著者
大井 けい子 富田 真理子 高村 寿子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.220-225, 2002

妊娠期にある夫婦201組の性生活の認識・性行動欲求レベルおよび性生活の満足度に関する意識調査を行った.結果,妊娠期にある夫婦でも,性の特質である「生殖性」を認識している者は半数以下と少なく,夫婦の多くが「連帯性」を認識していた.男女で有意差のあった項目は「快楽性」および「性役割確認」と「義務と責任」であり,性役割や義務と責任を認識している男女は少なかった.夫の快楽性の認識は妻の妊娠などにあまり影響されず,変化が少ないと推察された.また,認識の男女差は行動レベルに反映され,さらに性生活の満足度に反映されていた.性行動欲求レベルでは妊婦の104人(51.7%),夫の61人(30.3%)は「傍にいればいい」としていたが妊婦の16人(8.0%),夫の65人(32.3%)は「セックスする」ことを性行動欲求レベルとしていることがわかった.妊娠期の性生活の満足度は妊婦が有意に高く,夫の気遣いや妊婦のペースに合わせてくれることに満足していた.一方で,セックスの回数が少なくなったことを不満と思う妊婦は全妊婦の約5%に見られた.また,34.3%の夫は性生活に何らかの不満を持っていた.
著者
大関 信子 大井 けい子 佐藤 愛 葛西 紗幸 池田 礼美
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.213-219, 2012

本研究は,産後1年未満の母親を対象に次子を産みたいがが産まない理由を明らかにすることを目的とした.本研究は,調査結果を基に周産期ケアや母子保健サービスの向上を図り,母親の次子出産意欲向上へつなげるものである.A県在住の1,8OO名の母親へ質問紙調査を実施した.有効回答499名のうち,次子を「望まない」と答えた母親はI4.6%であった.最も重要な因子が経済的側面であった.また,「今回望まない妊娠・出産」と次子を「望まない」とに関連が見られた.女性の心理社会的観点から,以下のケアが次子出産意欲へつながる可能性か示唆された.1.望まない妊娠をした母親に対しては.児の受容と子を持つことの喜びを感じることができるようなケア.2.妊娠・出産がつらく卜ラウマになっている母親に対しては,異常の早期発見と予防,満足感が得られる出産体験となるケア.3.子育てに自信が持てない母親には,子育て支援及び子育ての喜びを発見できるケア.4.経済状況により次子を「望まない」理由が異なることから,母親の状況に応じたケアを優先させることが重要である.
著者
大関 信子 大井 けい子 佐藤 愛
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.189-196, 2014-11-30 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
1

【目的】本研究は,乳幼児を持つ母親と父親のメンタルヘルス状態と夫婦愛着,及び自尊感情との関連を明らかにすることを目的とした.本研究の意義は,母親のメンタルヘルス向上の支援策の検討に役立てることである.【方法】簡易サンプル法を用いた無記名自己記入式調査用紙を用いた横断的研究で,A県内在住で6歳未満の子供を持つ父母552組に調査票を配布し郵送にて回収した.調査内容は,社会的背景の他にメンタルヘルスの測定には「精神健康度調査票」(General Health Questionnaires:以下GHQ12),夫婦愛着を測るために「夫婦関係尺度」(Quality Marriage Index:以下QMI),自尊感情を測るため「自尊感情尺度」(Self Esteem Scale:以下SES)を用いた.統計分析は,記述統計や重回帰分析を用いた.【結果】母親のGHQ得点とQMI得点,SES得点とに有意な相関関係が見られた.「父親の子育てに満足」の要因は母親のQMI得点に最も関連していた.母親のQMI得点は母親のSES得点に最も関連し,このSES得点は母親のGHQ得点に最も関連していた.父親にも同様な結果が得られ,「母親の子育てに満足」の要因が父親のQMI得点,SES得点そしてGHQ得点に有意な関連がみられた.【考察】母親,父親とも夫婦愛着が直接メンタルヘルスに関連するのでなく,自尊感情を介して影響することが明らかになった.父親の育児参加は,母親が認知する夫婦愛着を促進し,夫婦愛着が母親の自尊感情を高め,結果的に母親のメンタルヘルス向上に関連するとの示唆を得た.