著者
北野 哲司 小島 清嗣 永田 茂 大保 直人 石田 寛
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.393-396, 2001

名古屋市及びその周辺地域には, 都市ガス供給設備の地震安全性確保を目的として103台の地震計が設置されており, 1997年愛知県東部地震 (M5.8), 1998年岐阜県美濃中西部地震 (M5.4) 及び2000年三重県中部地震 (M5.5) の地震動が観測されている.本論文では, これら高密度地震観測網で得られた地表観測記録と対象地域内の数箇所で実施した地質調査データを用いてせん断波速度Vsが500m/s程度の工学的基盤における広域の地震動予測を行った. さらに, 地表の観測記録及び工学的基盤における推定地震動から, 中小地震時の表層地盤を対象とした加速度応答スペクトル (5%減衰) の増幅倍率 (以下では応答スペクトル比と呼ぶ) の広域評価を行った.
著者
大保 直人 古谷 俊 高松 健
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.609-612, 1999 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6

地形・地盤急変部を横切る地下構造物の地震時挙動の解明は、地下構造物の耐震設計にいて重要な課題である。近年、シールドトンネルが断層を横断して施工される事例も多くなり、耐震設計を行う上で地震時挙動の把握の必要性が議論されつつある。本論文では、武山断層を欄新して施工された共同溝 (シールドトンネル) のトンネル軸方向で観測された地震波と解析結果の報告に引き続き、トンネル断面方向の地震波の解析と解析モデルを作成し、断層から10m-20m離れた位置でのトンネル断面方向の地震時挙動を解明、さらにトンネル断面方向の応答性状を明らかにした。
著者
山崎 文雄 大保 直人 黒田 修一 片山 恒雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.519, pp.211-222, 1995-07-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
25

EPSを裏込めに用いたコンクリート擁壁と近接する重力式コンクリート擁壁において, 地震観測が行われている. 本文では, この地震観測システムを紹介するとともに, 得られた記録について整理し解析を行った. 記録から, EPS部は低振動数で盛土部とほぼ同様の震動性状を示し, アンカーには張力がほとんど作用していないことが明らかになった. また, 擁壁-EPS-盛土から成る系をFEMでモデル化し, 地震応答解析を行った. これらの観測および解析結果に基づいて, EPS擁壁の滑動および転倒に対する安定性を検討した. その結果, 現行の擁壁の安定計算法をEPS擁壁に適用すると, 安全率が極端に小さくなるという矛盾が指摘された.
著者
安田 進 石川 敬祐 村上 哲 北田 奈緒子 大保 直人 原口 強 永瀬 英生 島田 政信 先名 重樹
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2016年熊本地震により阿蘇のカルデラ内では地盤が帯状に陥没するグラーベン(帯状の陥没)現象が発生し、家屋、ライフラインなどが甚大な被害を受けた。このメカニズムを知り復旧・対策方法を明らかにするため平成29年度から3年間の計画で研究を始めた。平成29年度は、まず、現地踏査や住民からのヒアリングなどを行って被災状況の把握を行った。その結果、広い範囲で大規模に陥没が発生していること、その範囲はカルデラ内に約9000年前の頃に形成されていた湖の範囲にかなり一致することが分かった。次に広域な地盤変状発生状況を調べるため、熊本地震前後の複数の陸域観測衛星画像(合成開口レーダー画像)を使って干渉SAR画像から地盤変動量(東西・南北・垂直方向の3成分)を求め、それを基に検討を行った結果、陥没被害が甚大だった狩尾、内牧、小里、的石などの地区では数100mから2㎞程度の区域内で最大2~3mもの変位が発生したことが明らかになった。この局所的な変位によって水平方向の引張り力が作用し、帯状の陥没が発生したのではないかと考えられた。次に、既往の地盤調査結果を収集整理し、また、表層地盤状況を連続的に調べるため表面波探査を行った。その結果、陥没区間のS波速度は遅く、水平方向の引張り力で表層が緩んだことが明らかになった。一方、深い地盤構造を調べるために微動アレイ観測を行ったところ、陥没区間では数十mの深さまでS波速度が遅い軟弱層が堆積していると推測された。そこで、より詳細に調べるために4カ所でボーリングを行った結果、陥没区間の直下では17m~50mの深さに湖成層と推定される軟弱粘性土層が堆積していることが判明した。また、湖成層下面はお椀状に傾いていた。したがって、この湖成層が地震動によって急速に軟化してお椀の内側に向かってせん断変形し、その縁の付近で引張り力が働いて陥没が発生した可能性が浮上してきた。