著者
村上 恭通 大村 幸弘 安間 拓巳 槙林 啓介 新田 栄治 笹田 朋孝
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

この研究は、製鉄の起源地である中近東から東方へ伝わる技術の足跡と変化の画期を考古学的に明らかにすることを目的としました。ヒッタイトに代表される青銅器時代の鉄は、紀元前12世紀頃にコーカサス地方を経て、中央アジアに伝わることを発掘により明らかにしました。これを技術伝播の第1波とすれば、黒海・カスピ海北岸地域のスキタイで育まれた技術の東方伝播が第2波といえます。東アジアは第1波の技術を基礎に発展させ、第2波を受容していないことも判明しました。ユーラシア北部における製鉄技術の伝播が鉱山を求めて移動する遊牧民族の生活様式に起因することが想定できるようになりました。
著者
村上 恭通 鈴木 康之 槙林 啓介
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2018年度は東寺領新見荘がおかれた岡山県新見市、弓削嶋荘がおかれた愛媛県上島町で次のような調査を実施し、研究成果を得た。新見市においては前年度、神郷高瀬地区で実施した踏査成果を前提に、5月に貫神ソウリ遺跡、鍛冶屋床遺跡において地中レーダー探査を実施した。その結果ではいずれの遺跡においても明確な構造物の輪郭が捉えられないため、10月、11月に試掘調査を実施し、貫神ソウリ遺跡では後世の土地削平、製鉄関連施設が根こそぎ滅失し、縁辺部にスラグ原のみを遺していることが判明した。これに対し、鍛冶屋床遺跡は石組の構造物を遺し、小舟状遺構の一部を確認し、地下構造が残存していることを明らかにした。放射性炭素年代測定により、前者が13世紀後葉、後者が15世紀後葉~16世紀前葉であることもわかった。これらの遺跡以外にも踏査により新畑南遺跡、永久山一ノ谷遺跡でスラグ原を確認し、スラグ噛み込み木炭を測定した結果、いずれも16世紀を中心とする遺跡であることが判明した。愛媛県上島町では8月に佐島・宮ノ浦遺跡(Ⅱ区)を発掘調査し、併行して上弓削・高濱八幡神社の調査も行った。宮ノ浦遺跡では10~11世紀の遺物をともなう灰白色粘土層と厚い焼土層を検出した。これらは粘土を用いた構造物で、なおかつ焼土を生成するような施設の残骸であり、生産活動に関連する可能性が考えられる。高濱八幡神社は2013年に小規模な試掘を行い、揚浜式塩田の浜床の可能性の高い硬化面を確認していたが、この発掘調査により、一定の面積を有し、砂堆上を整地して粘土を貼り付けた塩田浜床であることを実証した。浜床層に含まれる木炭を資料とした年代測定の結果、下層は9世紀、上層は12世紀を中心とする年代を示し、古代に造成された塩田が中世前期まで使用されていたと考えられるようになった。
著者
細谷 葵 佐藤 洋一郎 槙林 啓介 田中 克典 石川 隆二 趙 志軍 楊 春 DORIAN Qfuller MICHELE Wollstonecroft
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

昨今再考がうながされている、中国におけるイネの栽培化とそれに基づく農耕社会の形成過程について、考古学(植物遺存体・人工遺物)と遺伝学の共同研究による解明をめざした。イネ栽培化期における野生植物利用の実態解明、農耕具・加工具の体系化、栽培イネの伝播経路について新しい見解を得ることができ、複数の英語・日本語論文や国際学会で発表した。また、国際シンポジウム2件(1件は共催)を開催し、国際的な研究者の意見・情報交換の場を提供するとともに、その成果の出版も行った。
著者
芹澤 知広 志賀 市子 角南 聡一郎 槙林 啓介 中尾 徳仁
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本各地の博物館に収蔵されている、20世紀前半に日本人が中国から持ち帰った中国の生活用品・民間工芸品について、共同調査を行った。その作業を通じて、どのような品物が現在残されているのかということがわかり、また多くの博物館が、それらの収蔵品について館内データベース等を通じて積極的に公開していることもわかった。その調査を踏まえ、研究代表者と研究分担者は個々の関心に基づき、対象を絞った事例研究を行った。