著者
梅垣 壽春 大矢 雅則 日合 文雄
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.241-252, 1980-03-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
23

数学という基盤に立って物事を体系付けようとする場合, まず定義を与えることから始められる. 定義は論理的な約束, 或いは規約に基づいた条件の組合せによって設定される. エントロピーという物理学上の概念が三つの条件からなる公理系によって定義付けられたことによって遂には情報理論という全く新しい数学が構築され, 古くからの数学の問題が解決されたり, 新たな数学の概念が発見され, それが数学の進歩を促し, その結果自然科学以外の他の領域にも重大な関わりをもたらしている. エントロピーとは非常に不可思議な数理形式をしている. それが必ずS(P)=Σpklogpk-1とかS(f)=∫flogf-1dXというように表わされる必然性は偶然を支配する神々のなす業なのであろうか. 最近では再び物理, 詳しくは数理物理学ともいわれる境界領域に, 情報理論的に構成された相対エントロピーなどが頻りに立場して来ている. まさに, これは数学と物理学との交流の接点とでもいうべきか. 今後も問題点がこの接点の近傍で探求されることが期待される.
著者
鈴野 聡志 増田 夏樹 大矢 雅則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.187, pp.49-54, 1999-07-16

量子コンピュータとは, 量子力学を動作原理とするコンピュータのことである. 現在のコンピュータに比べ, 量子状態の干渉性を用いて計算を高速にでき, 発熱を少なくできるなどの特徴を持ち, 次世代のコンピュータとして期待されている. ナップサック問題とはNP完全に属する問題で, 現在のコンピュータでは効率よく解くアルゴリズムは見つかっていない. 本論文では, 量子コンピュータが高速に計算できる証明とし, ナップサック問題の量子アルゴリズムを述べ, quピットを表現する重ね合わせ状態ができれば, ナップサック問題が多項式時間で解けることを示す.
著者
浅野 真誠 大矢 雅則 田中 芳治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.357, pp.111-116, 2009-12-31

近年,KossakowskiとOhyaによって,非最大エンタングルド状態を用いた量子テレポーテーション・スキームが提案された.本研究では,そのスキームを実現する物理モデルを,量子光学に基づいて提案する.我々のモデルでは,アリスがシュレディンガーの猫状態をボブに送信する.アリスとボブの間に用意されるエンタングルド状態は,光子数状態をビームスプリッターに入射することで生成する.入力する猫状態とエンタングルド状態における平均光子数の比が等しいとき,フィデリティは高い値を示す.
著者
増田 夏樹 黒岩 達雄 大矢 雅則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.55, pp.47-52, 1999-05-17
参考文献数
8

タンパク質の相同性解析において塩基やアミノ酸配列の整列化がまず最初に行われ, この操作はアライメントと呼ばれている. このアライメントを複数の配列に対して行うのがマルチプルアライメントであり, 配列の本数と塩基またはアミノ酸が増えることで指数関数的に計算量が増し, 非常に計算時間がかかってしまう. 本論文では, この問題を量子並列計算ができる量子コンピュータを用いて解くための量子アルゴリズムを考察する.

1 0 0 0 新編数学III

著者
大矢雅則 [ほか] 著
出版者
数研出版
巻号頁・発行日
2009
著者
大矢 雅則 須鎗 弘樹 渡邉 昇 下井田 宏雄 宮沢 政清 戸川 美郎
出版者
東京理科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

この一年間に亘る研究成果について述べる.数理科学を対象とする領域は多様であるが,その中で情報科学と関連のあると考えられる分野に焦点を当て,それを解析的,特に函数解析や確率解析の手法を用いてできるだけ統一的に展開した.つまり,多様な分野を横に結ぶ″Key″となる概念を見い出し,それによって統一的に様々な分野を扱い,具体的に次のような内容の研究を行なった.1.情報理論の基幹であるエントロピー理論を解析的,確率論的,量子論的に展開し,量子制御通信過程における誤り確率の数学的な一般式を導き,光パルス変調方式の効率を数理的に調べた.2.遺伝子配列の整列化,相互エントロピーを用いた生物の類縁度の定式化による系統樹を作成し,遺伝子の情報論的取り扱いの有用性を示した.3.一般量子系の状態に対して,幾つかのフラクタル次元,及び量子ε-エントロピーを定式化し,それの具体的な力学系への応用を議論した.4.ニューラル・ネット及びシミュレーティッド・アニーリングについて数学的に厳密に定式化を行なった.特に,ニューラル・ネットを用いた最適値問題の解法における解の安定性を保障する幾つかの結果を得た.5.R^<n+>上で定められた非線形力学系の漸近安定解の外部からのノイズの影響について研究を行った.また,負性抵抗を含む回路がストレイキャパシタンスの影響により不安定になるケースについて調べた.6.デジタル回路網におけるバースト型のトラフィック問題を待ち行列モデルを使って解析し,光通信における通信路や交換機バッファーの容量,誤り確率等の最適値問題を数理的に研究した.7.最近のスーパーコンピュータの発達と数式処理のソフトウェアの発展を利用して函数値の高速かつ精密な算法を情報理論的見地から再検討し,組合せ最適値問題や非線形画法などで利用可能な新しい計算手法を開発するための基礎的研究を行なった.
著者
戸川 美郎 須鎗 弘樹 渡辺 昇 下井田 宏雄 宮沢 政清 大矢 雅則
出版者
東京理科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

今年度の研究実績について述べる.エントロピー理論はClausius,Boltzmann,Shannon等に始まり,その後,von Neumannによって,量子力学構築が試みられ,量子系のエントロピー理論が生まれ,現在も様々な分野において,その研究が続けられている.本研究計画においても,以上のような背景にもとづいて,次に示すような研究実績をあげてきた.(1)解がカオス的に境界に漸近する力学系において,境界が存在する相空間上の位相的エントロピーのパラメーター依存性を調べた.(2)画像処理に用いられる回路の安定性の条件を見つけることができた.(3)光通信における誤り確率の定式化並びに相互エントロピーによる変調効率の比較等を行うことができた.(4)ガウス通信過程への相互エントロピーの応用等を論じた.(5)量子系のエントロピーの最大化,ファジーエントロピーの諸性質などについても論じた.(6)遺伝子解析にエントロピー理論を応用するため,2個の生物塩基配列,あるいはアミノ酸列をコンピュータによって,整列化する際,DP matcingを用いたアルゴリズムを提案し,従来の整列化法を比較検討した.(7)また,2個の塩基配列だけでなく,n個の塩基配列を同時に整列化する方法も提案し,その速さ等を従来の方法と比較検討した.(8)RGSMP(Reallocatable Generalized Semi-Markov Process)と呼ばれる一般の待ち行列ネットワークに応用することが出来る確率過程を提案し,その基本的な特性の解析を調べた.(9)RGSMPの定常分布の構造をあらかじめ仮定することにより,RGSMPの状態推移の構造が定常分布にどのように反映しているかを議論した.(10)ポアソン到着を持つ無限窓口待ち行列の系内仕事量のモーメントを計算しバースト型到着モデルへの応用を論じた.(11)率保存則についてサーベイを行うとともに,パルム測度に関する基本的な公式や各種の確率過程の定常分布を特徴づける式などがすべて率保存則より導かれることを示した.