著者
中山 和弘 大坂 和可子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、患者が治療法や療養生活の選択において、エビデンスに関する情報を得られて、自分の価値観をつないで意思決定できるガイド(ディシジョン・エイド)を開発することを目的とした。難しい決定の1つである乳がんの術式選択に焦点をあてディシジョン・エイドを開発した。開発過程では、1)患者のニーズ把握、2)試案作成、3)体験者による内容評価、4)医師と看護師の確認、を行った。手術を受ける予定のある乳がん女性にディシジョン・エイドを提供し評価を行った結果、意思決定ガイドの提供により意思決定の葛藤の減少に効果があった。
著者
鈴木 久美 大畑 美里 林 直子 府川 晃子 大坂 和可子 池口 佳子 小松 浩子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.32_suzuki_20171120, 2018-01-01 (Released:2018-02-09)
参考文献数
23

要 旨 目的:本研究の目的は,乳がんおよび乳房自己検診,マンモグラフィ検診に対する健康信念を高めて行動変容を促進するために,乳がん早期発見のための乳房セルフケアを促す教育プログラムを実施し,その効果を明らかにすることとした.方法:対照群を置かない前後比較の介入研究デザインを用いた.20 歳以上で乳がん既往のない女性42 名を対象に,教育プログラムを乳がん体験者と協働のもと実施した.介入効果の検討は,定期的乳房自己検診およびマンモグラフィ検診の実施状況,日本版Champion Health Belief Model Scale(CHBMS)を用いて,介入前後で評価した.結果:対象は,平均年齢50.6 歳(SD=11.5)で,有職者が59.5%,乳腺疾患のある者が16.7%だった.定期的乳房自己検診実施率は,介入前21.4%に比べ介入後1 年で54.8%(χ2 値=9.389, p=0.002,効果量w=0.602)と有意に高かった.マンモグラフィ検診受診率でも,介入前23.8%に比べ介入後1 年で47.6%(χ2 値=8.100, p=0.004,効果量w=0.569)と有意に高かった.日本版CHBMS の「乳房自己検診の自己効力感」は,介入前後で有意差が認められ(F 値=34.080, p<0.001,効果量f=0.586),介入前よりも介入後1 カ月,6 カ月,1 年で得点が有意に高かった.また,90%以上の者が,プログラムを満足かつ有用と評価し,内容や方法も適切であると回答した.結論:本プログラムは,対象者の「乳房自己検診の自己効力感」を高め,乳房自己検診,マンモグラフィ検診への動機づけを強化し,定期的乳房自己検診実施率およびマンモグラフィ検診受診率を高める効果があることが示された.
著者
大坂 和可子 山内 英子
出版者
一般社団法人 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会
雑誌
Oncoplastic Breast Surgery (ISSN:24324647)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3-4, pp.51-58, 2018-12-28 (Released:2018-12-28)
参考文献数
21

早期の乳癌と診断された女性は, しばしば乳房部分切除術か乳房全摘術のいずれかを選択することができる。加えて, 乳房再建術も選択肢の1つとして考える女性が増えている。どの方法が最も適切かは, 利点や害, 二次障害のリスクなどを踏まえ評価する必要があるものの, 多くの女性が, 何が最もよい方法か不確かであると感じており, 決定プロセスに参加するための支援を必要としている。シェアド・ディシジョン・メイキング (shared decision making ; SDM) は, 乳癌治療において重要性を増しており, 選択肢の情報などを掲載したディシジョンエイドを活用することでSDMを促進することができる。本稿では, 意思決定の3つのモデルの歴史的推移と, 乳癌手術方法において, SDMを補助するディシジョンエイドの研究について概観する。
著者
大坂 和可子 青木 頼子 江藤 亜矢子 北 奈央子 有森 直子 中山 和弘
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.334-340, 2019 (Released:2020-03-14)
参考文献数
22
被引用文献数
2

目的:本研究の目的は,患者の意思決定の葛藤をスクリーニングするSURE(Sure of myself; Understand information; Risk-benefit ratio; Encouragement)test日本語版を,言語的妥当性を踏まえ開発することである.方法:SURE test日本語版は,第1段階:2名による順翻訳,第2段階:順翻訳統合,第3段階:2名による逆翻訳,第4段階:研究者協議(暫定版作成),第5段階:一般市民,医療者への調査,第6段階:再検討,を経て開発した.結果:暫定版作成後,第5段階の一般市民と医療者32名の調査において,「わかりやすい」と回答した割合は各項目で47%から78%であった.第6段階にて言語的妥当性を再検討し,日本語版を確定した.結論:一連の過程を経て,言語的妥当性を踏まえたSURE test日本語版を開発した.
著者
鈴木 久美 小松 浩子 林 直子 片岡 弥恵子 樺澤 三奈子 大坂 和可子 大畑 美里 池口 佳子 大林 薫
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、乳がん検診受診率の向上をめざし、同意の得られた成人女性33人を対象に乳房セルフケア促進プログラムを実施し、妥当性を評価した。その結果、介入前に比べ介入後1年で、40歳以上の定期的マンモグラフィ受診者は26.1%から60.9%(p=0.008)、30歳以上の定期的自己検診実施者は21.2%から57.6%(p=0.004)と有意に改善した。また、85%以上の参加者は、プログラムに対して満足かつ有用と回答した。以上の結果から本プログラムは妥当であると考えられた。