著者
山田 陽城
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.56-70, 2018 (Released:2018-03-14)
参考文献数
46
被引用文献数
1

Nature is a very important resource for not only new drug discovery but also application of traditional medicines. Kampo (Japanese traditional) medicines have been used as the traditional formula in which multi-active ingredients may attack multiple target sites to recover complicated symptoms caused by disturbance of the body systems such as immune, neural and endocrine systems. Therefore, their multilateral actions are suitable to treat multifactorial diseases. Kampo medicines are using for the treatment depending on the patient’s clinical situation, either separately or to complement modern western medicine in Japan. Present review describes the concept and characterization of Kampo medicines, and introduces our pharmacological studies of Kampo medicines to clarify their action mechanism and active ingredients. The results may contribute for more evidence-based clinical applications of Kampo medicines.
著者
加瀬 七夏美 中村 友紀 植木 毅 桑原 直子 松尾 侑希子 三巻 祥浩 立川 英一 山田 陽城
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】コルチゾールは、血糖上昇、蛋白質異化促進、脂質分解促進、抗炎症や免疫抑制作用を有する生命維持に必須のホルモンである。生体がストレスに晒されると視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系が活性化され、コルチゾールが大量に産生されてストレスに拮抗する。一方で過度なストレスによってHPA系機能が亢進され続けるとネガティブフィードバック機構が破綻し、過剰に分泌されたコルチゾールが精神疾患や代謝性疾患、悪性腫瘍、記憶障害などを引き起こす。近年、難治性うつ病患者ではHPA系機能障害が起こり、コルチゾール濃度の顕著な増加が持続されていることが知られている。演者らは漢方薬の香蘇散に見出された抗うつ様作用に、HPA系機能の改善作用が関わっていることを既に報告した。また先に、新たなHPA系機能改善物質を探索するため、35種類の漢方薬について副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激によるコルチゾール産生に対する影響をスクリーニングし、生薬ダイオウが活性に関与することを見出した。今回、引き続きコルチゾール産生抑制活性を指標にダイオウの成分探索を行ったところ、活性成分を単離・同定したので報告する。【方法・結果】ダイオウ(日局、5.0 kg)の水抽出エキス(575 g)をDiaion HP-20カラムクロマトグラフィーに付し、順次極性を下げながら溶出させ5個の粗画分に分画した。このうち最も強い活性が認められたエタノール溶出画分について、各種クロマトグラフィーを用いて分離・精製を行い、6種のアントラキノン類を単離した。単離された化合物のACTH刺激によるウシ副腎皮質細胞のコルチゾール産生抑制活性を評価した結果、2種の化合物が強い活性を示した。
著者
大村 智 供田 洋 乙黒 一彦 山田 陽城 宇井 英明 清原 寛章 塩見 和朗 林 正彦
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

我々は天然物由来の新規な構造の抗マラリア剤を発見するために探索研究を行った。4年間の研究期間で、天然物素材等12,832検体を北里研究所のスクリーニングセンターに提供し、in vitroでの抗マラリア活性の評価を行った。その結果、選択毒性の高い抗マラリア活性を有する天然物素材として18種を活性物質取得候補とした。微生物素材からの探索の過程で、放線菌K99-0413株、KP-4050株、K99-5147株、KP-4093株(後に、高生産株OM-0060株を選択)及び糸状菌FKI-0266株の生産する抗マラリア活性物質は各々既知抗生物質のX-206、K-41、polyketomycin、borrelidin及びleucinostatin Aであると同定された。また、抗生物質ライブラリーからは、既に当研究所で発見されたtakaokamycin (hormaomycinと同定)及びoctacyclomycinに抗マラリア活性があることが分かった。さらに、X-206、K-41及びborrelidinはin vivoで既存の抗マラリア剤(artemether, artesunate及びchloroquine)よりも優れた効果を示した。特に、K-41及びborrelidinは新規な骨格の抗マラリア剤としてのリード化合物の可能性があり、今後開発に向けて詳細を検討する必要がある。植物素材からの探索の過程では、ジンチョウゲ科植物根部に含まれる抗マラリア活性物質2種を精製し、既知のbiflavonoid誘導体のsikokianin B及びCあることを同定した。上記の化合物類の抗マラリア活性は新知見である。また、新たにな素材としての海洋生物素材、天然物由来の活性物質誘導体については、現在抗マラリア活性の評価中である。他の選択菌株及び和漢生薬からの抗マラリア活性物質についても現在検討中である。
著者
伊藤 直樹 花輪 壽彦 及川 哲郎 山田 陽城 矢部 武士 永井 隆之
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題で我々は、新たな生理的な活性として、OX-Aに海馬神経系前駆細胞の増殖促進作用を介した抗うつ様作用が存在する可能性を初めて示唆した。このことは新たな作用機序を有する抗うつ薬の開発に役立つものと考えられる。またこれまでに、漢方方剤である香蘇散が脳内OX-A発現挙動に対して作用を示した結果が得られていることから、本研究課題で得られた結果は、香蘇散の抗うつ様作用メカニズムの探索に役立つと考えられた。
著者
大村 智 中川 彰 山田 陽城 秦 藤樹 古崎 昭雄 渡辺 得之助
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
CHEMICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.931-940, 1973
被引用文献数
1 118

A series of new antibiotics, Kinamycin A, B, C, and D which are mainly effective against gram-positive bacteria, were extracted with chloroform from the broth filtrate of Streptomyces murayamaensis sp. nov. HATA et OHTANI. Kinamycin C (I), C<SUB>24</SUB>H<SUB>20</SUB>O<SUB>10</SUB>N<SUB>2</SUB>, m/e 496 (M<SUP>+</SUP>), was determined to have an 8-hydroxynaphthoquinone skeleton, nitrile, acetoxyl, and tertiary methyl groups from its ultraviolet (UV), infrared (IR), and nuclear magnetic resonance (NMR) spectra, and was further found to have a unique structure of N-C-N from some chemical reactions and X-ray diffraction. Structure relationship among I and other components A, B, and D was assumed to be due to the difference in the number and position of the acetoxyl group from analyses of IR, NMR, and mass spectra of their acetylated compounds. The antimicrobial activity of the four kinamycins increases with the decreasing number of acetoxy group, in the order of kinamycin C, A, D, and B. In addition, some derivatives obtained during structural studies on I were found to have nearly equal or increased antimicrobia1 activity compared with I and kinamycin D (XI).
著者
荒井 啓行 鈴木 朋子 佐々木 英忠 花輪 壽彦 鳥居塚 和生 山田 陽城
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.212-215, 2000-03-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
10
被引用文献数
5 10

Choline acetyltransferase 活性増強作用と神経栄養因子様作用を有する漢方処方の加味温胆湯 (KUT) を用いて, Alzheimer 病 (AD) への治療介入を試みた. 認知機能は, Folstein らの Mini-Mental State Examination (MMSE) スコアで評価し, その年変化を指標とした. Baseline MMSEは, KUT群 (20例) で18.6±6.8, コントロール群 (32例) で20.8±5.6であった. KUTは北里研究所東洋医学研究所薬局処方集第3版に基づき, 煎出し, 平均約1年間服用した. 悪心, 嘔吐, 下痢などのコリン作動性神経刺激症状は認められなかった. コントロール群では, MMSE年変化は4.1ポイントの悪化であったのに対して, KUT群では1.4ポイントの悪化であった (p=0.04). KUTの効果は漢方医学的ないわゆる証やApoE遺伝子型に依存しなかった. KUT投与前後で脳脊髄液tau値やAβ1-42値に有意な変動は見られなかった. KUTは, 少なくとも初期から中期にかけてのADにおいて進行抑制効果を有するものと考えられた.