著者
木原 崇智 多田野 寛人 櫻井 鉄也
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.51-60, 2008-06-26

大規模非エルミート疎行列を持つ線形方程式Ax = bの効率的な解法として,前処理つきKrylov部分空間反復法がある.同反復法は前処理部分に多くの計算時間を要する場合が多い.精度混合型Krylov部分空間反復法は,前処理演算を単精度で行っても最終的に倍精度の解が得られる方法である.多項式前処理を適用した場合には,前処理は行列ベクトル積の繰返しで得られる.一方,Cell Broadband Engineは単精度演算においてきわめて高い演算性能を持つマルチコアプロセッサである.本論文では,Cell Broadband Engine上での単精度行列ベクトル積の実装方法とその高速化手法について示し,精度混合型Krylov部分空間反復法をCell Broadband Engine上で実装する場合の性能を,数値実験により評価する.
著者
中野 博生 轟木 義一 多田野 寛人
出版者
日本シミュレーション学会
雑誌
日本シミュレーション学会論文誌 (ISSN:18835031)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.56-63, 2023 (Released:2023-09-13)
参考文献数
10

MPIに基づいて並列化したジョブでプロセス数が多いものを富岳で実行したときの挙動を調べた.特に,ジョブのメモリ消費量の変化に注目する.MPIプロセス数が大きい場合,MPIの初期化の実行で少なくないメモリ消費が発生,増加していく.並列化度がさらに大きくなると,ジョブは最終的にメモリ枯渇に至る.その結果我々は,富岳で全系実行を行う場合でも実現できるMPI並列数は最大で約350万であることを明らかにした.MPIの並列度数は使用する計算ノード数に応じて設定する必要があるが,富岳の大規模ジョブとして実行する場合,ユーザーのコードに明示的に記述して利用できるメモリがかなり制限されることに注意が必要であることも明らかにした.
著者
小笠原 匡 多田野 寛人 櫻井 鉄也 伊藤 祥司
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:09172246)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.193-205, 2004
参考文献数
8
被引用文献数
1

We consider a method to solve several shifted linear systems (A+σl)x = b with shift parameter σ. Krylov subspace for shifted linear systems is not depend on the parameter σ, therefore we can solve several shifted linear systems simultaneously without generating Krylov subspace for each parameter cr. In this paper, we show that shifted linear systems appear in an eigensolver using numerical integration. We applied Krylov subspace methods for shifted linear systems in this eigensolver. We have also presented some numerical examples illustrate the efficiency of the method.
著者
多田野 寛人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

タンパク質をコードしない非翻訳性RNA(ncRNA)は様々な生命現象に関与している。近年、200塩基以上の長さの長鎖のncRNAが多数同定されており、その一部の機能が明らかにされている。また、真確生物の複雑性とncRNAの種類数との関連が指摘されている。従って、高次な生物の種特異的な形質の発現に長鎖ncRNAが重要な役割を担う可能性があるが、これまでにそれが検証された例はほとんどない。私が研究対象とするセイヨウミツバチは社会性昆虫であり、労働カーストである雌の働き蜂は羽化後の日齢に応じてコロニー維持の様々な仕事を分担する。私はこれまでに働き蜂の齡差分業を制御する候補遺伝子として、働き蜂脳内において分業依存に発現変動するミツバチに固有な新規長鎖ncRNA遺伝子、Nb-1を同定している。本研究課題において私は、Nb-1 RNAが社会性を含めたミツバチの多彩な形質発現に関与する可能性を検証する目的で、ミツバチの生活史の様々な局面におけるNb-1 RNAの発現を解析してきた。しかし、Nb-1 RNAは新規なncRNAであり、生体機能については全く不明であった。そこで本年度では、はじめにRNAiをもちいたNb-1 RNAの発現抑制系を構築した。次に、Nb-1の分子経路の下流において機能する遺伝子を検索するために、マイクロアレイによりNb-1の発現抑制による遺伝子発現プロファイルの変化を解析した。その結果、Nb-1により発現が促進される候補として、複数の転写因子遺伝子を同定した。これら候補遺伝子のショウジョウバエのオーソログは発生運命決定や分化を含む、発生のイベントにおいて重要な機能を担うことから、Nb-1はこれらの転写因子遺伝子群の発現制御を介してミツバチの特徴的な形質の発現に寄与していることが示唆された。
著者
櫻井 鉄也 北川 高嗣 多田野 寛人 佐々木 建昭 長嶋 雲兵 池上 努 立川 仁典
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では, 次世代計算機環境における大規模シミュレーションを実現するために, 特に並列化が困難な内部固有値問題の解法を対象として, 複素周回積分を用いた固有値解法の実用技術を開発した.ここで開発した解法を, マルチコアによる大規模並列環境向けのソフトウェアとして実装した.開発したソフトウェアを複数の応用分野の問題を対象として適用し, 実用性を想定して性能改善を行った.
著者
多田野 寛人
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題では,複数本の右辺ベクトルをもつ連立一次方程式を解くためのBlock Krylov部分空間反復法の高速・高精度アルゴリズムの研究を行った.本研究課題を通してBlock Krylov部分空間の安定化手法を開発し,同法の計算量削減による高速化を行った.開発手法を素粒子物理学分野の格子QCD計算に適用し,有効性を確認した.
著者
生野 壮一郎 神谷 淳 齋藤 歩 多田野 寛人 伊東 拓
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,有限要素法や境界要素法の問題点を克服する手法として注目されている,有限節点法(FiniteNodeMethod,FNM)と境界節点法(BoundaryNodeMethod,BNM)の領域形状表現と補間関数の構成を完全分離することにより,新しい解法スキームを考案し,電磁界解析等の分野への同法の適応可能性を調べることに成功した.その際,FNM,BNMの新しい定式化を完了し,様々な境界条件を付加することが可能となった.また,完全メッシュレス法の応用技術として,MeshlessTimeDomainMethod(MTDM)の開発を行い,任意形状導波路内の電磁波伝播解析を行った.