- 著者
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周 菲菲
- 出版者
- 北海道大学大学院文学研究科
- 雑誌
- 研究論集 (ISSN:13470132)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.111-135, 2013-12-20
この論文は,観光研究におけるアクター・ネットワーク論的なアプローチ
の必然性と可能性を探求する。まず,従来の観光研究における全体論的な視
点の欠如とモノについての考察の不足といった問題点を指摘する。観光地対
観光者という二分法や,イメージ論のような表象分析の枠では,観光実践の
複雑性を十分に研究することができない。ここで,関係の生成変化に注目し,
人やモノ等の断片的な諸要素を,諸関係を構成する対称的なアクターと見て,
それらのアクターが織り成すネットワークの動態の過程を把握するアク
ター・ネットワーク論に注目する。そして,観光におけるモノの物質性と場
所の多元性の存在を論証し,観光者のような特定のアクターが観光ネット
ワークの中で他のアクター(地域イメージ,モノ等)を翻訳し,自らの実践
に導く様相を,先行研究に基づいてまとめる。さらに,中国人の北海道観光
を例として,アクター・ネットワーク論に基づき,個的実践の共有化の過程
と,地域イメージのブラックボックス化の過程をまとめた。最後に,観光研
究へのアクター・ネットワーク論的アプローチを,地域の複数性を提示する
研究として提示してみた。