著者
竹田 美文 野村 隆司
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.687-693, 2000-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

わが国においては, 1999年 (平成11年) 4月から「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が施行され, 感染症予防・医療体制の抜本的な見直しが図られた.法律に基づく感染症医療提供体制としては, 特定感染症指定医療機関, 第1種感染症指定医療機関及び第2種感染症指定医療機関の3種類が規定されている.最近, 都道府県毎に各2床整備することが定められている第1種感染症指定医療機関について,(1) 都道府県毎に各2床整備することの必要性,(2) 病室の構造等に関する施設基準,(3) ペストは2類感染症又は4類感染症での対応で十分であり, 第1種感染症指定医療機関での対応は必要ないといった新たな提言がなされている.本稿は, これらの提言への反論を含め, 薪しい法律に基づく感染症医療のあり方について包括的に概説し, 日本における感染症医療の方向性を検証することを目的とする.
著者
西渕 光昭 山崎 伸二 竹田 美文
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

腸炎ビブリオの重要な病原因子である耐熱性溶血毒(TDH)をコ-ドする遺伝子(tdh)の発現を促進する調節因子(VpーToxR)を解析した。VpーToxRをコ-ドする遺伝子(VpーtoxR)はコレラ菌の病原因子発現調節因子(ToxR)の遺伝子と52%の相同性を有しており、推定アミノ酸配列も類似し、特に発現調節に関与すると推定される領域およびtransmembrane領域と考えられる部分では非常に強い売似性が認められた。大腸菌中で、クロ-ン化したtdh遺伝子とVpーtoxR遺伝子を共存させた系で、VpーToxRがtdh遺伝子(tdh1〜tdh4の中で特にtdh2およびtdh4)の発現を促進することを確認した。またtdh2遺伝子について、コ-ドン領域上流144bp付近の塩基配列がVpーToxRによる発現促進において重要な役割を果たしていることが明らかになった。ただし、ゲルシフト法によってVpーToxRの結合能を調べたところ、VpーToxRはコ-ドン領域のすぐ上流(68bpまで)に結合することを示唆する成績が得られ、さらに上流(144bp近付)の塩基配列は、結合したVpーToxRとの間の何らかの相互作用によってtdh2遺伝子の発現促進に関与しているのではないかと考えられた。VpーtoxR遺伝子プロ-ブを作製し、これを用いたハイブリダイゼ-ション試験により、この遺伝子はほとんどの腸炎ビブリオ菌株に存在することを明らかにした。AQ3815株を用いて、VpーtoxR遺伝子を特異的に不活化したisegenic変異株を作製した。この変異株と野生株との比較によって、VpーToxRによるtdh遺伝子の発現促進は、KPブロス中で菌を発育させた場合に特に顕著で、発現促進作用は転写レベル(mRNA)でおこっていることを聖らかにした。
著者
竹田 美文 山崎 伸二 濱端 崇 牧野 壮一
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

腸管出血性大腸菌は、ヒトだけではなく家畜からも多数分離されており、ウシやブタの腸管出血性大腸菌感染症は畜産業界では大きな問題となっている。本感染症の感染源は、主として食肉で感染した家畜の糞便中の腸管出血性大腸菌が何らかの経路でヒトへ感染すると考えられている。従って、家畜の腸管出血性大腸菌感染を予防できるワクチンの開発は畜産業界に有用であるばかりでなく、ヒトの腸管出血性大腸菌感染、それに引き続く出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群の予防にも有効である。本研究では、ブタの浮腫病の原因である腸管出血性大腸菌に対するワクチン株を構築し、その有効性を証明した。すなわち、浮腫病のブタから分離したベロ毒素(VT2eまたはVT2vp1)を産生する腸管出血性大腸菌について、抗原性は保有するが毒素活性の喪失した変異毒素を産生する変異株を作出した。まず、VT2vp1のAサブユニットN末端から167番目のグルタミン酸(E167)と170番目のアルギニン(R170)を、それぞれグルタミン(Q167)とロイシン(L170)に置換したVT2vp1変異毒素を産生するような遺伝子を作出した。この遺伝子と野生型の毒素遺伝子を相同組換えにより置き換え、変異株を作出した。この変異株は野生型の毒素と同様の抗原性は保持していたが、ベロ細胞を用いた試験により毒素活性が喪夫していた。また、この変異株の豚への毒力を野生株を対照にして調べた結果、病原性は喪失していた。この変異株をワクチン候補株として、感染防御能を調べたところ、変異株を投与した豚群(n=20)は浮腫病由来の野生株の投与に対して浮腫病の発症はみられなかったが、ワクチン株を投与しなかった豚群(n=20)では、12頭が浮腫病を発症し、死亡した。また、変異株投与豚において、血中IgG価および糞便中IgA価の上昇も確認された。
著者
藤田 晃三 吉河 道人 室野 晃一 村井 貞子 岸下 雅通 山崎 伸二 竹田 美文
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.1229-1236, 1994
被引用文献数
3

1981~90年に分離されたA群溶連菌670株について, 患者の背景と分離菌の性状を調べた.<BR>感染症の内訳は咽頭炎479, 狸紅熱133, 化膿性疾患35, 非化膿性合併症23で, 分離材料は咽頭スワブ655, 皮膚スワブや膿など15であった.発疹症を含めた咽頭炎の再燃は5.3%, 再発は13.4%の症例に認め, 再発エピソードの15.7%は同一のM血清型株によるものであった.発疹症に2回罹患した6例は, 2回目それぞれ前回と異なるM血清型株に感染し, その中4例は新たな型の毒素を産生する株に感染した.<BR>M血清型とT血清型の一致率は73.3%(同じT血清型を含む混合型まで入れると83.0%) であった.全体ではM12, 4, 1, 3, 28型の順に多く, M12, 4型が主流であったが, 年度によっては1, 3, 28型株の分離頻度が最も高かった.<BR>ペニシリン・セファロスポリン耐性株は認めず, erthromycin耐性株の分離率は1981年26.5%, 1982年18.4%であったが, 1983年以後激減し1986年以降0に近い.Chloramphenicol耐性もerythromycin耐性と同様で, tetracycline耐性株の分離率は60%から20%以下に年を追って減少した.
著者
竹田美文
雑誌
臨床と微生物
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-75, 1989
被引用文献数
2
著者
山崎 伸二 竹田 美文
雑誌
臨床と微生物 = Clinical microbiology (ISSN:09107029)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.785-799, 1996-12-24
被引用文献数
5
著者
塚本 定三 木本 達雄 マガリエス マルセロ 竹田 美文
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1538-1542, 1992
被引用文献数
3

付着性大腸菌 (局在性) の検出をNataro et al.が報告したDNA (EAF) プローブを用いたコロニーハイブリダイゼーション法で試み, HeLa細胞への付着性と比較した結果, EAFプローブ法は感受性, 特難において培養細胞付着性を調べる方法と比べて遜色なかった.そこで, ブラジルの小児下痢症患者および健康者おのおの126名を対象に, 付着性大腸菌の検出を試みた.EAF陽性の大腸菌は下痢症患者のうち29名 (23.0%), 健康者のうち15名 (11.9%) から検出されたが, そのうちのおのおの23名 (18.3%), 7名 (5.6%) から分離されたEAF陽性菌をまEPECの血清型に属するものであった.そのため, EAF陽性でEPECの血清型に属する大腸菌は下痢症との関連性が深いものと想像された.検出頻度の高い血清型は055: H-, O111: H2, O119: H6であるが, これらはすべてEPECの血清型嘱するもので, そのなかでも0111: H2は下痢症患者のみに検出されたため, 他の血清型に比べて病原性が強いと思われる.また, EAF陽性でEPECの血清型に属さないが, 検出頻度が高かったO88: H25は下痢原性が疑われる.