著者
城田 愛
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.145-148, 2001

第1章高齢者のライフスタイルと睡眠問題に関する現状 現在,世界の高齢化は急速に進んでいる。1995年に全世界の総人口に占める65歳以上の人口の割合は6.6%に過ぎなかったが,2025年には10%を超えることが予想されている(国立社会保障・人口問題研究所, 1997)。さらに2010年以降わが国の高齢化率は,世界の中でも最も高くなるといわれている(厚生省, 2000)。このような世界の高齢化に伴って世界保健機構(WHO)は,1999年に"活力ある高齢化(アクティブ・エイジング)"の概念を提唱し,高齢者が社会でその役割を果たし続けることの重要性を提唱した(World Health Organization, 1999)。一口に高齢者といっても,その実態は様々である。ライフスタイルは,喫煙や肥満などの生活習慣病を予防する目的で注目されはじめたが,現在では個人の生き方,生活様式に加えて,生活態度や個人の価値意識を含む包括的な概念と定義されている。活力ある高齢化を達成する上で,高齢者のライフスタイルを考慮することは重要である。一方,高齢者は心身に多くの問題を抱えており,睡眠に関する愁訴も加齢に伴って増加している(Dement et al., 1982)。高齢者に多く認められる睡眠の特徴として,中途覚醒や早朝覚醒の増加,夜中に目が覚めた後なかなか寝つくことができない再入眠困難,睡眠段階3と4を含む深睡眠の減少,日中の仮眠や居眠りの増加があげられる(林他, 1981)。また睡眠-覚醒リズム(サーカディアンリズム;circadian rhythm)の位相が加齢に伴って前進する(Carskadon et al., 1982)。これらの睡眠の変化は,多くの高齢者を悩ましており,心身の不調を引き起こし,日中の活動を低下させ,生活の質(Quality of life; QOL)を低下させる深刻な問題ととらえられている。このような理由から,活力ある高齢化を考える上で,睡眠問題への対処は不可欠である。本研究では,高齢者の睡眠問題にライフスタイルの個人差という観点からアプローチをおこなった。ライフスタイルはその概念枠組みが大きいため,ライフスタイルを直接測定して得点化することは難しい。高齢者の心理的な状態(well-being)を測定する方法として,社会的自信度(谷口他, 1982)とPGCモラール・スケール(Philadelphia Geriatric Center morale scale; Lawton, 1975)がある。社会的自信度が高いということは「前向きで高い達成意欲を持っている」ことを示している(谷口他, 1982)。一方,PGCモラール・スケールの得点が高いことは「自分自身についての基本的な満足感をもっていること(人生の受容)」,「環境のなかに自分の居場所があるという感じをもっていること(心理的満足度)」,「動かしえないような事実についてはそれを受容できていること(精神的不安)」という3つの意味が含まれている(古谷野, 1996)。したがって,社会的自信度とPGCモラール・スケールの得点が高いということは,前向きな姿勢で達成意欲が高く,周囲の環境に適応していると推測できる。本研究では,これらの質問紙得点が高い高齢者を「高意欲者」と定義した。高意欲者は環境への適応性が高く,日中覚醒しているときの生活内容が充実していると考えられる。そのような高意欲高齢者と低意欲高齢者を比較することで,ライフスタイル(意欲レベル)が睡眠問題に及ぼす影響について検討した。第2章身体活動量からみた活動-休止リズムの検討 本章では65歳以上の高齢者を対象として,意欲レベルと活動リズムの関連性を検討した。ライフスタイル質問紙の得点で抽出した高意欲群14名と低意欲群14名を対象にアクティグラフを用いて,連続10日間の身体活動量を測定した。睡眠健康調査の結果,高意欲高齢者は,低意欲群よりも起床時の眠気や疲労,入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒の報告が少なかつた。さらに仮眠も含めた睡眠中の活動量が低意欲群よりも高意欲群で少なかった。また,夜間睡眠については低意欲群の入眠潜時が長いことから,低意欲群の高齢者は,眠たいという感覚があっても活動性が下がりきるまで寝付くことができないことが考えられた。連続測定した活動量について周期分析を行つた結果,ほぼ全員にτ=24hrとτ=12hrの成分が検出された。同定された成分の振幅に群間差は認められなかったが,両成分とも低意欲群の位相が高意欲群よりも前進していることが明らかになった。そこで自己報告による夜間睡眠と日中の仮眠の時間帯を活動リズムにあてはめて検討したところ,夜間睡眠については,低意欲群の睡眠時間帯は活動リズムと同じく高意欲群より前進していた。しかし,日中の仮眠については,仮眠をとる時間帯に群間差はなかった。この結果は,高意欲群では活動性が下降する時期に仮眠を開始していたのに対し,低意欲群では活動性が上昇に向かう時期でも仮眠を長くとっていることを示している。
著者
玉木 宗久 城田 愛 林 光緒 堀 忠雄
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.99-108, 1998-12-28

This study investigated attitudes toward daytime nap on the 470 aged people (M=73.7 years old) by two measures. One measure was 13 items-scale on an attitude toward positive effects of daytime nap (AE). Another measure was 15 items-scale on an attitude toward napping person (AP). A factor analysis confirmed that AE consists of 3 dimensions of effects of daytime nap : effects on work, physical effects, and psychological effects, and that AP consists of 2 dimensions of beliefs about napping person : belief about taboo and belief about rest. The survey results clearly show that most of the aged people have positive attitudes toward daytime nap. So far, it has been proposed that there are social pressures which inhibit daytime nap in Japanese country and that daytime nap in the aged people is harmful to their health. The results of present study were, however, inconsistency with these previous issues.
著者
城田 愛
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

本発表では、沖縄戦で被害をうけた故郷へ、飼養・食用の豚や薬、衣類、学用品などを送る資金集めのため、ハワイの沖縄系移民たちによっておこなわれた盆踊り(エイサー)大会や演芸会、そして唄をとりあげる。具体的には、ひとりの沖縄系二世の女性の生活誌・生活史に着目する。そして、ハワイと沖縄を架橋するこの女性の記憶と記録、および唄と踊りの舞台にみる、ハワイ、沖縄、日本、アメリカ(軍)の関係性をよみとくことを目的とする。
著者
白水 繁彦 中野 克彦 李 里花 城田 愛 野入 直美
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

白水は沖縄系文化的架橋者のストラテジーを分析することにより、彼らが日系等他エスニック集団を準拠集団として文化的表象を構成していることを見出した。中野は中国系とフィリピン系の民族祭が彼らの文化創生に資していることを明らかにした。李は戦前から戦後にかけてコリア系移民の舞踊活動の変化を歴史的に明らかにした。城田はハワイ、沖縄、福岡における障がい児・者のための芸術療法の現場にて参与観察を実施し、各地域での特徴点と共通点および民族芸術療法の可能性と課題の検討を行った。野入はアメラジアンと帰米2世のナラティブ分析を通じて、ハワイの“ローカル”の構築とディアスポラとの相互行為との関連を検討した。
著者
城田 愛
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

下記のとおり調査・研究をおこない、これまでに得られたデータをもとに、以下の口頭発表にて、成果の一部を報告した。1 琉球大学移民研究センターおよびWorldwide Uchinanchu Business Association共催「Worldwide Uchinanchu Business Association第9回世界大会in関西」における「移民会議」のワークショップ「在日ウチナーンチュのアイデンティティ」「大阪沖縄系三世の視点・始点からFrom the」(Starting) Point of An Osaka-born Sansei Uchinanchu」平成17年4月6日、スイスホテル南海大阪2 北海道調査(5月20日〜23日)(1)北海道開拓記念館・開拓村の調査(2)日本文化人類学会の第39回研究大会に参加した。(3)アイヌ民族博物館の調査を実施した。3 沖縄調査(5月27日〜31日)(1)国際交流基金・琉球大学の招聘で来日中のハワイ生まれの沖縄系二世の作家について、移民に関する作品執筆調査等に関するインタビューに応じてもらった。(2)第二次世界大戦前、ハワイ移民し帰郷した移住者に関する聞き取り、およびテニアンへ移住し、戦後に引き上げした本人の移住に関するライフヒストリーの聞取り調査をおこなった。(3)上記(1)の二世が琉球大学のアメリカ文学の授業での「Lucky Come Hawaii」(1965年アメリカで出版)に関する特別講演、その後、作品および作家本人や家族のライフヒストリーに関する調査を実施した。4 横浜調査(6月17日〜19日)6月17日には、JICA海外移住資料館における館内でのボランティア活動、研究、各種事業に関して、当館の研究員たちにインタビューを行った。また、常設展示の内容に関する調査を実施した。6月18日には、ハワイ大学マノア校夏期特別授業社会学部人類学部共通科目"Okinawans Locally and Globally" Tour-Summer 2005の当館見学に関する参与観察を行い、当スタディ・ツアーの参加者に当館の展示に関する筆記アンケートに応じてもらい、数人にはインタビュー調査を実施した。また、鶴見沖縄県人会館に移動後、鶴見沖縄県人会会計部長・川崎沖縄芸能研究会副会長仲宗根嘉氏に、沖縄県からの移住に関するご本人の来歴および鶴見地区在住の沖縄系移住者たちの活動等に関するインタビューを行った。5 沖縄調査(6月22日〜29日)ハワイ大学マノア校夏期特別授業社会学部人類学部共通科目"Okinawans Locally and Globally" Tourに同行し、(1)沖縄県立平和祈念資料館、(2)沖縄県立博物館、(3)南風原文化センター、(4)琉球大学移民研究センター、(5)読谷村立歴史民俗資料館、(6)石川市立歴史民俗資料館、(7)旧海軍司令部壕資料館、(8)沖縄県立図書館、(9)沖縄県公文書館において調査を実施した。6/23は上記(1)常設展中の「国策移民」等、6/24は(2)常設展中の海外移住に関する展示、(3)常設展中の「移民」のコーナー等に関する調査を実施し、また(4)にて、ハワイ大学と琉球大学移民研究センターおよびアメリカ研究センターの教員・学生たちとのワークショップに参加した。6/25は(5)と(6)の沖縄の民俗に関する展示に対してハワイからの沖縄系移民たちにインタビューを実施した。6/26は(1)と(7)における沖縄戦に関する展示の調査、6/27〜6/29は(8)と(9)において沖縄からの移民に関する沖縄県および琉球政府関連の書類、新聞記事、雑誌『雄飛』、移民の展示に関する論文等の調査、複写入手を行った。6 博士学位論文(平成18年3月22日提出)これまでの研究成果の一部を、博士学位論文「エイサーにみるオキナワンたちのアイデンティティ:ハワイ沖縄系移民たちにみる『つながり』の創出」としてまとめ、京都大学大学院人間・環境学研究科に提出し、現在、審査中である。