/4をしめた.
著者
吉田 英生 古田 隆久
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.497-503, 1999-07-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
10

感染病巣部位及び副作用発現部位に対する抗生物質の移行性は, その薬効・毒性に重要な役割を果たす・本研究においてはラットを用いて, 4種のマクロライド系抗生物質 (MLs) の組織移行性の特徴を比較検討した。ラットに20mg/kg経口投与後の血漿中濃度はroxithromycin (RXM) が最も高く, 次いでclarithromycin (CAM) の順で, Cmaxはそれぞれ2.7及び1.0μg/mlであった。azithromycin (AZM) はerythromycin-stearate (EM-S) と同様に投与後1~2時間に0.1μg/mlの濃度が僅かに認められたに過ぎなかった。組織移行性はいずれの薬物も良好で, 測定した主要組織全てにおいて血漿中濃度を上回る濃度が認められた。各臓器内濃度の対血漿比はAZMが最も大きく, 以下CAM>RXM≥EM-Sの順であった。RXM及びAZMはEM-Sと同様の臓器分布パターンを示し, 肝>腎=脾>肺>心の順に高い濃度が認められた。一方, CAMの場合は他のマクロライドと異なる分布パターンを示し, 肺に最も高い分布が認められ, 次いで脾>肝>腎>心の順であった。MLsの主要な適応疾患は呼吸器感染症であり, また, 頻度の高い副作用としては肝機能障害が知られている。したがって, 他のMLsと異なり, CAMの肺に対する移行性が肝に比べ著しく高かったことは, 薬効と副作用の分離という点から注目される。