著者
山本 かほり 野入 直美
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

愛知朝鮮中高級学校での参与観察および学生,卒業生,教員,保護者へのインタビュー調査,行事への参加などを通じて,朝鮮学校での日常およびその意味を考察してきた。さらに朝鮮民主主義人民共和国への修学旅行」にも同行調査を行い,朝鮮学校の生徒たちにとっての祖国の意味を考察した。朝鮮学校が当事者にとってもつ意味は,朝鮮人としての肯定的アイデンティティを形成し,日本においても朝鮮人として生きていくことの自己肯定感の育成,そして,朝鮮半島を「祖国」として考えつつ,日本において何ができるかを考える遠隔地ナショナリズムが育成されていることを考察した。
著者
野入 直美
出版者
異文化間教育学会
雑誌
異文化間教育 (ISSN:09146970)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.47-64, 2016

<p>Is Okinawa included in the Japanese-style multicultural society? While standard multicultural trends are present in Okinawa, a special multi-ethnic trend could also be observed in Okinawa, which is the issue of mix-race children who are the offspring of locals and US military personnel. In this paper, we discuss the issue of mix-race children by focusing on the survey of mix-race children which was conducted in 1955, 1962 and 1975 in Okinawa. We highlight the context of the surveys, rather than using the data as facts. Which kind of organizations and under what kind of initiatives were the surveys of mixed race children conducted? How did the research questions reflect stigmas and stereotypes? The purpose of the paper is to analyze the discourse of mix-race children in Okinawa from the 1950s to 1970s, before and after Okinawa's repatriation to Japan mainland.</p>
著者
野入 直美
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.448-465, 2016 (Released:2018-03-31)
参考文献数
34

本稿では, 沖縄本島中北部に位置する金武という地域に着目する. 金武町は, 沖縄の海外移民発祥の地であり, 沖縄の米軍基地の中でも危険度の高さで知られるキャンプ・ハンセンを抱える基地の町でもある.金武はいかにして「海外雄飛の里」となり, また基地の町となったのか. 本稿では, 金武町における移民をめぐる地域アイデンティティの構築を, 移民送出期の歴史よりも戦後の地域再編成に着目して検討する. 沖縄の移民研究には, 戦後の沖縄社会が成り立ってきた過程の中に移民の議論を位置づけるものがほとんどない. 本稿では, 金武町の戦後の成り立ち, 地域アイデンティティの構築をめぐって, 移民と米軍基地がどのように関連しているのかを考察する. これは沖縄の移民を, 戦後の沖縄社会の成り立ちの中に位置づける試論である. また地域アイデンティティの議論に, 越境という要素を取り入れる試みでもある.また, 本稿では, 戦前の金武村で暮らしたハワイ沖縄帰米2世と, 現代の金武町で育ったアメラジアンのライフヒストリーをとりあげる. 彼らの語りは, 移民送出期が終わった後の金武における多様な越境を照らし出す. 仲間勝さんと宮城アンナさんは, 2つの故郷を同時に生きる越境者として, 困難の中で仕事を立ち上げ, 模索を重ねて学んできた. そのとき, 彼らは期せずして, 地域アイデンティティの構築につながる関与を行っている. 本稿では, そのような関与に着目して越境者の生活史をとりあげる.
著者
野入 直美
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.448-465, 2016

<p>本稿では, 沖縄本島中北部に位置する金武という地域に着目する. 金武町は, 沖縄の海外移民発祥の地であり, 沖縄の米軍基地の中でも危険度の高さで知られるキャンプ・ハンセンを抱える基地の町でもある.</p><p>金武はいかにして「海外雄飛の里」となり, また基地の町となったのか. 本稿では, 金武町における移民をめぐる地域アイデンティティの構築を, 移民送出期の歴史よりも戦後の地域再編成に着目して検討する. 沖縄の移民研究には, 戦後の沖縄社会が成り立ってきた過程の中に移民の議論を位置づけるものがほとんどない. 本稿では, 金武町の戦後の成り立ち, 地域アイデンティティの構築をめぐって, 移民と米軍基地がどのように関連しているのかを考察する. これは沖縄の移民を, 戦後の沖縄社会の成り立ちの中に位置づける試論である. また地域アイデンティティの議論に, 越境という要素を取り入れる試みでもある.</p><p>また, 本稿では, 戦前の金武村で暮らしたハワイ沖縄帰米2世と, 現代の金武町で育ったアメラジアンのライフヒストリーをとりあげる. 彼らの語りは, 移民送出期が終わった後の金武における多様な越境を照らし出す. 仲間勝さんと宮城アンナさんは, 2つの故郷を同時に生きる越境者として, 困難の中で仕事を立ち上げ, 模索を重ねて学んできた. そのとき, 彼らは期せずして, 地域アイデンティティの構築につながる関与を行っている. 本稿では, そのような関与に着目して越境者の生活史をとりあげる.</p>
著者
野入 直美 飯島 真里子 佐藤 量 蘭 信三 西崎 純代 菅野 敦志 中村 春菜 八尾 祥平
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、(1)引揚者が戦後の沖縄社会でどのように包摂され、いかなる階層に位置したか、(2)引揚者はどのような社会的役割を果たしたか、(3)「専門職引揚者」の社会移動は、他県でも見出せるパターンが沖縄で集約的に表れているのではないかということを、沖縄の台湾・満洲「引揚げエリート」を事例に解明し、(4)戦後沖縄社会を<引揚げ>という新しい視点からとらえなおす。「引揚げエリート」とは、日本帝国圏の在住期から戦後にかけて、水平・上昇の社会移動を遂げ、沖縄の戦後再建を担った人びとを指す。その中心は、外地において教員、公官吏などの専門職に就き、その経験を資源として戦後を生きた「専門職引揚者」であった。
著者
野入 直美 蘭 信三 飯島 真里子 松田 ヒロ子 森 亜紀子 坪田 美貴 (中西 美貴)
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フィリピン、台湾、旧南洋群島、満州からの沖縄引揚者の研究は、3年間の研究成果を『移民研究』第9号(2013年刊行予定)の特集として発表すべく、現在、原稿の最終とりまとめ作業を行っている。 フィリピン引揚者については、沖縄社会における引揚者の戦没者に対する慰霊に関する調査として、沖縄県立平和記念公園内ダバオ之塔で行われる慰霊祭の参与観察と参加者へのインタビューを行った。それにより、慰霊祭が始まった1960年末と現在の慰霊の形、目的、内容、参加者の変遷を明らかにした。また、成果報告を発表するにあたり、戦没者慰霊に関する先行研究(国内外)の動向を調査し、本テーマの位置づけを再検討した。 台湾引揚者については、沖縄県内で刊行された『那覇女性史』や『近代沖縄女性史』などの女性史移住先の台湾の記載は非常に少なく、ほとんど視野に入っていないことを踏まえ、それを補うために市町村誌史の蒐集、整理とともに、台湾経験者およびその家族へのインタビュー調査を行った。 旧南洋群島引揚者については、「旧南洋群島から沖縄へ引揚げた人々の移民経験・戦争体験および戦後経験とはいかなるものだったのか」を、帝国圏他地域からの引揚者の経験と比較検討しつつ明らかにすることを目的とし、これまでに沖縄本島と宮古諸島伊良部島で行った旧南洋群島引揚者149名への聞き取り調査で得られた音声データを文字資料化し、県史・市町村史に掲載された旧南洋群島引揚者の証言と比較・検討した。さらに、この作業によって明らかにされた旧南洋群島引揚者の経験と、他帝国圏から沖縄へ引揚げた人々の経験がどのように共通し、異なるのかを検討した。
著者
野入 直美
出版者
異文化間教育学会
雑誌
異文化間教育 (ISSN:09146970)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.47-64, 2016-08-31 (Released:2020-06-24)
参考文献数
15

Is Okinawa included in the Japanese-style multicultural society? While standard multicultural trends are present in Okinawa, a special multi-ethnic trend could also be observed in Okinawa, which is the issue of mix-race children who are the offspring of locals and US military personnel. In this paper, we discuss the issue of mix-race children by focusing on the survey of mix-race children which was conducted in 1955, 1962 and 1975 in Okinawa. We highlight the context of the surveys, rather than using the data as facts. Which kind of organizations and under what kind of initiatives were the surveys of mixed race children conducted? How did the research questions reflect stigmas and stereotypes? The purpose of the paper is to analyze the discourse of mix-race children in Okinawa from the 1950s to 1970s, before and after Okinawa’s repatriation to Japan mainland.
著者
稲月 正 谷 富夫 西村 雄郎 近藤 敏夫 西田 芳正 山本 かほり 野入 直美 二階堂 裕子 高畑 幸 山ノ内 裕子 内田 龍史 妻木 進吾 堤 圭史郎 中西 尋子
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

在日韓国・朝鮮人と日系ブラジル人との生活史の比較分析からは(1)「移民」第1 世代の多くは周辺部労働市場に組み込まれたこと、(2)しかし、移住システム、資本主義の形態などの違いが社会関係資本の形成に差をもたらし、それらが職業的地位達成過程や民族関係(統合)の形成過程に影響を与えた可能性があること、などが示されつつある。また、在日韓国・朝鮮人の生活史パネル調査からは、(1)1990 年代後半時点でも見られた祖先祭祀の簡素化やエスニシティの変化が進んでいること、(2)その一方で 「継承」されたエスニシティの持続性自体は強いこと、などが示された。
著者
白水 繁彦 中野 克彦 李 里花 城田 愛 野入 直美
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

白水は沖縄系文化的架橋者のストラテジーを分析することにより、彼らが日系等他エスニック集団を準拠集団として文化的表象を構成していることを見出した。中野は中国系とフィリピン系の民族祭が彼らの文化創生に資していることを明らかにした。李は戦前から戦後にかけてコリア系移民の舞踊活動の変化を歴史的に明らかにした。城田はハワイ、沖縄、福岡における障がい児・者のための芸術療法の現場にて参与観察を実施し、各地域での特徴点と共通点および民族芸術療法の可能性と課題の検討を行った。野入はアメラジアンと帰米2世のナラティブ分析を通じて、ハワイの“ローカル”の構築とディアスポラとの相互行為との関連を検討した。
著者
蘭 信三 外村 大 野入 直美 松浦 雄介 上田 貴子 坂部 晶子 高野 和良 高畑 幸 飯島 真里子 花井 みわ 竹野 学 福本 拓 大久保 明男 倉石 一郎 山本 かほり 田村 将人 田村 将人
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の成果は以下のようである。まず、(1)第二次世界大戦後の東アジアにおけるひとの移動は日本帝国崩壊によって策定された新たな国境線によって引揚げ、送還、残留、定着という大規模な人口移動と社会統合がなされたことを明らかにした。しかし、(2)例えば日韓間の「密航」や中国朝鮮族居住地域と北部朝鮮間の移動のように、冷戦体制が整うまでは依然として残る個々人の戦前期の生活戦略による移動というミクロな側面も継続されていたことを明らかにした。そして、(3)帝国崩壊後も中国に残留した日本人の帰国のように、それは単純に「遅れた帰国」という戦後処理(コロニアリズム)の文脈だけではなく、日中双方における冷戦体制崩壊後のグローバル化の進行という文脈、という二つのモメントに規定されていたことを明らかにした。
著者
野入 直美 Noiri Naomi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.5, pp.141-170, 2000-03

本稿は石垣島の台湾人の生活史の事例から、石垣島における台湾人と沖縄人の民族関係の変容過程をとらえようとする試論の前編である。ここでは、戦前から復帰前までの台湾から石垣島への人の移動と、石垣島における台湾人社会の生成と変容の過程をとりあげる。台湾から石垣島への人の移動は、戦前と戦後を通じて、台湾人実業家が石垣島にもちこんだパイン産業によって形成されてきた。戦前期については、パイン産業の萌芽と台湾人移住の始まり、国家総動員体制下での沖縄人による台湾人排斥を中心に記述を行う。そして戦後期については、パイン産業が石垣島の基幹産業となるなかで台湾人が集住部落を形成し、沖縄人との民族関係が変化していく過程と、復帰前の移行期における台湾人の職業の多様化について記述する。本稿の続編では、復帰後の台湾人社会について、大量の帰化、世代の移行と家族生活の変容、職業の多様化を中心にとりあげ、それらの変化にもかかわらず相互扶助のネットワークが維持されてきた過程について検討する。
著者
野入 直美 Noiri Naomi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.8, pp.103-125, 2001-09

本稿では、沖縄の本土復帰以降の石垣島における台湾人社会の変容について検討を試みる。沖縄が本土復帰した1972年に、日本は中華人民共和国と国交を回復し、中華民国との国交は途絶えた。この政情不安を背景として、石垣島では台湾人による家族ぐるみの帰化が大量に行われた。ここでは、まず戦後の台湾人の法的地位について整理し、石垣島に生きるひとりひとりの台湾人にとっての帰化の意味と、帰化をめぐる意識について、聞き取りの事例に基づいて考えたい。さらに本土復帰後の台湾人社会は、集住地域の解体に直面する。前稿で述べたように、石垣島の台湾人社会は、戦前からのパイン産業を柱として形成されてきた。戦後、パイン産業は石垣島の基幹産業となった。労働力の需要があったために、疎開でいったん台湾へ戻っていた台湾人は石垣島に再移住し、新たに就業機会を求めてやってくる台湾人もいた。しかし復帰後、パイン産業は急速に斜陽化し、パイン缶詰工場で働く下層労働者の多くは石垣島を去った。定住を選んだ人びとも、かつて「台湾人村」と呼ばれたX部落、パインの生産と加工によって栄えた台湾人集住地域を離れ、石垣市の市街地に移動した。この稿では、集住地域の解体と職業生活の多様化にもかかわらず、相互扶助と文化継承のネットワークが維持されていく過程を明らかにしたい。
著者
水田 憲志 野入 直美 松田 良孝 松田 ヒロ子 卞 鳳奎
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では以下の成果を得た。(1)日本植民地時代の台湾在住経験をもつ沖縄系移民のエスニシティの多元性について明らかにした。(2)太平洋戦争末期における沖縄県から台湾への疎開と戦争終結後の引き揚げの実態、ならびに台湾沖縄同郷連合会の存在とその役割について明らかにした。(3)戦後初期において石垣島でパインアップルと水牛が普及する過程で台湾系住民が果たした役割について明らかにした。(4)研究成果を地域社会へ還元するために、八重山の地元高校で出前授業を実践した。さらに「八重山の台湾」を学ぶ郷土学習、生涯学習の教材となる図書の出版準備作業を継続中である。