著者
吉田 奎介 白井 良夫 塚田 一博 川口 英弘
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

初年度と2年度にはMCPAとBOPの至適投与量に関する基礎的検討並びに農薬検出法の検討を行った。最終年度は、MCPAのBOP胆嚢発癌促進作用並びに胆石症患者胆汁中の農薬排泄の有無につき検討した。1. BOP長期投与によるハムスタ-胆道上皮の変化及びMCPA同時投与の影響: (1)BOP単独投与の効果;BOP20ppm含有水を摂取させ、20週で肝内に細胆管増生86.7%、異型上皮20.0%、肝外胆管に異型上皮6.7%、胆嚢に異型上皮6.7%の発生を認めた。(2)MCPA単独投与の効果:MCPA 4000ppm含有固形飼料摂取20週で肝内には細胆管増生を60.0%に認めたが、異型上皮の発現は認められなかった。(3)BOP,MCPA同時投与の効果:肝内には細胆管増生100%、異型上皮12.5%を認め、肝外胆管に上皮内癌6.3%、異型上皮31.3%を認めた。 小括:MCPA単独では胆道に異型上皮を誘発しなかったが、BOPによる異型上皮の発生を有意に(P〈0.05)促進し、少数ながら胆管癌の発生を誘発した。今回の実験では、胆嚢に異型上皮は発生しなかった。2.人胆汁中農薬の検出について: 人胆汁中にCNPが1pg/μ1、p,p'ーDDTO.8pg/μ1及びBHC(痕跡)が検出された。しかしMCPAは検出されなかった。〔結論〕MCPAは、BOPによる胆嚢の異型上皮の発生を促進しなかったが、胆管ではBOPによる異型上皮の発生を促進した。この結果より、MCPAは胆道上皮に対して発癌プロモ-タ-作用を持つ可能性が示唆された。人胆汁中では、MCPAは検出されなかった。今後、土中ならびに人体内でのMCPAの分解・代謝過程を明らかにし、MCPAならびにその代謝産物の胆汁中排泄の有無を確認したい。疫学上胆道癌死亡率と関連性有りとされたCNPが胆汁中に検出されたことより、その発癌作用についても検討する必要がある。使用禁止後長期経過した農薬が未だに人胆汁中に検出されたことから、体内残留農薬の発癌への影響についても検討が必要と考えられた。
著者
山崎 一麿 新井 英樹 川口 誠 塚田 一博
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.184-188, 2007-05-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
13

症例は76歳, 男性. 平成17年夏, 炎天下での山仕事からの帰宅後より, 四肢の脱力感及び歩行困難が出現.翌日,屋内で倒れているところを発見され救急車にて搬送された,熱中症による横紋筋融解症に合併した急性腎不全と診断され透析治療が開始されたが,その後右上腹部痛を認めるようになり入院第5病日に外科へ紹介された.腹部CT,MRI検査により,胆嚢内腔にガスと液体からなる鏡面像,胆嚢壁内と胆嚢周囲に拡がるガス像そして胆嚢周囲から右側傍結腸溝に及ぶ膿瘍が指摘された.以上より気腫性胆嚢炎の穿孔と診断し,同日胆嚢摘出術とドレナージ術を施行した.横紋筋融解症に合併した気腫性胆嚢炎の報告は過去になく,希な症例と考えられたので若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
奥村 知之 塚田 一博 嶋田 裕
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

食道癌細胞株にmiR-203発現ベクターを導入したところp63発現増強を伴うp75NTR陽性細胞数は増加した。p75NTR陰性細胞ではp63が減弱しインボルクリンが増強した。コロニ―形成能は低下しマウス皮下移植腫瘍は有意に縮小し重層扁平上皮構造を示し中心に基底膜分子ラミニンとp75NTRの発現を認めた。食道扁平上皮癌細胞株においてmir203導入によりp75NTR陽性細胞の自己複製が維持されつつ分化が誘導され腫瘍抑制効果を認めた。mir203導入により癌幹細胞の悪性度が低下した可能性が考えられ、癌幹細胞を標的とした新規治療への応用の可能性が示唆された。