著者
神吉 政史 石橋 正憲 依田 知子 塚本 定三
出版者
Japanese Society of Food Microbiology
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.216-220, 2004-10-15 (Released:2010-07-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2 4

赤身魚について生鮮魚20検体および加工品39検体を調査した結果, 好塩性ヒスタミン生成菌を生鮮魚7検体および加工品5検体から分離し, 腸内細菌科のヒスタミン生成菌を生鮮魚8検体および加工品13検体から分離した.マグロ10検体中6検体よりPhotobacterium phosphoreumを分離したが, その他の魚種では10検体中1検体からPhotobacterium damnselaeを分離したのみであった.腸内細菌科のヒスタミン生成菌については生鮮魚と加工品で検出率に差はなかった.しかし, その菌数は加工品2検体で104cfu/g以上となったのに対して, 生鮮魚では3.2×103cfu/gが最高であった.我々は今回の結果により, ヒスタミン食中毒の原因菌は生鮮魚では主にP.phosphoreumであり, 加工品では主に腸内細菌科の菌である可能性が高いと結論づけた.
著者
山崎 伸二 飯島 義雄 塚本 定三 塚本 定三 OUNDO Joseph O. NAIR Gopinath B. FARUQUE Shah M. RAMAMURTHY Thandavarayan
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

インド、ケニアでの主要な下痢原因菌と考えられる下痢原性大腸菌とコレラ菌について解析した。下痢症患者便をマッコンキー寒天培地で培養し得られたコロニーからボイルテンプレートを作製しReal-time PCRで下痢原性大腸菌の病原因子を網羅的に解析した。インドでは、ipaH遺伝子陽性菌(腸管組織侵入性大腸菌)が最も陽性率が高く、次にeaeA遺伝子陽性菌(腸管病原性大腸菌)の順であったが、ケニアではelt遺伝子陽性菌(腸管毒素原生大腸菌)の陽性率が最も高く、次にaagR遺伝子陽性菌(腸管凝集性大腸菌)であった。我が国で陽性率の高いcdt遺伝子陽性大腸菌がインドやケニアではあまり検出されなかった。一方、コレラ菌に関しては、バングラデシュで見つかったハイブリッド型O1コレラ菌(エルトールバリアント)はインドでは1990年に既に分離されており1995年以降分離されたO1コレラ菌は全てハイブリッド型(エルトールバリアント)であることが明らかとなった。ケニアでのコレラの流行で分離されたコレラ菌もエルトールバリアントであり、エルトールバリアントがアフリカ、ケニアでも広く流行に関わっていることが明らかとなった。
著者
塚本 定三 河合 高生
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.738-741, 1998-07-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

大腸菌O157はいくつかの大腸菌および他の菌種とO抗原の一部が共通であるため, それらとの問で血清学的に類属反応が認められる. そこでO157抗原の特異性を決定しているrfbE(Ec O157: H7) 遺伝子に注目し, PCR法によりO157抗原を同定することを試みた. その結果, 供試した志賀毒素産生性大腸菌 (STEC), O157: H7, O157: H-およびSTECでない大腸菌O157のすべての株に大腸菌O157 rfbE遺伝子の存在が認められた. 一方, 大腸菌O157以外の血清型のSTEC, 腸管病原性大腸菌 (EPEC) およびO157を除く大腸菌O血清型別用標準株はすべて陰性であった. また, Salmonella O30, Citrobacter freundiiは大腸菌O157検出キットで陽性を示したにもかかわらず, rfbE遺伝子の検出はなかった. このことから, 今回報告したPCR法を用いることにより, 野外から分離された菌株が大腸菌O157か, 共通のO抗原を持つ菌種かの鑑別に有効な手段となると思われる.
著者
塚本 定三 木本 達雄 マガリエス マルセロ 竹田 美文
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1538-1542, 1992
被引用文献数
3

付着性大腸菌 (局在性) の検出をNataro et al.が報告したDNA (EAF) プローブを用いたコロニーハイブリダイゼーション法で試み, HeLa細胞への付着性と比較した結果, EAFプローブ法は感受性, 特難において培養細胞付着性を調べる方法と比べて遜色なかった.そこで, ブラジルの小児下痢症患者および健康者おのおの126名を対象に, 付着性大腸菌の検出を試みた.EAF陽性の大腸菌は下痢症患者のうち29名 (23.0%), 健康者のうち15名 (11.9%) から検出されたが, そのうちのおのおの23名 (18.3%), 7名 (5.6%) から分離されたEAF陽性菌をまEPECの血清型に属するものであった.そのため, EAF陽性でEPECの血清型に属する大腸菌は下痢症との関連性が深いものと想像された.検出頻度の高い血清型は055: H-, O111: H2, O119: H6であるが, これらはすべてEPECの血清型嘱するもので, そのなかでも0111: H2は下痢症患者のみに検出されたため, 他の血清型に比べて病原性が強いと思われる.また, EAF陽性でEPECの血清型に属さないが, 検出頻度が高かったO88: H25は下痢原性が疑われる.