著者
真口 宏介 潟沼 朗生 高橋 邦幸
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.101-110, 2018-04-25 (Released:2018-05-26)
参考文献数
50
被引用文献数
2 1

IPMNには腺腫,腺癌,浸潤癌があり,治療方針が重要である.2017年にIPMN国際診療ガイドラインが改訂され,分枝型のhigh-risk stigmataとworrisome featuresの因子について変更がみられているほか,精査としてのEUSの「結節(mural nodule:MN)の大きさ5mm以上」が明記された.初回診断時にはUS,CT,MRCPを行い,他疾患との鑑別を行う必要がある.EUSはMNの正確な評価と併存膵癌を見逃さないことから行うべきと考える.手術適応例に対しては,膵管内進展範囲の評価にERCP,IDUSが必要であり,POPSが適応となる場合もある.経過観察にはIPMNの進展の評価と併存膵癌の出現に留意する必要がある.現状では,併存膵癌の監視の観点から嚢胞径に関わらずCT,MRCP,EUSを組み合わせた6カ月毎のfollow-upが妥当と考える.
著者
真口 宏介 小山内 学 潟沼 朗生 高橋 邦幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.3081-3090, 2010 (Released:2011-03-03)
参考文献数
49
被引用文献数
2

IPMN国際診療ガイドラインの作成により,世界的に本疾患が認識され,診断と治療指針について一定の方向性が示された.型分類は,大きく主膵管型と分枝型に分けることを推奨し,手術適応は,主膵管型の全例と分枝型の場合には,有症状例,壁在結節を有する,主膵管拡張,細胞診で悪性,拡張分枝径3cm以上,としている.しかしながら,ガイドラインには,いくつかの課題も残されており,今後の検討によって改定が繰り返さることを認識しておく必要がある.一方,現状でのIPMN診断における内視鏡の役割としては,正確な鑑別診断,手術適応の有無の判定,手術適応例に対する進展範囲診断である.手術適応を判定する因子の中で重要と考えられるのが結節の評価であり,EUSの有用性が高い.また,生検・細胞診に際しては欧米ではEUS-FNAを施行しているのに対し,本邦では腫瘍の播種の問題を重視し,ERCP下に行っている.さらに,手術適応例に対する主膵管内の腫瘍進展範囲診断として,IDUS,POPSが位置する.本邦からの内視鏡を駆使した正確な診断に基づく多くの検討によって「より実践的なガイドライン」の改定が進めことを期待する.
著者
真口 宏介 小山内 学 高橋 邦幸 潟沼 朗生
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.522-531, 2005 (Released:2006-11-17)
参考文献数
24
被引用文献数
6 2

Intraductal papillary-mucinous neoplasm (IPMN) の分枝型は, 組織学的には腺癌, 腺腫のほか過形成病変が加わり, 臨床的には主膵管型に比べ浸潤癌の頻度が低く, 長期間進展しない例が多い. このため, 手術適応例と経過観察例が存在することになる.手術適応の判定因子としては, 画像診断による結節状隆起・壁在結節 (mural nodule) の評価, 主膵管径・拡張分枝径の測定がある. 国際的には, 拡張分枝径が重要視され, 次に隆起の存在, 主膵管の拡張が悪性を示唆する所見となっている. 一方, 本邦では隆起の高さを最も重要とし, 次に主膵管の拡張が重要との意見が多い. いずれにしても, 治療方針の決定ならびに経過観察には, 膵管の評価と拡張分枝内の隆起の評価の両者が求められ, 前者にはUS, CT, MRCPの組み合わせ, 後者にはEUSが必要である. また最近では, IPMNと通常型膵管癌の併存が注目されており, 経過観察に際し膵全体の評価を怠ってはならない. さらに, IPMN症例には他臓器癌の合併頻度が高く, 定期的な全身検索も重要である.
著者
糸井 隆夫 良沢 昭銘 潟沼 朗生 岡部 義信 洞口 淳 加藤 博也 土屋 貴愛 藤田 直孝 安田 健治朗 五十嵐 良典 後藤田 卓志 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.337-365, 2017 (Released:2017-03-22)
参考文献数
227

日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「EPLBD診療ガイドライン」を作成した.EPLBDは近年普及している総胆管結石に対する治療法の一つである.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,専門家のコンセンサスに基づき推奨の強さを決定しなければならないものが多かった.本診療ガイドラインは「EST診療ガイドライン」に準じて,定義と適応,手技,特殊な症例への対処,偶発症,治療成績,術後経過観察の6つの項目に分け,現時点での指針とした.
著者
本多 俊介 潟沼 朗生
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.4, pp.290-296, 2020-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
43

膵癌取扱い規約第7版にて,わが国独自のresectability(切除可能性)についての定義がなされた.NCCNガイドラインに準じたシンプルなものとなっており,術前診断に関わる内科医にとってもわかりやすく整理されている.「Resectable」とは,標準切除によってR0切除が可能なものである.依然として膵癌は予後不良な癌種であり,根治療法としての手術施行が可能な状況での早期発見が重要である.各種画像診断・病理診断を駆使して,正確・迅速な術前診断を行い,膵癌治療成績を向上させていく必要がある.
著者
真口 宏介 小山内 学 潟沼 朗生 高橋 邦幸
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.425-433, 2010 (Released:2010-08-03)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

臨床の場で遭遇する膵腫瘍の診断名の数は限られ,各腫瘍の病理と画像所見の特徴を把握しておくことで鑑別診断の多くが可能となる.膵腫瘍は大きく充実性と嚢胞性に分けられる.充実性には,通常型膵癌,内分泌腫瘍,Solid-pseudopapillary neoplasm(SPN),特殊型膵癌(腺扁平上皮癌,退形成性癌など),腺房細胞癌があり,嚢胞性では,漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN),粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN),膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)の鑑別を行うことになる.但し,充実性腫瘍の嚢胞化あるいは充実性腫瘍の周囲に貯留嚢胞や仮性嚢胞を形成する場合には充実と嚢胞の混在する病態を呈するため鑑別診断に際し注意する必要がある.充実性腫瘍の鑑別診断で問題となるのは,特殊型膵癌(腺扁平上皮癌,退形成性癌など)と腺房細胞癌,非典型的所見を呈する内分泌腫瘍である.特に,内分泌腫瘍は内部の嚢胞化や主膵管内腫瘍栓など,種々の所見を呈するため注意を要する.嚢胞性腫瘍では,SCNにおいてmicro cystとmacro cystの混在,あるいはmacro cyst主体の例が少なくないことを認識しておく必要がある.MCNとIPMNでは,共通の被膜の有無,嚢胞の構造が内に向かうか外に向かうかが鑑別ポイントとなる.膵腫瘍の鑑別診断において体外式US,EUS,IDUSなど超音波診断の果す役割は大きい.
著者
古田 隆久 加藤 元嗣 伊藤 透 稲葉 知己 小村 伸朗 潟沼 朗生 清水 誠治 日山 亨 松田 浩二 安田 一朗 五十嵐 良典 大原 弘隆 鈴木 武志 鶴田 修 吉田 智治 芳野 純治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.1466-1491, 2016 (Released:2016-09-20)
被引用文献数
2

2008年(平成20年)より2012年(平成24年)の5年間における消化器関連の偶発症数は,総検査数17,087,111件に対して12,548件(0.073%)であった.観察のみの偶発症の発生率の0.014%に対し,治療的な内視鏡検査での偶発症発生率は0.67%と約50倍高かった.死亡事案は220件あり,特に70歳以上の高齢者での死亡が164件と全体の3/4をしめた.