著者
山崎 伸二 飯島 義雄 塚本 定三 塚本 定三 OUNDO Joseph O. NAIR Gopinath B. FARUQUE Shah M. RAMAMURTHY Thandavarayan
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

インド、ケニアでの主要な下痢原因菌と考えられる下痢原性大腸菌とコレラ菌について解析した。下痢症患者便をマッコンキー寒天培地で培養し得られたコロニーからボイルテンプレートを作製しReal-time PCRで下痢原性大腸菌の病原因子を網羅的に解析した。インドでは、ipaH遺伝子陽性菌(腸管組織侵入性大腸菌)が最も陽性率が高く、次にeaeA遺伝子陽性菌(腸管病原性大腸菌)の順であったが、ケニアではelt遺伝子陽性菌(腸管毒素原生大腸菌)の陽性率が最も高く、次にaagR遺伝子陽性菌(腸管凝集性大腸菌)であった。我が国で陽性率の高いcdt遺伝子陽性大腸菌がインドやケニアではあまり検出されなかった。一方、コレラ菌に関しては、バングラデシュで見つかったハイブリッド型O1コレラ菌(エルトールバリアント)はインドでは1990年に既に分離されており1995年以降分離されたO1コレラ菌は全てハイブリッド型(エルトールバリアント)であることが明らかとなった。ケニアでのコレラの流行で分離されたコレラ菌もエルトールバリアントであり、エルトールバリアントがアフリカ、ケニアでも広く流行に関わっていることが明らかとなった。
著者
西渕 光昭 山崎 伸二 竹田 美文
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

腸炎ビブリオの重要な病原因子である耐熱性溶血毒(TDH)をコ-ドする遺伝子(tdh)の発現を促進する調節因子(VpーToxR)を解析した。VpーToxRをコ-ドする遺伝子(VpーtoxR)はコレラ菌の病原因子発現調節因子(ToxR)の遺伝子と52%の相同性を有しており、推定アミノ酸配列も類似し、特に発現調節に関与すると推定される領域およびtransmembrane領域と考えられる部分では非常に強い売似性が認められた。大腸菌中で、クロ-ン化したtdh遺伝子とVpーtoxR遺伝子を共存させた系で、VpーToxRがtdh遺伝子(tdh1〜tdh4の中で特にtdh2およびtdh4)の発現を促進することを確認した。またtdh2遺伝子について、コ-ドン領域上流144bp付近の塩基配列がVpーToxRによる発現促進において重要な役割を果たしていることが明らかになった。ただし、ゲルシフト法によってVpーToxRの結合能を調べたところ、VpーToxRはコ-ドン領域のすぐ上流(68bpまで)に結合することを示唆する成績が得られ、さらに上流(144bp近付)の塩基配列は、結合したVpーToxRとの間の何らかの相互作用によってtdh2遺伝子の発現促進に関与しているのではないかと考えられた。VpーtoxR遺伝子プロ-ブを作製し、これを用いたハイブリダイゼ-ション試験により、この遺伝子はほとんどの腸炎ビブリオ菌株に存在することを明らかにした。AQ3815株を用いて、VpーtoxR遺伝子を特異的に不活化したisegenic変異株を作製した。この変異株と野生株との比較によって、VpーToxRによるtdh遺伝子の発現促進は、KPブロス中で菌を発育させた場合に特に顕著で、発現促進作用は転写レベル(mRNA)でおこっていることを聖らかにした。
著者
竹田 美文 山崎 伸二 濱端 崇 牧野 壮一
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

腸管出血性大腸菌は、ヒトだけではなく家畜からも多数分離されており、ウシやブタの腸管出血性大腸菌感染症は畜産業界では大きな問題となっている。本感染症の感染源は、主として食肉で感染した家畜の糞便中の腸管出血性大腸菌が何らかの経路でヒトへ感染すると考えられている。従って、家畜の腸管出血性大腸菌感染を予防できるワクチンの開発は畜産業界に有用であるばかりでなく、ヒトの腸管出血性大腸菌感染、それに引き続く出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群の予防にも有効である。本研究では、ブタの浮腫病の原因である腸管出血性大腸菌に対するワクチン株を構築し、その有効性を証明した。すなわち、浮腫病のブタから分離したベロ毒素(VT2eまたはVT2vp1)を産生する腸管出血性大腸菌について、抗原性は保有するが毒素活性の喪失した変異毒素を産生する変異株を作出した。まず、VT2vp1のAサブユニットN末端から167番目のグルタミン酸(E167)と170番目のアルギニン(R170)を、それぞれグルタミン(Q167)とロイシン(L170)に置換したVT2vp1変異毒素を産生するような遺伝子を作出した。この遺伝子と野生型の毒素遺伝子を相同組換えにより置き換え、変異株を作出した。この変異株は野生型の毒素と同様の抗原性は保持していたが、ベロ細胞を用いた試験により毒素活性が喪夫していた。また、この変異株の豚への毒力を野生株を対照にして調べた結果、病原性は喪失していた。この変異株をワクチン候補株として、感染防御能を調べたところ、変異株を投与した豚群(n=20)は浮腫病由来の野生株の投与に対して浮腫病の発症はみられなかったが、ワクチン株を投与しなかった豚群(n=20)では、12頭が浮腫病を発症し、死亡した。また、変異株投与豚において、血中IgG価および糞便中IgA価の上昇も確認された。
著者
藤田 晃三 吉河 道人 室野 晃一 村井 貞子 岸下 雅通 山崎 伸二 竹田 美文
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.1229-1236, 1994
被引用文献数
3

1981~90年に分離されたA群溶連菌670株について, 患者の背景と分離菌の性状を調べた.<BR>感染症の内訳は咽頭炎479, 狸紅熱133, 化膿性疾患35, 非化膿性合併症23で, 分離材料は咽頭スワブ655, 皮膚スワブや膿など15であった.発疹症を含めた咽頭炎の再燃は5.3%, 再発は13.4%の症例に認め, 再発エピソードの15.7%は同一のM血清型株によるものであった.発疹症に2回罹患した6例は, 2回目それぞれ前回と異なるM血清型株に感染し, その中4例は新たな型の毒素を産生する株に感染した.<BR>M血清型とT血清型の一致率は73.3%(同じT血清型を含む混合型まで入れると83.0%) であった.全体ではM12, 4, 1, 3, 28型の順に多く, M12, 4型が主流であったが, 年度によっては1, 3, 28型株の分離頻度が最も高かった.<BR>ペニシリン・セファロスポリン耐性株は認めず, erthromycin耐性株の分離率は1981年26.5%, 1982年18.4%であったが, 1983年以後激減し1986年以降0に近い.Chloramphenicol耐性もerythromycin耐性と同様で, tetracycline耐性株の分離率は60%から20%以下に年を追って減少した.
著者
山崎 伸二 朝倉 昌博 アワスチ シャルダ
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

コレラ菌の細胞致死活性を有する3種類のコリックストキシン(ChxA)を型別しながら1度に検出できるPCR-RFLP法を構築し、敗血症患者由来株から新たなchxA遺伝子、chxAIVを見出した。ChxAを定量出来るELISA法を構築し、菌株間で毒素産生量にかなりばらつきがあることを明らかとした。ChxA高産生株と低産生株をマウスに投与したところ、高産生株の方が低産生株より強い致死活性を示した。以上の結果より、ChxAには少なくとも3つのバリアントが存在し、ChxAは下痢原性というよりもむしろ腸管外感染症の病原因子として関わっている可能性を示した。
著者
山崎 伸二 竹田 美文
雑誌
臨床と微生物 = Clinical microbiology (ISSN:09107029)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.785-799, 1996-12-24
被引用文献数
5