著者
平田 正吾 奥住 秀之 国分 充
出版者
茨城キリスト教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

自閉症スペクトラム障害(ASD)児における不器用すなわち運動スキル障害の特徴について、国際的によく知られた運動アセスメントであるMABC2を用いて評価すると共に、その成績の個人差に関わる要因について探索的に検討した。重篤な知的障害のないASD児を対象とした一連の測定の結果、ASD児における運動スキル障害の個人差は、彼らの自閉症特性や内部モデルの機能水準などと関連することが明らかとなった。また、ASD児の運動課題遂行の様相を分析したところ、運動要素間の移行がスムーズでない可能性が示唆された。更に年齢縦断的に見ると、ASD児におけるMABC2の低成績は改善する場合もあることが明らかとなった。
著者
国分 充 葉石 光一 奥住 秀之
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.27-35, 1994-01-31
被引用文献数
7

バランス運動に関し、片足立ちの成績に比して平均台歩きの成績が低いという群(S群)の障害様相が、行動調整能力の問題と関連しているかどうかを確かめるため、重度から軽度までの知能障害者6歳から51歳129名を対象に、平均台歩きと片足立ち、行動調整能力についてはGarfieldのmotor impersistence testのうちの行動の持続に関する3課題の測定を行った。その結果、片足立ちは行動調整能力との関連がきわめて明瞭であるのに対し、平均台歩きは行動調整能力と無関係ではないにしても関連は弱いことがわかり、S群の障害様相が行動調整能力の問題と結びついていることが明らかとなった。また、知能障害者7歳から51歳92名を対象として行った台上片足立ちの測定から、行動調整能力の低い者の場合には、直観的に行動を方向づけ、調整する物が存在する状況の中でバランス能力を改善していくという指導法が示唆された。
著者
国分 充
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

知的な障害を有する子どもに運動を行わせるときにもっている能力を十分に発揮させるような課題設定のあり方を検討することを目的として、立ち幅跳びの計測を、何の目標もなく最大の力を発揮するよう言語教示して行う目標なし条件と、そうして得られた跳躍距離の20cm遠くに設定された目標まで跳ぶように求める目標あり条件の2つの条件下で行った。その結果、目標あり条件での成績は目標なし条件の場合よりも有意に高く、跳躍距離を伸ばすのに目標をしめすことは一般に有効であることがわかった。また、条件間の違いと有意に関係していた被験児の属性は、行動調節能力であった。すなわち、行動調整能力が低ければ低いほど、条件間の差は大きかった。しかし、ダウン症児は、彼らの行動調節能力の如何にかかわらず、条件間の違いは小さく、目標の効果はほとんど見られなかった。これは、ダウン症児では、運動の表出に係わる系ではなく、運動能力自体、すなわち運動の実行系に問題を有するためと考えられた。しかし、彼らにあっては、丁寧さを必要とするような運動課題では、他の知的障害児とかわらないことが、水を入れたコップが載ったお盆を3メートル運ぶというお盆運び課題から明らかになった。この課題において、ダウン症児では時間は長くかかり、また、歩数も多かったものの、こぼした水の量は他の知的障害児で差がなかった。このことは、ダウン症児の運動実行系の障害の性質を考える上できわめて示唆に富む事実であり、また、運動課題設定上も十分留意すべきことと考えられた。