著者
村上 尚 宮本 忠幸 石村 和敬 桑島 正道 田中 敏博 年森 清隆
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

Juvenile Visceral Steatosis(JVS)mouseにはカルニチン輸送担体の活性がない(BBRC223:283,1996)。即ち、ヒトのprimary carnitine deficiencyのanimal modelである。このマウスのオスでは妊よう性の低下があるので、その原因を検索した。研究実績の概要は以下のとおりである。1.原因遺伝子の同定JVSマウスは常染色体劣性の遺伝形式をもつ、単一遺伝子疾患である。原因遺伝子は、第11番染色体上に局在することを、1996年に報告していた。1998年にhuman OCTN2(Na^+dependent carnitine transporter)が報告されたので、mouseOCTN2をclonigし、その第6trnsmembrane domainにあるcodon352のCTG(Leu)が、JVSマウスではCGC(Arg)に変異していることを見い出した。2.精巣の分析JVSマウスのオスは生殖能が極めて悪く、その原因を知る目的で組織学的分析を行った。その結果、精巣上体の体部と尾部の間で、閉塞(6例中5例が完全、1例が不完全)し、完全閉塞の場合、尾部には精子が見られなかった。精巣上体は精子を通過させながら、成熟させていく極めて大切なorganであり、JVSマウスがヒトの閉塞性無精子症のanimal modelになりうる可能性を示した。3..カルニチン輸送に対する阻害剤の発見3-〈2,2,2-trimethylhydrazinium)propionateがカルニチン輸送に対する阻害剤であることを見い出した。将来本研究を推進させるのに有力な武器になりうると考えられた。
著者
西本 憲弘 吉崎 和幸 桑島 正道
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

カルニチンは、生体にとって重要なエネルギー源である長鎖脂肪酸のβ酸化に関与する分子量161の小分子である。このカルニチンの輸送担体の遺伝子異常を有するJVS(juvenile visceral steatosis)マウスにおいては脂肪肝や低血糖、筋委縮などの全身性カルニチン欠損症状に加え、著しい胸腺の萎縮が認められ、組織学的検索から胸腺細胞のアポトーシスが疑われた。そこでJVSマウスを用いて、胸腺でのアポトーシス現象およびT細胞の分化におけるカルニチンの関与について検討した。【方法】2,4,8週齢のhomozygote(jvs/jvs)、heterozygote(+/jvs)ならびにL-カルニチン(1μmol/grBW,ip)による治療を行ったhomozygoteを用いた。胸腺の重量測定、HE染色、TUNEL法によるアポトーシスの検索に加えて、FACS-によるT細胞表面マーカーの解析を行った。【結果および考察】JVS未治療群では胸腺は萎縮していたがL-カルニチン腹腔内投与により胸腺重量は正常化したことからこの胸腺の委縮はカルニチン欠乏によって生じることが確認された。さらにJVSの胸腺ではアポトーシス陽性細胞の増加がTUNEL法により確認された。胸腺より分離したT細胞数もコントロールに比べ約1/10に減少し、これらの細胞を用いたFACS解析からJVSマウスの胸腺ではCD4^-8^-分画の割合が増加し、CD4^+8^+分画の割合が減少していることがわかった。このことからカルニチン欠乏におけるT細胞の分化をPositive Selectionの段階で障害する可能性も示唆された。JVSマウスはヒト原発性カルニチン欠乏症のモデルマウスであり後天性のものに必ずしもあてはまるとは限らないが、カルニチン欠乏はヒトAIDS患者でも報告されておりカルニチン欠乏状態がT細胞免疫不全を悪化させている可能性がある。カルニチンは経口でも補うことが可能であるからカルニチン欠乏が疑われる場合、不足を補うことで病態の悪化を防ぐことが可能である。
著者
塚口 裕康 野間 喜彦 桑島 正道 土井 俊夫 中屋 豊 水野 昭
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

背景 近年のヒトゲノム解析の飛躍的な進歩により、家族性ネフローゼの疾患遺伝子が相次いでクローニングされた。その中でもネフリンとポドシンは共に糸球体ポドサイト細胞間隙に形成されるスリット膜に存在し、濾過膜の構造・機能の保持に働いている。ネフリンは免疫グロブリンスーパーファミリーに属する接着因子で、スリット膜の主要構成分子である。一方ポドシンはカベオリン様のヘアピンループ膜貫通構造を持つ、新規糸球体蛋白であるがその機能は不明である。目的 ポドシンは欠損するとネフローゼや糸球体硬化症発症を引き起こすことが、マウスやヒトで示されており、蛋白尿性腎疾患の発症機序を解明する重要な分子である。ポドシンはストマチンファミリーの属するタンパクであるが、病態解明の第一段階としてまずその細胞や組織レベルでの分子動態を明らかにする。方法 正常ラットとネフローゼモデルであるPAN腎症ラットの糸球体ポドサイト超微細構造下におけるタンパク局在を免疫電顕金染色法にて検討した。同時に、マウスL細胞やイヌ尿細管由来の上皮細胞MDCK細胞にポドシンを発現させ細胞接着装置形成に伴うタンパク動態を検討した。結果 PAN腎症ラットで形成される細胞接着装置にポドシンの集積を確認し、ポドシンが足突起形態の維持に重要であることがわかった(新潟大学・腎研構造病理学・山本格、矢尾板永信博士との共同研究)。培養細胞においても、ポドシンの細胞接着面への集積を認め、生体内のタンパク動態と一致した。考察 ポドシンの局在を解析するのに必要な、動物モデルの確立と培養細胞系の樹立を行った。これらの実験系は新しいポドシン結合タンパクの特性解析に役立ち、新規ネフローゼ遺伝子同定に向けた今後の研究発展に貢献する。
著者
清水 孝郎 桑島 正道 河野 典夫 垂井 清一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
臨床化学 (ISSN:03705633)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-8, 1981-03-25 (Released:2012-11-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1