著者
北國 圭一 千葉 隆 河村 保臣 西山 恭平 畑中 裕己 園生 雅弘
出版者
日本神経救急学会
雑誌
日本神経救急学会雑誌 (ISSN:16193067)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.38-41, 2014-07-11 (Released:2015-05-02)
参考文献数
26

We here report the clinical features of three patients presenting with isolated cerebellar nodulus infarction. All suddenly developed nausea, vomiting and walking difficulty. Two experienced horizontal, to-and-fro vertigo. On admission, two could not walk. Motion exacerbated nausea and vomiting for three patients. None of them showed typical cerebellar signs, including dysarthria, dysmetria, or decomposition. Nystagmus was lacking in two. For all three patients, diffusion-weighted image of MRI revealed an isolated, small, high-intensity lesion in the cerebellar nodulus. Symptoms spontaneously resolved over a few days with no residual signs. It is now known that isolated vertigo, or “pseudovestibular syndrome”, without limb ataxia or dysarthria can occur following cerebellar infarction, especially those in the PICA region. A number of recent reports rate that the same syndrome can also be caused by infarction localized at the cerebellar nodulus. This suggests that the cerebellar nodulus must be involved with the vestibular system. Horizontal to-and-fro vertigo might be characteristic of nodular infarction. We believe MRI is necessary for every patient who presents with sudden-onset nausea, vomiting and walking difficulty, even without nystagmus, rotatory vertigo, or limb ataxia.
著者
園生 雅弘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.135-144, 2023 (Released:2023-03-29)
参考文献数
61
被引用文献数
1

日本の神経学は諸外国と異なり精神神経学の精神科と神経科への分離から出発したのではなく,それが現在の脳神経内科のあり方に陰を落としている.機能性神経障害(functional neurological disorders,以下FNDと略記,ヒステリー)は脳神経内科と精神科をまさに繋ぐ疾患だが,古代から存在し,神経学の源流ともなったcommon diseaseである.FNDの診断は,除外診断によって行うのではなく,精神科的原因・心理学的特徴から診断するのでもなく,神経症候そのもの(=FNDの陽性徴候)を元に,検査は最低限としてなるべく早期に積極診断すべきである.この考えは最新の精神科の疾病分類DSM-5においても支持された.様々な陽性徴候が記載されている.脳神経内科医の診療そのものが治療ともなる.
著者
園生 雅弘 迫井 正深 渡辺 憲 冨本 秀和 安藤 哲朗 西山 和利 髙橋 良輔 戸田 達史 日本神経学会神経内科専門医基本領域化推進対策本部
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.515-519, 2020 (Released:2020-08-07)
被引用文献数
1 1

日本神経学会は2018年1月臨時社員総会において,神経内科専門医の基本領域化を目指すことを機関決定した.新専門医制度が大きく揺れる中,神経内科専門医基本領域化推進対策本部では,第60回学術大会において,専門医制度に関する緊急シンポジウムを開催した.本論文はその各演者の抄録を委員会報告としてまとめたものである.厚生労働省,日本医師会に所属する演者,及び,学会内の演者によって,基本領域化が必要な理由,特に地域医療との関係,実現するための手続き,克服すべき課題などが論じられた.これらを踏まえつつ,社員総会決定に従って,神経学会は今後も基本領域化を目指して関係各所との折衝を続ける.
著者
園生 雅弘
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.14-22, 2011 (Released:2017-05-11)
参考文献数
61
被引用文献数
5 3

2 0 0 0 CIDPの亜型

著者
園生 雅弘
出版者
医学書院
雑誌
神経研究の進歩 (ISSN:00018724)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.513-525, 2003-08-10

CIDPの亜型について論ずるには,CIDPの概念,すなわち診断基準を明確にする必要があるが,このためにはAAN基準よりもDyckらの原著に立ち返るべきである。多巣性型の亜型としては多巣性運動ニューロパチー(MMN)と多巣性運動感覚性脱髄性ニューロパチー(MMSDN)がある。MMSDNはしばしば痛みやTinel徴候を伴い,抗ガングリオシド抗体は陰性である。ステロイドは後者のみで有効なので,両者を区別することは治療面からも重要である。抗MAG/SGPG活性を有するIgM MGUSを伴うCIDPは,遠位優位の分布を示す亜型(DADS)とも重なる概念となる。純粋感覚型のCIDPにはその存在の有無も含め未だ不明点が多い。慢性特発性軸索性多発ニューロパチー(CIAP)は,高齢発症で機能障害は軽く,軸索障害を示す独立した疾患概念と思われる。純粋運動型で軸索型のものは慢性運動性軸索性ニューロパチー(CMAN)などの名で呼ばれているが,これとALSとの鑑別は極めて困難である。
著者
園生 雅弘 東原 真奈
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1080-1082, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

線維束自発電位(FP)は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の特徴的所見として古くから知られていた.本稿では,fasciculationとFPの歴史をまず論ずる.FPはALS以外の神経原性疾患では,伝導ブロックを呈する一部の疾患を除けばあまりみられない.すなわち,ALS診断における特異度が高く有用である.改訂El Escorial基準ではFPの意義は過小評価されていたが,Awaji基準では再評価されたことは歓迎される.FPの鑑別対象としてもっとも重要なのは随意収縮MUPの残存である.その鑑別は発火リズムでなされる.FPの発火リズムは,低頻度,きわめて不規則で,しばしばクラスターを示す.これに対して,随意収縮MUPはsemiregularな発火リズムで特徴付けられる.
著者
園生 雅弘
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.99-108, 2015-06-01 (Released:2016-06-07)
参考文献数
56
被引用文献数
1

肩腕部の痛みを伴い, 左手指の麻痺を突然発症した65歳男性例。下垂指を呈し, 臨床的に後骨間神経>尺骨神経支配筋に筋力低下を認め, 針筋電図ではこれらに加えて長母指屈筋, T1傍脊柱筋にも脱神経を認めた。これより, C8単独障害を呈する遠位型の頸椎症性筋萎縮症 (CSA) と診断した。頸部MRIの変化は軽度であった。CSAは日本で多く報告されている疾患で, 近位型と遠位型に分けられ, 近位型が多いとする報告が多いが, 筆者の検討では両者同程度の頻度であった。遠位型では下垂指を呈する例が多い。MRIの頸椎症性の変化は軽微な例も多い。後骨間神経麻痺, 神経痛性筋萎縮症, 筋萎縮性側索硬化症が重要な鑑別診断となる。臨床症候 (筋力) と傍脊柱筋を含む針筋電図による障害分布の詳細な検討が, 最大の診断の手がかりとなるもので, 画像のみに頼ると容易に誤診する。神経筋電気診断医の実力が最も発揮される重要な疾患のひとつと言えよう。