著者
植村 幸生 薩摩 雅登 小島 直文 尾高 暁子 松村 智郁子 久保 仁志 佐竹 悦子 塚原 康子
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

大学附設の民族音楽アーカイブを拠点とし、地域の邦楽器製作者や販売者らとの協働を前提に、邦楽専門家を擁する拠点大学の地の利を生かして、当該地域の児童生徒や学内学生むけ地域文化プログラムの開発と提案を行った。具体的には、下町の邦楽器製作業者/職人への取材をもとに、楽器製作や技の継承をめぐる今日的課題を明らかにし、これに関する問題意識を次代を担う若い世代に喚起すべく、展示と実演の場を設けた。同時に、邦楽を含む下町の伝統芸能や儀礼について、広義の担い手・上演場所・機会を項目とするデータベースを作成し、邦楽を育んだ土壌を通時的に俯瞰する手だてを、アーカイブから発信する準備を整えた。
著者
ゴチェフスキ ヘルマン 藤井 浩基 塚原 康子 酒井 健太郎 大角 欣矢
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

28年度の研究活動は28年3月12日から29年6月26日まで開催された駒場博物館の「フランツ・エッケルト没後100周年記念特別展「近代アジアの音楽指導者エッケルト--プロイセンの山奥から東京・ソウルへ」」展示中に行われた行事とその準備に集中した。5月28日には東京大学駒場キャンパスで「フランツ・エッケルトとその時代」というタイトルで国際シンポジウムと吹奏楽の演奏会を実施した。シンポジウムには研究代表者と研究分担者全員に加えて安田寛(元奈良教育大学、研究協力者)、李京粉(ソウル大学、研究協力者)、曺允榮(梨花女子大学、招待講演)と文景楠(東京大学、通訳)が参加し、主にこの研究で明らかになった新たな事実の解釈と意義について議論した。演奏会では小澤俊朗の指揮と神奈川大学吹奏楽部の演奏でエッケルトの作品を一次資料から再現した。その中の複数の作品がエッケルトの時代から一度も演奏されていないものであった。作品の性質と再現に当たっての問題点については楽譜作成に協力した都賀城太郎(藤村女子高等学校)から説明があった。6月23日には渡辺克也(オーボエ)と松山元・松山優香(ピアノ)によって、エッケルトのオーボエとピアノの作品を中心とする演奏会を行い、オーボエの専門家成澤良一に解説を依頼した。展示された資料によって成澤氏はアジアのオーボエ受容史について新たな発見をし、本研究企画にも貢献した。特別展は多くの観客を迎えるのみならず、数多くの専門家が(一部繰り返して)展示会を訪れ、その結果研究代表者を含む企画者は多くの刺激を受けることになった。展示が終わってから研究代表者は改めてヨーロッパに渡り、エッケルトがプロイセンやドイツで経験した軍楽隊文化とその時代背景についてさらに調査した。
著者
塚原 康子
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、近代日本の音楽家(本研究でいう「音楽家」とは、洋楽・邦楽をふくめ音楽の種類を問わず、職業的に音楽の演奏・教育に携わる人々をさす)の人材養成と就業の実態を、二つの方法によって明らかにすることを目的とする。第一は、人材養成と就業の基盤が民間にあった邦楽(雅楽をのぞく)の音楽家の変化を、複数の名簿・統計資料によって数量的に明らかにした。具体的には、地域を東京に限定し、『諸芸人名録』(明治8年刊)、『明治41年東京市市勢調査』(明治44年刊)、『警視庁統計書』(明治25年縲恟コ和11年)から邦楽各ジャンルの専門家数を抽出し、1870年代〜1930年代の変化(年代差、地域差、男女差、関東大震災の影響)を跡づけた。第二は、官制の中に人材養成と就業の基盤を有した雅楽と洋楽の音楽家の全体像を明らかにするために、諸名簿にもとづき4種のデータベースを作成した。その結果、明治期から昭和戦前期までの在籍者総数は、宮内省楽部で約240名、陸軍軍楽隊・海軍軍楽隊で約4,400名、東京音楽学校では約13,400名に上ることがわかった。このうち、宮内省楽部と軍楽隊は、音楽演奏を主たる職務とする専門機関で人材養成機能ももつが、その養成期間は楽部の7年に対して軍楽隊が1〜2年と対照的である。また、楽部は在職期間がきわめて長く中途退部者も少ないのに対し、軍楽隊員の多くは在職期間よりも退役後の民間での就業期間が長い。もともと教育機関である東京音楽学校は、正規コースである本科・師範科のほかに、実技のみを履修できる非正規コースの選科をもち、全在籍者の約3分の2が選科に在籍した経験を有していた。また、女性や留学生にも門戸を開くなど、多様な教育機会を提供し、在籍者の多くを教職に送り出していたことが明らかになった。