- 著者
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須鎗 弘樹
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2005
(1)最も基本的な線形微分方程式を最も単純に非線形化した非線形微分方程式を解くことによって,q-指数関数、q-積、q-多項係数を導き,q-多項係数のq-対数にq-スターリングの公式を適用することにより,Tsallisエントロピーを導くことができる.それは,加法的双対性と言われる数理構造の表現であるが,q-多項係数をさらに一般化した(μ,υ)-多項係数を導入することにより,加法的双対性に加え,乗法的双対性,q-triplet,マルチフラクタル-tripletの構造も導くことができた。これら4つの数理構造は,Tsallis統計力学に典型的に現れ,それらを特殊な場合として含む統一的な表現を得ることができた.(2)(1)で導いた(μ,υ)-多項係数から,ドモアブルラプラスの定理の拡張として,ロングテール構造をもつ裾野の広い分布(q-ガウス分布)が導けるかを数値的に検証した.特に,q-ガウス分布に分布収束するときの3つのパラメータμ,υ,qの関係を数値計算により調べた.(3)Tsallisエントロピーを平均符号長の下限にもつ符号木を導いた。この導出方法は,ある性質をもつ一般化エントロピーにも応用できる.さらに,ここで導いた符号木は,マルチフラクタル構造をもつこともわかった.(4)Tsallisエントロピーのパラメータqの意味は分かっていなかったが,マルチフラクタルの理論に現れる一般化次元のqと同じであることがわかった.さらに,Tsallisエントロピーと一般化次元との一意な関係式を導き,これが1910年のEinsteinの論文で主張された式の一般化になっていることを発見した.