著者
井森 萌子 常川 祐史 片岡 沙耶 伊藤 雅隆 大屋 藍子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.23-32, 2021-01-31 (Released:2021-05-18)
参考文献数
14

本研究は、先延ばし傾向のある大学生を対象に、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)が先延ばしに与える影響について、先延ばしの心理指標と行動指標の両側面から検討することを目的とした。対象者47名を60分のACTのプログラムを行う実験群、プログラムは行わない統制群に振り分けた後、先延ばしの行動指標として、7日間の課題達成率、先延ばしの心理指標として先延ばしを測定する質問紙への回答をプログラムの前後に求めた。同時に、ACTのプロセス指標であるFFMQとAAQ-IIも測定した。四つの指標の変化を分析した結果、実験群では課題達成率、先延ばし尺度がともに改善されたが、ACTのプロセス指標は変わらなかった。ACTに基づくプログラムが心理面、行動面ともに先延ばしの改善に効果的である一方、効果のメカニズムについては検討していく必要があることが示唆された。
著者
大屋 藍子 槇野 久士 孫 徹 橡谷 真由 玉那覇 民子 大畑 洋子 肥塚 諒 松尾 美紀 河面 恭子 藤井 紀子 金子 春恵 河合 幸枝 福島 佳織 万福 尚紀 細田 公則 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.748-754, 2019-12-30 (Released:2019-12-30)
参考文献数
19

本研究は,糖尿病に対する回避の程度とセルフケア行動の関連を確認し,心理的柔軟性のパターンによってセルフケア行動に違いがあるか検討を行うことを目的とした.124名の2型糖尿病患者に対し,糖尿病に対する心理的態度やセルフケア行動の程度について質問紙調査を実施した.その結果,糖尿病に対する回避の程度が高い者は糖尿病に関する心理的負担が高く,情動的摂食や外発的摂食の傾向も高かった.また,階層的クラスター分析を行った結果,行動先行型,非行動型,行動柔軟型の3つのクラスターが生成された.中でも人生の価値が明確でそれに応じた行動がとれるが,不安や思考への適切な対処が難しい「行動先行型」の患者は,日常での運動頻度が高い一方,心理的負担や情動的摂食の程度も高く,心理的問題の存在が示唆された.2型糖尿病患者には心理的状態に応じたセルフケア行動の特徴があり,それを考慮した糖尿病教育が必要であることが示唆された.
著者
大屋 藍子 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.30-39, 2016-08-25 (Released:2017-08-25)
参考文献数
19

研究の目的 本研究は、野菜摂取行動に対するパーセンタイルスケジュールが大学生の野菜摂取行動の変動性を増大させるかどうか、また食習慣が改善するかどうか検討した。実験デザイン 参加者間多層ベースラインデザインとABABデザインを組み合わせて用いた。場面 参加者は様々な野菜を摂取するよう教示を受け毎日ウェブアンケートの回答が求められた。参加者 野菜摂取が不足していると感じている7名の大学生がプログラムへ参加した。介入 ベースラインフェイズでは、参加者は毎日その日に摂取した野菜品目名をウェブアンケートへ回答した。介入フェイズでは、ウェブアンケートに加え、パーセンタイルスケジュールが実施された。その日摂取した野菜の種類が直前1週間の野菜摂取を基に算出した基準値より少なかった場合、それを称賛するメッセージが電子メールで送信された。行動の指標 野菜摂取行動に関する異反応数を行動変動性の指標として用いた。またDIHAL.2 (Diagnostic Inventory of Health and Life Habit)と言語報告を食習慣の改善の指標として用いた。結果 一部の参加者において、介入フェイズで異反応数が増大し、食習慣の改善が見られた。結論 野菜摂取行動の拡大においてパーセンタイルスケジュールは明確な効果を示さなかったが一部の参加者に対しては有効であった。
著者
村山 恭朗 大屋 藍子
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.40-46, 2020 (Released:2021-09-08)
参考文献数
42
被引用文献数
1

Previous studies have reported that individuals with eating disorders (EDs) are more likely to use maladaptive emotion regulation strategies (ERS), and therefore less likely adaptive ERS than controls without EDs. However, these prior studies examined the differences in frequencies of ERS between individuals with EDs and those without EDs without controlling for depression and anxiety, which are known to be associated with symptoms of EDs and thus may influence the differences in ERS levels. Therefore, the current study investigated the differences in frequencies of using ERS (including rumination, brooding, reflection, cognitive reappraisal, and emotion suppression) between females with and without EDs, while controlling for depression and anxiety. A total of 2000 female adults (aged 20-59 years) completed a battery of online self-report measures. Analyses of covariance indicated that patients with EDs used ruminative strategies (rumination, brooding, and reflection) more frequently than females without EDs. The effect sizes of these differences were small, whereas the effect sizes regarding levels of depression and anxiety were large. In contrast, regarding cognitive reappraisal and emotion suppression, no significant differences were found between the two groups. These results suggest that higher levels of ruminative thoughts patients with EDs may not be cognitive symptoms stemming from EDs as previously understood, but instead from depressive and anxiety symptomatology.
著者
村山 恭朗 大屋 藍子
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
pp.2020002, (Released:2021-02-11)
参考文献数
42
被引用文献数
1

Previous studies have reported that individuals with eating disorders (EDs) are more likely to use maladaptive emotion regulation strategies (ERS), and therefore less likely adaptive ERS than controls without EDs. However, these prior studies examined the differences in frequencies of ERS between individuals with EDs and those without EDs without controlling for depression and anxiety, which are known to be associated with symptoms of EDs and thus may influence the differences in ERS levels. Therefore, the current study investigated the differences in frequencies of using ERS (including rumination, brooding, reflection, cognitive reappraisal, and emotion suppression) between females with and without EDs, while controlling for depression and anxiety. A total of 2000 female adults (aged 20-59 years) completed a battery of online self-report measures. Analyses of covariance indicated that patients with EDs used ruminative strategies (rumination, brooding, and reflection) more frequently than females without EDs. The effect sizes of these differences were small, whereas the effect sizes regarding levels of depression and anxiety were large. In contrast, regarding cognitive reappraisal and emotion suppression, no significant differences were found between the two groups. These results suggest that higher levels of ruminative thoughts patients with EDs may not be cognitive symptoms stemming from EDs as previously understood, but instead from depressive and anxiety symptomatology.
著者
大屋 藍子 Aiko Ohya
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.63-66, 2019-12-15

本稿は"ACT Questions & Answers: A Practitioner's Guide to 150 Common Sticking Points in Acceptance & Commitment Therapy"(Harris, 2018)を取り上げ,特に,Harrisの作成した新しいツールであるチョイスポイント(Choice Point2.0)を紹介した。チョイスポイントは,Hooked,Away,Unhooked,Towards といったキーワードを用いながら,アクセプタンス&コミットメント・セラピーの「心理的柔軟性」モデルにおける6つのコア・プロセスをシンプルに示したものである。本ツールは,関連するワークシートやアニメーション動画が無料で活用できるよう整備されており,ユーザビリティの高いツールであることが整理された。書評
著者
石川 信一 菊田 和代 三田村 仰 酒井 美枝 大屋 藍子
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は,児童青年の不安とうつに対する認知行動療法(CBT)の有効性をランダム化割付比較試験において検討することであった。電話による簡易スクリーニングと,事前査定の結果,包含基準に合致し,かつ参加に同意した51名を対象とした。対象者はランダムに先に介入を実施するCBT群と,後から実施するWLC群とに割り付けられた後,8回の介入を受けた。事前,事後,3ヶ月,6ヶ月にアセスメントを行った。分析の結果,主診断から外れる割合と重篤度について,事後においてはCBT群の方がWLC群よりも改善していることが示された。以上のことから,CBTによって児童青年の不安とうつの問題が改善することが示された。
著者
大屋 藍子 武藤 崇 Aiko Ohya Takashi Muto オオヤ アイコ ムトウ タカシ
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.53-64, 2011-12-15

肥満に対する治療は,従来,食事療法,運動療法,行動療法や薬物療法を組み合わせて患者の意欲を維持させながら行われ,肥満者が主体的に自分自身で生活をマネジメントすることが求められる。しかし,生活習慣のセルフマネジメントには,(1)個々人の動機のばらつきの大きさ,(2)習慣の中・長期的な維持の難しさという問題が挙げられる。本稿は,行動分析学の観点から肥満をもたらす生活習慣を分析し,肥満治療に対する提案を行った。その結果,セルフマネジメントの困難な要因は,(1)ストレス発散のための過食など,肥満者にとって連鎖的に形成された摂食行動が存在するため,生活習慣改善への動機が形成されないこと,(2)肥満者の希望する体重・体調変化が即時的に得られないため,中・長期的な食事改善や運動行動が難しいことの,2点に整理された。さらに,その困難さを改善するために,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の観点から,摂食欲求や肥満に対するストレスを受け容れながら,生きたい価値に沿った生活習慣の再構築が必要とされ,その結果,対象者は,生きたい価値を追求することで,単なる肥満の治療ではなく,より高いQOL(生活の質)の実現を追究していくことができるということが示唆された。
著者
大屋 藍子 武藤 崇 オオヤ アイコ ムトウ タカシ Ohya Aiko Muto Takashi
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.53-64, 2011-12-15

研究動向肥満に対する治療は,従来,食事療法,運動療法,行動療法や薬物療法を組み合わせて患者の意欲を維持させながら行われ,肥満者が主体的に自分自身で生活をマネジメントすることが求められる。しかし,生活習慣のセルフマネジメントには,(1)個々人の動機のばらつきの大きさ,(2)習慣の中・長期的な維持の難しさという問題が挙げられる。本稿は,行動分析学の観点から肥満をもたらす生活習慣を分析し,肥満治療に対する提案を行った。その結果,セルフマネジメントの困難な要因は,(1)ストレス発散のための過食など,肥満者にとって連鎖的に形成された摂食行動が存在するため,生活習慣改善への動機が形成されないこと,(2)肥満者の希望する体重・体調変化が即時的に得られないため,中・長期的な食事改善や運動行動が難しいことの,2点に整理された。さらに,その困難さを改善するために,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の観点から,摂食欲求や肥満に対するストレスを受け容れながら,生きたい価値に沿った生活習慣の再構築が必要とされ,その結果,対象者は,生きたい価値を追求することで,単なる肥満の治療ではなく,より高いQOL(生活の質)の実現を追究していくことができるということが示唆された。
著者
大屋 藍子 武藤 崇 オオヤ アイコ ムトウ タカシ Ohya Aiko Muto Takashi
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.53-64, 2011-12-15

研究動向肥満に対する治療は,従来,食事療法,運動療法,行動療法や薬物療法を組み合わせて患者の意欲を維持させながら行われ,肥満者が主体的に自分自身で生活をマネジメントすることが求められる。しかし,生活習慣のセルフマネジメントには,(1)個々人の動機のばらつきの大きさ,(2)習慣の中・長期的な維持の難しさという問題が挙げられる。本稿は,行動分析学の観点から肥満をもたらす生活習慣を分析し,肥満治療に対する提案を行った。その結果,セルフマネジメントの困難な要因は,(1)ストレス発散のための過食など,肥満者にとって連鎖的に形成された摂食行動が存在するため,生活習慣改善への動機が形成されないこと,(2)肥満者の希望する体重・体調変化が即時的に得られないため,中・長期的な食事改善や運動行動が難しいことの,2点に整理された。さらに,その困難さを改善するために,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の観点から,摂食欲求や肥満に対するストレスを受け容れながら,生きたい価値に沿った生活習慣の再構築が必要とされ,その結果,対象者は,生きたい価値を追求することで,単なる肥満の治療ではなく,より高いQOL(生活の質)の実現を追究していくことができるということが示唆された。